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妻の祖母の敬老のお祝いでうかがったところ、右目が塞がっていて、左目は涙と目やにが酷い。

義母や義姉は目やにで右目も引っ付いて開けられないだと言っているが、どうも下垂しているように思えてならない。

とにかく、視界が塞がっていて歩くときに危ないので、早速治療することに。
☑現病歴 いつからかよくわからない。
☑愁訴 夜間頻尿。
☑経絡腹診 肺脾虚、心肝実、腎平。
☑脉状診 浮、数、実。
☑比較脉診 肺脾虚、心肝実、腎平。
☑証決定 肺虚証。
☑適応側の判定 気を引き上げるため左。
☑本治法 目やに涙を逆気泄と診て合水穴を選穴。
左尺沢、左陰陵泉を補い、左尺中浮かして膀胱の脉位に浮いてきた実邪を、患側の右膀胱経を切経して最も邪の客している右飛陽から浮実に応ずる瀉法。
☑補助療法
宮脇奇経治療。右陥谷-右合谷に5壮-3壮で知熱灸。
足陽明脉の奇経腹診
手陽明脉の奇経腹診
☑標治法 左右を比べて圧痛の強かった
臂臑に知熱灸7壮。
☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
☑経過 治療後、右目が開く。
☑反省と考察 瞼は肌肉で脾の主りということから、眼瞼下垂は脾虚と言われていますが、肺虚もあります。
瞼は総じて脾胃ですが、上眼瞼は足の太陽膀胱経、下眼瞼は足の陽明胃経に一応分類されます。
目やには湿熱です。 
奇経は陥谷-合谷か合谷-陥谷か公孫-内関か内関-公孫が多いです。
大腸経には目に効くツボが軒並み並んでいますが、こういう場合には臂臑が有効です。

例.
  1. 沢田流二間 麦粒種。
  2. 沢田流合谷 目の充血。
  3. 合谷 眼病全般。
  4. 偏歴 眼病全般。
  5. 臂臑 眼瞼下垂、目やに、緑内障。
☑患者 50代男性。
☑主訴 右足肉離れ。
☑現病歴 野球の試合中に負傷。大腿後面~内側にかけて痛い。患部を見ると腫れてバンバンに熱感があり、内出血している。右足を引きずって歩いてる。
☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑脉状診 浮、数、虚。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑証決定 肝虚脾実証。
☑適応側の判定 病症が右側に偏っているので左。
☑本治法 左曲泉、左陰谷を補い、右関上沈めて脾の脉位に触れる虚性の邪に対して患側の右脾経を切経して最も邪気実の客している右陰陵泉より堅に応ずる補中の瀉法。
⏩普通に歩けるようになる。
☑補助療法 
✅宮脇奇経治療 宮脇奇経腹診®より、督脉+陽維脉と診断。患側の後谿-申脈+外関-臨宮に知熱灸5壮-3壮で奇経灸して金銀粒を貼付。
⏩痛みが軽減。
督脉と陽維脉の奇経腹診。
詳しくは↓
☑標治法 
✅炎症をひかす鍼 腫れている皮膚と正常な皮膚の境目を確認し、腫れている皮膚から正常な皮膚へ向けて、つまり実から虚へ向けて斜刺で等間隔に補鍼。
⏩熱感、痛みがさらに軽減。
✅八卦皮内鍼法 全体的な痛みが部分的な痛みに集約されてきたところで、最圧痛点を検出し、最も鎮痛できる方向から皮内鍼を貼付してその上から知熱灸3壮。
⏩さらに痛みが軽減。
☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
☑経過 痛みがかなり和らぎ普通に歩いて治療室を出られた。
☑反省と考察 肉離れこそ本治法で生命力の強化です。
最短で治ろうしてくれます。
炎症を引かせることが大事ですが、アイシングだけだと、内出血が冷え固まって“あの病理産物”を形成します。

そう、瘀血です。
これがあると治りが悪くなるだけでなく、後々悪さします。
最低でも肉離れ癖がつきます。
効果的な補助療法や標治法を加えてより早期回復をはかります。

今回はやってませんが、最も効果的なのは刺絡です。
一経変動なら子午治療、二経変動以上なら奇経治療で空間的にアプローチします。
局所の治療も大事です。
ポイントは患部から健康部へ向けて刺鍼することです。
患部へむけると、実をより実しめてしまいます。
熱感腫脹は実です。
実から虚へ促すことで炎症がひきます。
お灸で取り巻いても構いません。
おわりに
2020年東京五輪、2021年関西ワールドマスターズにむけて、参考にしていただければ幸いです。
せっかく世界中からたくさんの素晴らしいアスリートが来日されます。
是非来たときよりも元気になって帰っていただきましょう!
時短で効かせられる子午治療や奇経治療は、スポーツイベントとの相性が抜群です。
オリンピック関係各位のみなさま、是非選手村でケアされる鍼灸師の先生方に特化した講習会を開催していただけないでしょうか?私どもでよろしければ喜んで講師をお引き受けさせていただきます。
もちろん、持っているものを全て包み隠さず技術指導に当たらせていただく所存です。
ご依頼をお待ちしております。
症例
☑患者 小学1年生の女子児童。
☑主訴 音声チック。
☑現病歴 数か月前から、「んぐっんぐっ、ガッガッガッ。」という音を喉で鳴らすようになる。
最初は痰が絡んでいるのを出そうとして咳払いをしていると思い、「風邪かな?」「喘息かな?」ということで、小児科や呼吸器の専門病院を受診するもよくならず、原因もわからない。
日に日に喉を鳴らす仕草が頻回になり、2~3秒に1度喉を鳴らす。
そうしてこの程ようやく、これが音声チックだとわかる。 

☑愁訴 特になし。
☑経絡腹診 肺脾虚、心肝実、腎平。
☑脉状診 浮、数、虚でやや硬い。
☑比較脉診 肺脾虚、心肝実、腎平。
☑証決定 肺虚肝実証。
☑適応側の判定 女の子なので右。
☑本治法 中野てい鍼小里モデル55㍉の尻尾の方を右太淵に当て、五行程補い、垂直に徐に鍼を抜き上げ、左右圧もかけず鍼口も塞がないてい鍼の補法の手技を行う。
右太白にも同様の手技。
左関上沈めて肝の脉位に触れる邪気実に対して、左肝経を切経して最も邪の客している左中封を、てい鍼の頭の方で経に対して垂直に横切るようにサッサッサッ(神・氣・精)と3回瀉法。

☑補助療法
✅子午治療 左右の人迎を押さえて圧痛を確認すると、右の方が痛いと教えてくれたので、反対側の肝経の蠡溝をてい鍼で補う。
施鍼後、人迎の圧痛を確認すると、「痛くない」とのことなので、止め灸として無熱灸14壮して、効果を持続させるために金粒を貼付。

☑標治法 全身に気を巡らすように
  1. 頭、後頚部、肩上部は瀉的に
  2. 背中鎖骨、胸は補的に
  3. お腹は時計回りで補的に
小児はり。
時間にして全部で30秒くらい。

☑止め鍼(疳虫は合谷、発熱児は後谿、先天性疾患は陽池に行う。) 左合谷にてい鍼の頭の方でちょこんと一鍼して治療を終える。

☑セルフケア ドライヤー灸を指導して、左蠡溝に自宅で7壮施灸するように指示。

また、次のようにお願いした。
「○○ちゃんの音声チックは一切気にしないでください。もしくは慣れてください。四六時中はたで見てると気になるでしょう、イライラもするでしょう、すごくわかります。家もそうでしたから。でも気にしないでください、慣れてください。
絶対に注意したり無理やり止めたりはしないでください。
これは無意識に出るんです。
わざとじゃありません。
本人がしんどいと言うてくる以外は何もしないでください。
もし、苦しいとか辛いと言ってきたら胸を上から下にさすってあげてください。
ご主人、ご家族の方全員に徹底してもらうように、お母さんの方からお願いします。」
☑経過 週一で治療し、段々と改善していき、数回後にはチックが治まる。
現在継続治療中。 
経絡治療からみたチックの病因病理
  • 陰<陽
チックは不随意運動です。
無意識に出る機能亢進症です。
亢進しているわけですから、陰陽でいえば陽が勝っている状態です。
陰陽をおさらいしておきましょう。

  1. 陰とは冷やす、潤す、引き締める気(働き)で、クールダウンを担当します。
  2. 陽とは温める、乾かす、発散する気(働き)で、ヒートアップを担当します。

陽が強いのは陰が弱いからです。
陰が弱っているから、冷やせずに熱をもち、潤わせられなくて乾燥し、引き締められずに上昇拡散した陽亢が、顔面を衝くから運動性チックが出現し、咽喉を衝くから音声チックが出現します。
もう少し簡単にいうと、クールダウンできないのでヒートアップして不随意運動が止まらなくなるのです。
そう、止めないのではなくて止められないのです。
  • 落差と風邪
ヒートアップすると不随意運動が亢進するのはなぜでしょう?

子供たちは好奇心の塊です。
同じくらい不安も募ります。
好奇心と不安の落差です。

自然界でいうところの低気圧と高気圧です。
乱高下すると台風が発生します。

人体でも好奇心と不安感の落差によって台風が生じます。
これを「風邪」とします。

風邪は陽邪ですから、上昇拡散します。
また風は揺れ動きます。
頭顔面部や咽喉が不随意運動をするわけです。
さらに遊走性によって次々と場所を変えて不随意運動を繰り返します。目をパチパチさせる→鼻を動かす→口を動かす等。
  • 肝は魂を宿し無意識を主る
五臓の立場から見ると、心と肝は陽です。
心火か肝火によって陽亢します。
心は神を宿します。
肝は魂を宿します。
神は自意識を主ります。
魂は無意識を主ります。
不随意運動ですから、無意識を主る魂を宿す肝に火がついて火事になっているけど、肝腎の消火する水がないわけです。
火は陽です。
水は陰です。
陰虚陽実で肝陽が亢進しているのがチックです。
  • 病因病理
肝陽を如何に慎めるかです。
肝火を鎮火できるかです。
肝気の突き上げを抑えるかです。

  1. 肝虚証 肝陽が亢進するのは肝陰が不足しているからです。あるいは肝火が肝血を焼き払うからです。肝陰肝血を補います。
  2. 腎虚証 肝陰は腎陰に依存しています。肝血は腎水に依存しています。精血同源、肝腎同源です。腎陰腎精が不足すれば肝陰肝血も不足、肝陽肝気が亢進して肝火が燃え盛ります。あるいは肝火が腎水を焼き払います。難経によろしく75難というやつです。腎陰腎精を補います。
  3. 脾虚証 肝火は同じ中焦に在る脾に横逆し脾の津液を焼き払います。脾を補います。
  4. 肺虚証 肝気は昇り肺気は降ります。そうして気機の昇降運動を担いバランスを保っています。肝気が上焦の肺を襲うと肺気が降りれなくなります。あるいは肺気が不足すると肝気の突き上げを抑えることができなくなります。肺を補います。
  5. 心虚証 発生学より地二火を生じます。火は陽なので上に昇って膻中に玉座します。火だけだと燃え盛りすぎて火事になるので元々水が存在します。これを心陰とか心血とします。肝火が上昇して上焦の心に襲いかかると心火に着火して、心陰心血を焼き払います。心肝火旺です。心陰心血を補います。
    治療
    • 本治法
    五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整します。
    • 補助療法
    子午治療 チックが起こっている患部の流注より子午陰陽関係に当たる経絡を使います。
    本症例でしたら音声チックで咽喉部なので、小腸経か大腸経ですので、子午陰陽関係に当たる肝経か腎経を使いました。
    運動チックなら、ピクピクしている患部の流注から子午陰陽関係に当たる経絡を割り出してください。

    健康側の絡穴を使います。
    絡穴で取れないときは、原穴、郄穴を使います。

    大人なら比較的太目の鍼で補います。
    1. ​金鍼30番
    2. 中国鍼
    3. 古代鍼
    小児はてい鍼で十分です。

    止め灸をします。
    1. 普通に施灸するなら10壮
    2. 知熱灸なら5~7壮
    3. 無熱灸なら10~14壮
    4. セルフケアにドライヤー灸なら5~7壮
    効果を持続させるために金粒または銀粒を貼ります。
    • 標治法
    全身に気を巡らすように小児はりをします。
    各自のやり方でいいと思います。
    • 止め鍼
    脉診流経絡治療では、最後にドーゼの多少を調節するために、本治法の適応側と反対側にてい鍼の頭の方でちょこんと一鍼止め鍼をします。
    1. ​疳虫は合谷
    2. 発熱は後谿
    3. 先天性疾患は陽池
    誤治反応を最小限にし、正治ならば治療効果が上がります。

    終わりに
    案外チックのお子さんが見えられます。
    今回は音声チックでしたが、運動チックから、複雑怪奇なものまで、結構やらせていただきました。
    大人は難しいですが、子供はよく治ります。
    「小児七歳神童也.神之守.」と道書にある通りです。

    ご家族や周りの方々の協力が必要です。
    1. ​気にしない
    2. 慣れる
    これを周知徹底していただきます。

    親御さんはまだ手なずけやすいです。
    問題は、ばーばとじーじです。
    この人たちが難敵です。

    間に挟まれるお嫁さんのケアも時には必要です。
    それでなくても四六時中子供さんと一緒にいるわけですから、チックをずっと見て聞いていると、精神がおかしくなってくるようです。

    これもわかってあげる必要があります。
    だって人間ですから。
    1.つま先~足先のしびれ
    腰陽関の外方の圧痛硬結に刺鍼。
    2.下肢後面~つま先のしびれ
    尾骨の外方の圧痛硬結に刺鍼。
    3.下肢外側のしびれ
    仙腸関節の曲がり角の圧痛硬結に刺鍼。
    手技手法
    1. 用鍼はステンレス1寸3分1番鍼。
    2. 刺鍼ポイントを取穴して、先ずは切皮し、それ以上は刺さずにしびれが変化したかを患者に確認する。
    3. 変化したらそれ以上は刺さずにその深さを限度として置鍼する。
    4. 変化しなければ鍼を刺入して進める。刺入深度は抵抗まで。鍼尖が抵抗に当たるのを度として刺入を止める。
    5. しびれが変化したかを確認する。変かしたらそれ以上は刺さずにその深さを限度として置鍼する。
    6. 変化しなければ上記を繰り返す。
    7. 深さが合えばしびれは変化する。
    適応疾患
    • 脊柱管狭窄症
    • 腰椎すべり症
    • 椎間板ヘルニア
    • 閉塞性下肢動脈硬化症
    • 糖尿病性神経症
    • 抗がん剤の副作用による末梢神経障害
    実技動画
    つま先~足先のしびれの症例を収録しています。
    ご覧になってください。
    抗がん剤の副作用による末梢神経障害の鍼灸治療
    一般社団法人東洋はり医学会関西名誉会長宮脇優輝先生が、当会7月例会の臨床こぼれ話にて、抗がん剤の副作用による末梢神経障害の症例を話されました。

    議論に非ず実行ということで、早速臨床追試したところ、次々と効果がみられました。

    宮脇先生ありがとうございます。
    治療の仕方
    しびれている箇所の皮膚としびれていない箇所の皮膚をよく観察すると、正常な皮膚には生理的な皺や指紋があるのに対して、しびれている箇所の皮膚は、
    • ​皺や指紋がない。
    • テカっている。​
    • 肥厚している。
    • 熱感がある。
    等の異常な触覚所見を呈しています。
    その異常な皮膚のど真ん中であったり、正常な皮膚と異常な皮膚との境界線に施灸します。

    筆者は1ヶ所につき1~3壮、知熱灸をします。
    施灸すると皮膚の感じが正常に近づきます。
    そうであれば予後は良です。
    治療回数を重ねていく度にしびれが取れていきます。​

    詳しくは実際の症例とあわせて動画をご覧ください。
    本治法の大事
    ここにご紹介させていただいた治療法は、経絡治療の標治法です。

    病を治するには本を求むということで、何といっても本治法による生命力の強化が本筋です。
    診察診断
    先ず舌診します。
    この病の患者さんは必ず舌歪します。

    舌歪した側と反対側の公孫-内関か内関-公孫に奇経テスターを貼ります。

    衝脉か陰維脉かは宮脇奇経腹診®で鑑別します。

    鑑別した奇経にテスターを貼ってもう一度舌診すると、即座に真っ直ぐに改善されます。

    これをもって正解とします。

    概要は動画をご覧になってください。
    治療
    1. 奇経灸
    2. 金銀粒貼付
    普通の艾で施灸する場合は主穴に5壮、従穴に3壮か3壮-2壮。
    筆者は知熱灸で5壮-3壮、お灸が怖い患者や小児には無熱灸で10壮-6壮します。

    主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付します。

    実際の治療は以下の動画をご覧になってください。
    セルフケア
    自宅で金銀粒を貼付し、貼り替えてもらいます。
    その上からドライヤー灸を5壮-3壮で朝昼晩、朝晩施灸していただきます。

    ドライヤー灸のやり方は以下の動画をご覧になってください。
    予後
    このような治療を重ねると段々と症状がよくなってきます。
    適応疾患
    • 失語症
    • 高次脳機能障害
    • 言語発達障害
    • 誤嚥性肺炎
    舌の東洋医学
    以前に投稿した記事をご覧になってください。
    症例 治療1回目(8/31朝)
    ☑患者 中1の長男。
    ☑主訴 発熱、頭痛、体が熱い、しんどい。
    ☑現病歴 早朝、息子がハアハア言いながら起きてきたので、何事かとリビングに行くと、熱が高くしんどいとのこと。
    検温すると39度ある。
    なくほどしんどい、頭痛は前額部と頭頂部、とにかく体が熱い熱いと言っている。
    無汗。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑脉状診 浮、数、実。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚証。
    ☑適応側の判定 病症に偏りなく男の子なので左。
    ☑本治法 銀1寸3分1番鍼で左太谿を補う。右関上浮かして胃の脉位に浮いた虚性の邪を脉位の右胃経を切経して最も邪気実が客している上巨虚から堅に応ずる補中の瀉法。
    ☑標治法
    • 水かきの鍼
    適応側と反対の右側から左側の順に両手の水かきの部に瀉的に刺鍼。
    • 散鍼
    全身に気を巡らせるように散鍼。
    後頚部~肩背部には瀉的に散鍼。
    ☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
    治療2回目(8/31お昼)
    ☑経過 少し元気になっている。38度。頭痛はなし。汗はまだかかない。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑脉状診 浮、数、実。硬さがマシ。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 脉証腹証一貫性より腎虚証。
    ☑適応側の判定 左。
    ☑本治法 太谿を補う。
    ☑標治法 両手に水かきの鍼、全身に散鍼。
    ☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
    治療3回目(8/31夜)
    ☑経過 座ってられるようになったり、横にならなずにおれるようになったが、夜になってまた熱が上がってきた、額と頭頂に頭痛がある。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑脉状診 浮、数、実。昼より締まりがあって輪郭がある。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚証。
    ☑適応側の判定 左。
    ☑本治法 左太谿に補法。右上巨虚に枯に応ずる補中の瀉法。
    ☑補助療法 
    • 宮脇奇経治療 前額部痛に右陥谷-右合谷、頭頂部痛に左太衝-左通里に主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸×金銀粒貼付。
    ☑標治法 水かきの鍼×散鍼。
    ☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
    ☑治療後 頭痛消失。ようやく汗をかきだした。
    治療4回目(翌9/1の夜)
    ☑経過 今朝37度に下がる。1日を通じて楽に過ごせた。夜になってまた38度にあがってきたが、体が熱いだけでしんどさはない。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑脉状診 浮、数、やや実。ずいぶんと硬さがとれ柔らかくなっている。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚証。
    ☑適応側の判定 左。
    ☑本治法 左太谿に補法。右上巨虚に枯に応ずる補中の瀉法。
    ☑標治法 水かきの鍼。3~4指間からやや出血。こういうのはいい兆候。出るものは出す。全身に散鍼。
    ☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
    ☑治療後、即座に37度3分まで下がる。
    ☑経過 今朝(9/2)36度4分、解熱、治癒。 
    急性発熱の病因病理
    以前に投稿した記事をご覧になってください。
    消炎鎮痛解熱剤×抗生剤を使う?使わない?
    今回は病院に行ってないのでわかりませんが、例えば風邪だとしたら、洋薬は使わない方がよろしいでしょう。
    抗生剤は風邪にはほとんど無効ですし、解熱剤や消炎鎮痛剤を使うと治りが悪くなるからです。
    消炎鎮痛解熱剤は、急性発熱時に現れる痛み・発赤・腫脹・熱感を和らげてくれますが逆に治る時期を遅らせます。
    先ず、発熱の意義ですが、
    1. 病原体は高温下ではその複製が抑制されるか死滅する。
    2. 免疫担当細胞は高温の方が活性化する。
    ということで、発熱は感染に対抗するための生体反応です。
    そしてさらに、
    1. 痛みは警告反応と過度な動きの制限。
    2. 発赤は血液が集まって代謝を促進
    3. 腫脹は白血球やリンパ球が集まって感染を防ぐ。
    4. 熱感は免疫力を高めるめに発熱している。
    ということで、炎症反応は障害部位を守り治す反応なのです。
    ですので、消炎鎮痛解熱剤は炎症を抑えて痛み・発赤・腫脹・熱感を軽減し、苦痛を和らげてくれますが、それと引き換えに直接の治す反応(炎症)を抑えるので症状は軽減するが治るのは遅くなる(問題の先送り)ということになります。

    詳しくは、以前に投稿した記事の後半にまとめてありますのでご覧になってください。
    注意事項
    とはいえ、こらアカンと思ったら病院に行きましょう。
    ある程度技術がないと全く効きません。
    臨床経験の浅い方も無理せず病院に行きましょう。
    次に該当する場合も病院を受診してお薬をいただいてください。
    消炎鎮痛(解熱)剤の適応
    1. 痛みや炎症が生活に差し障るほど激しい場合。→激しい痛みが持続すると脳の可逆性に問題が起きる。
    2. 大事な要件があり、高熱や痛みにより適えることが難しい場合(EX.子供の結婚式、大事な契約 etc.)
    3. 持続する痛みや高熱により食事が摂れなくなり、体力が著しく落ちた場合 etc.
    4. 慢性疼痛で痛みの悪循環を断つ。
    胃腸の熱です。
    経絡治療の生みの親、井上恵理先生は小腸の熱と仰っています。
    内向すると心の熱になります。
    ベーチェット病です。
    脾虚で胃小腸の邪気実か、腎虚で心小腸の邪気実が多いです。
    奇経治療
    患側の内関-公孫か公孫-内関です。
    鑑別は宮脇奇経腹診®がわかりやすいです。

    陰維脉の腹証

    衝脉の腹証

    奇経腹診に興味のある方は、よくわかる奇経治療 (第2版) | 宮脇和登 著 ○B5判/150頁を熟読してください。 
    わかりにくければ、実際にテスターを貼って、どちらの奇経で痛みが楽になるかを患者さんに聞きます。
    治療は主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。
    そして金銀粒を貼付します。
    手五里
    患側に取ります。
    知熱灸3~5壮します。
    支正
    古医書に小腸経が虚すとイボができるとありますが、口内炎も口の中にできたイボと考えます。
    虚した側の支正に知熱灸10壮します。
    あるいは皮内鍼をとめます。
    下風池
    いかなる顔面部の疾患も、必ず後頚部が凝っています。
    特に影響力があるのが下風池です。
    こだわらずに、天柱、風池など、分界項線上の凝りが取れるように治療します。
    局所
    口を開口させて、あるいは唇をめくらせて、口内炎に直接糸状灸を1壮します。
    井穴刺絡
    酷く痛むものには、少沢から刺絡します。
    抜群に効きます。
    瞼の症状は脾の変動ですから脾虚か脾実です。
    陽明経から邪気実を瀉します。
    沢田流合谷
    患側に取ります。
    知熱灸10壮します。
    根結治療
    めばちこが、
    1. 瞳孔線上にできていれば厲兌か中央厲兌をてい鍼で補います。
    2. 外側にできていれば足竅陰をてい鍼で補います。
    3. 内側にできていれば至陰をてい鍼で補います。
    霊枢・根結篇より
    目の周囲のツボ
    攅竹、眉上陽白、睛明、承泣、太陽を補います。
    局所
    めばちこに直接糸状灸を1壮します。
    瀉的なお灸です。
    これが一番効きます。
    涙で意外と熱くありません。
    実際に施灸している動画は以下のリンクからご覧いただけます。
    また、瞼の上から裏のコロコロして腫れている位置を確認し、コロコロの周囲を等間隔で取り巻くように、あるいは東西南北で囲むように瞼の上から補鍼すると小さくなります。
    息子さんに連れられて来院した患者。
    どこか様子がおかしい。
    問診にも思うように答えてくれない。
    ☑患者 60代女性。
    ☑主訴 胸と右の背中が痛い。
    ☑現病歴 2ヶ月ほど前に突如、胸と背中の痛みを発症。
    医療機関では原因がわからないとのこと。
    痛みは朝に起こることが多い。
    刺すような痛み。
    ☑既往歴 数ヵ月前に大腸がんで手術入院。
    ☑愁訴 特にわからない。
    ☑経絡腹診 脾心虚、肝腎実、肺平。
    ☑脉状診 浮、数、実。とても硬い。
    ☑比較脉診 脾心虚、肝腎実、肺平。
    ☑証決定 脾虚証。
    ☑適応側の判定 真ん中~右側が痛むので、左。

    ということで、左の太白に鍼をしようとすると、突然起き上がって逃げるようにベッドから降りようとしたので、「どうされましたか?」と聞くと、鍼は怖いから止めてほしいとのこと。

    《ははーん》とピンときたが、少し様子を見ようと思い、「わかりました。それでは刺さない鍼もありますので、それならどうですか?」と聞くと、よさそうなので、もう一度寝てもらって、左太白をてい鍼で補う。

    検脉しようとすると、また起き上がってきて、「もう、痛くなくなったのでいいです。」と言ってまたベッドから降りようする。

    気づいた方もおられると思いますが、息子さんに無理矢理連れてこられたのでしょう。
    もちろん確認はしていませんが…。
    ですから、刺す刺さないに関係なく鍼やお灸が怖くて受けたくないのです。
    道中もあわせ、診察中は怖くて怖くてたまらなかったと思います。

    一応、「脉だけ確認させてください」と言って、ベッドに横になってもらって確認したふりをして、また息子さんにはお母さんに鍼をしたふりをして、わからないように終わりました。

    受付では、「気分が向いたときに、よかったらまたいらしてください。」として、一応の病気の原因、体の状態をお伝えして、次の予約は取らずに気分よく帰っていただきました。

    胸の痛みは精神的なものでしょう。
    大病もしているし、何より独り暮らしというのも、不安に拍車をかけていると思われます。

    そんなわけで、優しい息子さんはどうしても連れて来たかったのだと思います。
    ですが、古医書にもあるように、受けたくない人に治療をしても効果がないし、それどころか事故になってもいけないので、このような判断をしました。

    そして、こういう考えられない行動をするのは神の異常です。
    今回の場合は、腎実です。
    恐れ驚きは腎の生理的な感情ですが、虚実があります。
    同じ恐れでも腎虚の人は腰を抜かします→陰。
    腎実の人はいてもたってもいられず逃げ出します→陽。
    柳下登志夫先生が仰っておられた、五臓における精神の虚実を以下の表にまとめましたので、ご覧になってください。
    症例
    ☑患者 40代男性。
    ☑現病歴 数日前から背中、脇腹、お腹がピリピリと痛い。
    肌着が擦れたりして皮膚に触れたり当たると痛い。
    帯状疱疹とのことであるが、未だ水疱が出ていない。
    教科書的には片側性に出現するはずだが、左右差なく全体が痛いのこと。
    触って確認しても左右差がわからない。

    ☑脉状診 浮、数、虚。
    ☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
    ☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
    ☑証決定 脉証、腹証、および総合的に判断して肝虚証とした。
    ☑適応側 先ず、帯状疱疹の鑑別も兼ね、患部をまんべんなく瀉的に散鍼。
    ステンレスの1番鍼の鍼尖が指から出るか出ないかぐらいで母指と示指でつまんでパッパッパッと散鍼しては反対側の手でなでるを繰り返すこと時間にして20~30秒。
    施鍼後、もう一度患部を触って痛みを確認すると、左側の方が痛みが強くなった。
    これを受けて、左側を病側とし、反対の右側を未だ生気が残存していると診て、適応側を右とした。
    ☑本治法 銀1寸3分1番鍼にて右曲泉、右陰谷を補い、右関上浮かして胃の脉位に現れた虚性の邪を、病側の左胃経を切経して最も邪が客している豊隆から、塵に応ずる補中の瀉法。
    ☑標治法 病側の左背部~脇腹→右背部~脇腹の順に瀉的散鍼。
    最も痛みが著明な箇所に左右とも知熱灸3壮ずつ。
    ☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。
    ☑経過 緩解。
    本症例の病因病理
    肝虚証ということは、先ず血虚があります。
    血が不足すると気を発散することができません。
    そうして帯状疱疹を発症したのです。

    足厥陰肝経は全身の血を収斂し蔵血します。
    この血を発生源として、肝臓は発散します。
    この肝気によって、気血津液は全身くまなく張り巡らされます。
    疏泄、発散、条達です。

    血虚があると、十分に発生することができず、気血津液が停滞します。
    特に太陰経で滞ります。
    手の太陰は肺経、足の太陰は脾経です。

    肝に相剋する、肺脾太陰経の気滞によって、肌皮から発散されずに停滞し発症したのが本症例の帯状疱疹です。
    まだまだ暑さが残るとはいえ、暦では、立秋~処暑を過ぎ、季節は秋です。
    秋の気は収斂です。
    ドンドン発散を制限して冬支度に向かいます。
    そこへ来て疲労、ストレスなどから気滞があると、より発散できずに発熱や皮膚疾患、喘息を患いやすくなります。
    また、夏場に適度に発散して陽気を養えていなくても発病しやすくなります。
    四時にみあった生活、温暖な季節は発散して陽気を養い、寒涼の季節は収斂して陰気を養うことが大切です。
    また、内傷なければ外邪入らずですから、労倦や七情の乱れを律することも、未だ病まざるを治すということになります。
    患者は息子。
    野球の練習中にフライを取ろうとした際、太陽が視界に入り、一瞬ボールを見失い顔面、左目に直撃。
    痛みでその場に倒れ込む。
    監督さんから連絡をいただた妻が、息子と病院へ。
    診察の結果、目からの出血が酷く、再検査の結果次第では手術も考えておいてくださいとのこと…。
    臨床を終え帰宅後、一時始終を聞き、早速治療。
    医者からは、動くと出血するから安静にすること、運動はもちろん自転車もダメらしい。

    ☑望診
    目および左顔面が赤く腫れ上がっている。
    ビビらかされているのでリクライニングの座椅子に座ったまま微動だにしない。
    こんな感じ↓
    ※プライバシーを守るため幽幽白書の躯デフォルメで顔を隠しています。
    ☑経絡腹診 肺脾虚、心肝実、腎平。
    ☑脉状診 浮、数、実。 
    ☑比較脉診 肺脾虚、心肝実、腎平。

    ん?


    てことは脉証腹証より、肺虚証になる???
    医者が言うようにもし本当に手術をしなければならないような目の状態だとしたら、目の実質が損傷していたり、眼底の出血などが考えられるが、だとしたら腎虚になっているはずである。

    肺虚ということは、病の所在は結膜である。
    結膜は白精/気輪で肺の主る所である。
    結膜に出血が広がっているだけだとしたら、手術は要らない。
    その事を本人と妻に伝えると、妻は「あーよかった安心した」と、ところが肝心の息子は「ハア?親父何言うてんの?」こっちがハアである💢
    あれだけ今まで君の体を治してきたのに、変に知識がつくと(まあビビらかされているのもあるが💧)、これである。

    先ずを心神を鼓舞する必要があるので、奇経を取ることに。
    宮脇奇経腹診®より、任脉と手陽明脉が出ている。
    患側の左列缺-左照海と左合谷-左陥谷にテスターを貼付。
    お中の反応が取れたので、「目の痛みどや?」と聞くと、「うぉッマシかも😲」
    やれやれ、何回見せてきてんねん!(心の中で突っ込む💪)
    ということで、この奇経で痛みが和らぐということは、ややこしい箇所からの出血ではないという根拠がより磐石となった。
    やはり、ややこしいものは、瞳は照海-列缺、瞳孔線上は陥谷-合谷が入るからだ。
    ☑証決定 肺虚証。
    ☑適応側の判定 患側が左目なので、本来は健側の右を適応側とするが、首から上は同側の経絡が影響するため、敢えて左を適応側とした。
    ☑本治法 銀1寸3分一番鍼で、左尺沢、左陰陵泉を補う。
    コバルト1寸3分一番で、胃経に浮いた邪気実を切経して最も邪が客している左内庭から瀉法。
    ☑補助療法
    ✅宮脇奇経治療 左列缺-左照海+左合谷-左陥谷に主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸して金銀粒貼付。
    ☑標治法
    ✅左下風池にパイオネックスゼロを貼付。
    ☑止め&セーブ鍼 
    ✅中脘、非適応側天枢、適応側天枢、下腹部正中最陥凹部に補鍼。
    ✅華佗百会に補鍼。
    ☑セルフケア 奇経にドライヤー灸を指示。
    ☑経過 2回治療したが、2回とも直後に鼻血が出た。
    それでみるみる内に治ってしまった。
    負傷箇所の血溜まり、つまり瘀血が出きったのだろう。

    病院でも、出血が治まっているので手術は必要ないでしょう。
    1週間後に再出血することがあるから、念のため、もう1週間だけ運動は控えるようにとのこと。

    で、1週間経って無事に運動の許可が下りる。
    ☑反省と考察 証とは治療法であるとともに、病因病理です。
    証決定を経ていけば、まずまず病の所在が分かるようになっています。
    奇経も同様です。

    何はともあれ、治ってよかったです。
    次はフライに対する恐怖心ですね。
    どうかなぁ、あるかぁ…。 
    あれば、振り払えるまで応援します!
    助産師のN先生より、出産を終えられ入院中の産婦さんを診てもらえないか?とご依頼が。

    胎盤が出たにも関わらず、卵膜が1部子宮に引っ付いて出てこないとのこと。
    これを「卵膜遺残」というらしい。
    剥離徴候が見られないので、無理に引っ張ると子宮が捻転したり、大出血を引き起こす可能性がある。

    産婦人科に連絡を入れたが様子を見てくださいとのこと。

    卵膜が垂れ下がって露出しており、感染症が心配なので、鍼灸治療で自然に下りるようにはできないでしょうか?ということで、N 助産院へ往診。

    卵膜遺残(らんまくいざん)とは?

    古医書からみる卵膜遺残
    卵膜とは古道では胞衣(えな)とします。
    第十七節 胞衣

    胞衣は俗にエナと呼ばれます。これはどこから生じたものなのでしょうか。

    男子の一滴の精液が、子宮に始めて凝る時は、女子の経水がこのために止まって、精胎を包養し、男女の象形を生じます。胞衣や男の精がその子宮に止まっている間、胎息が始まるに従って、徐々に上に先に一片の浮皮を生じます。これを胞衣と呼んでいるわけです。たとえば膏を煉熟すると表面に浮皮が張ってくるようなものです。人の形ができる前です。ですから児の頭にこれを敷くわけです。

    また児の母の腹には、胞衣から出て臍に連なる一筋のものがあります。これを臍帯と言います。
    母の水穀血液の濁気は胞衣で防ぎ、その清精の気は臍帯を伝わって胎を養っているわけです。
    胞衣 下ざる事

    一、胞衣下ざるは子産み終って後ち、血胞衣の中へ流れて膀れ下ざるなり。
    一、子、胎内にて死する事あり、早く驚き、或は強く腰を抱き、しきりに捜り診る(今でいう内診)に因りて胞衣傷れ血燥きかるるの故に因てなり。其証母の唇舌黒く青きは母子倶に死す。舌黒く或は脹り悶える事甚だしき時は子死す、能く慎むべし。
    妊 婦 はらおんな

    十一、胞衣下らずは中極、崑崙、三陰交、に針。

    治療1回目
    ☑初診 2019年(令和元年)6月14日金曜日
    ☑患者 20代女性。
    ☑主訴 卵膜遺残。
    ☑現病歴 6月12日に出産したが、出てきた胎盤についていた卵膜が子宮と繋がったままで剥離しない。
    しばらく袋で吊っていたが、煩わしいのでハサミでカットして胎盤と分離する。
    膣から垂れ下がっている卵膜を計測すると10センチも出ている。
    さらに膣ギリギリまでカットする。
    子宮口にくっついているためか、下腹部から恥骨にかけて痛みがある。
    後陣痛(アトバラ)の痛みではないらしい。
    ☑愁訴 産後の便秘。
    ☑脉状診 浮、数、虚。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚脾実証。
    ☑適応側 左。
    ☑用鍼 怖がりのため刺さない鍼を使用。
    ☑本治法 中野てい鍼柳下モデルで左然谷に補法。柳下圓鍼で右陰陵泉と右豊隆を瀉法。
    ☑補助療法
    ✅宮脇奇経治療 右照海(患側)-左列缺(健側)+右公孫(患側)-右内関(患側)にテスターを貼ると右下腹部の圧痛が和らぐので主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。
    施灸後、主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。
    ☑標治法
    ✅卵膜遺残に対して、肩井、合谷の左右を比べて圧痛の強い側に5壮、反対側に3壮知熱灸。
    ✅便秘に対して、下腹部の最も虚したところにてい鍼を当て6呼吸、指頭叩打(以下の動画を参照)。
    ✅骨盤調整として、上後腸骨棘の左右の高さを比べて高い側の沢田流小腸兪に龍仙打鍼(以下の動画を参照)を神・気・精と精魂こめて三打。
    ☑止め鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→火曳きの鍼→百会左斜め後ろセーブ鍼。
    ☑セルフケア 肩井、合谷、奇経にドライヤー灸(以下のリンクを参照)をするように指導。

    治療2回目/6月15日土曜日
    ☑経過 卵膜は特に変わらず。便秘が解消。ただし痔も飛び出して脱肛になった。左乳腺炎様症状が出だした。
    ☑脉状診 浮、数、虚。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚脾実証。
    ☑適応側 左。
    ☑本治法 中野てい鍼柳下モデルで左然谷に補法。柳下圓鍼で右陰陵泉と左豊隆を瀉法。
    ☑補助療法
    ✅宮脇奇経治療 左照海-右列缺+左陥谷-左合谷にテスターを貼ると下腹部の圧痛と左乳房の痛みが和らぐので主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。
    施灸後、主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。
    ☑標治法
    ✅卵膜遺残に対して、肩井、合谷、三陰交、中封の左右を比べて圧痛の強い側に5壮、反対側に3壮知熱灸。
    ✅便秘に対して、下腹部の最も虚したところにてい鍼を当て6呼吸、指頭叩打。
    ✅骨盤調整として、上後腸骨棘の左右の高さを比べて高い側の沢田流小腸兪に龍仙打鍼。
    ☑止め鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→火曳きの鍼→百会左斜め後ろセーブ鍼。
    ☑セルフケア 肩井、合谷、三陰交、中封、奇経にドライヤー灸を指導。

    治療3回目/6月16日日曜日
    ☑経過 卵膜は特に変わらず。便は続けて出ている。やっぱり排便時に脱肛になる。乳腺炎様症状は左右とも。
    ☑脉状診 浮、数、虚。
    ☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑経絡腹診 腎肺虚、脾心実、肝平。
    ☑証決定 腎虚脾実証。
    ☑適応側 気を下げ気を開放し卵膜を下そうということで左にしていたが、左でやると気が下がり過ぎて脱肛になるので右側に変更。
    ☑本治法 中野てい鍼柳下モデルで右然谷、右魚際に補法。柳下圓鍼で左陰陵泉と左豊隆を瀉法。
    ☑補助療法
    ✅宮脇奇経治療 右照海-左列缺(卵膜遺残に対して)+右公孫-左内関(乳腺炎に対して)+左陥谷-左合谷(脱肛に対して)にテスターを貼ると下腹部の圧痛と左乳房の痛みが和らぐので主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。
    施灸後、主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。
    ☑標治法
    ✅卵膜遺残に対して、肩井、三陰交、中封の左右を比べて圧痛の強い側に5壮、反対側に3壮知熱灸。
    合谷は奇経で左を使っているので右側のみとし知熱灸5壮。
    ✅便秘に対して、下腹部の最も虚したところにてい鍼を当て6呼吸、指頭叩打。
    ✅骨盤調整として、上後腸骨棘の左右の高さを比べて高い側の沢田流小腸兪に龍仙打鍼。
    ✅脱肛に対して、百会に無熱灸20壮(髪を焼いてはいけないので)。
    ✅言霊 最後に心神を鼓舞するセルフ気功を一緒に行う
    ☑止め鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→火曳きの鍼→百会左斜め後ろセーブ鍼。
    ☑セルフケア 肩井、右合谷、三陰交、中封、奇経にドライヤー灸を指導。

    6月17日月曜日
    N助産院より、一報が入る。
    治療3回目の夜中にトイレで出血と共に卵膜が出たとのこと。

    お昼休みに様子をうかがいに行くと、持ち帰ることなく退院を迎えられるということで、ご本人はもちろんN先生も、ようやく安堵の表情を浮かべられていました。
    場の空気が光のベールに包まれているようでした。

    ご本人から、「やっと、安心してお風呂に入れたん、メッチャ嬉しかった。」、この言葉が聞けて私も嬉しくなりました。

    鍼灸師になって、脉診流経絡治療鍼灸臨床専門家に成ってよかったと思える瞬間です。

    反省と考察
    先ず、1~2回目は適応側が間違っています。
    本来、病症に偏りがなければ、女性は右側を適応側とします。
    卵膜を下すために、左側を適応側としました。
    左足は気を下げる作用があるからです、
    また左の手足は気を開放する働きもあります。
    ですが、これが間違いでした。
    その証拠に、初診時には見られなかった、脱肛、左乳腺炎が2回目の時に発症しています。
    この段階で適応側を右側に変えるべしでしたが、便秘が解消していることもあり、もう一度左適応側の腎虚で様子を見ることにしました。
    3回目の時も、脱肛、さらには乳腺炎が左右に拡がっていたので、左に見切りをつけ右側に変更しました。
    そして、翌日に遺残していた卵膜が出ました。

    やはり、治療中の患者が新しい症状を訴えたときは、前回の治療の影響による、誤治です。
    証の誤治は最も罪が重いですが、適応側を取り違えても誤治反応が出ます。
    ただし、悪い側面ばかりではありません。
    本症例のように、誤治を正治に結びつけることができれば、誤治もまた治癒への尊いプロセスと言えます。

    大事なことは、臨床に対して謙虚であることです。
    患者に起きる全ての現象は治療家の責任であり、治療の影響下の元にあるとし、再診毎の綿密な体表観察を欠かさないことと、患者の話をよく聴くことです。
    そうして変わったことがあれば、いいことも悪いことも全て、治療家の施した治療の影響ですから、患者の体に起こったことと、前回の治療との因果関係をきちんと検証するべきです。
    これが、大きな誤治を防ぎ、あるいは誤治から正治へと導く、最善策です。

    終わりに
    N先生におかれましては、毎回しびれるようなご依頼をいただき、ありがとうございます。
    今回もたくさん勉強させていただきました。
    退院までに間に合って、不安なくご自宅に戻られて本当によかったです。