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抗精子抗体(anti-sperm antibody:以下ASA)の患者さんが経絡治療によって自然妊娠することができた症例を報告させていただきます。
ASAとは
精子をアレルギー(外敵)と誤認して攻撃してしまう自己免疫疾患です。

一般社団法人日本生殖医学会|一般のみなさまへ - 不妊症Q&A:Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?

妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するまで、多くの条件がそろう必要が有ります。そのため、不妊症の原因は、多くの因子が重複していたり、逆に検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない原因不明のものもあります。  ここでは、女性、男性それぞれで認められる不妊の原因をご紹介します。1)女性の不妊症の原因 女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇形)、頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。女性側の不妊原因を図1に示しました。これらを順に説明していきます。(1)排卵因子  月経周期が25日~38日型で、基礎体温が二相性の場合は心配ありませんが、これにあてはまらない方(月経不順)は、排卵障害の可能性が有るので、産婦人科医にご相談下さい。  排卵障害の原因は様々ですが、プロラクチンという乳汁を分泌させるホルモンの分泌亢進による高プロラクチン血症によるものや、男性ホルモンの分泌亢進を特徴とする多嚢胞性卵巣症候群によるものがあります。その他、環境の変化等に伴う大きな精神的ストレス、あるいは短期間に大幅なダイエットに成功した場合にも月経不順をきたし、不妊症になります。  日本人の女性は45歳から56歳の間に閉経を迎えますが、まれに20歳台や30歳台にもかかわらず卵巣機能が極端に低下し無排卵に陥る早発卵巣不全も不妊症の原因になります。(2)卵管因子  性器クラミジア感染症は、卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着によって卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になります。とくに女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。  虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験がある方にも、卵管周囲の癒着をきたしていることがあります。また月経痛が徐々に悪化し、鎮痛剤の使用量が増えている方は子宮内膜症の疑いがありますが、この子宮内膜症の方の中に、卵管周囲の癒着がみつかることもあります。(3)子宮因子  月経量が多く、血液検査で貧血を指摘された方は子宮筋腫、中でも子宮の内側へ隆起する粘膜下筋腫の疑いがあります。粘膜

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症例
☑患者 40代女性。
☑初診 2017年。
☑随伴症状 疲れやすい。ぐっすり寝ても眠たい。肩こり。股関節痛。側彎。手足の冷え(冬には霜焼け)。花粉症。蓄膿。胃腸が弱い。下痢しやすい(渋り便)。イボ痔。
☑脉状診 浮、数、虚、硬。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑病症の経絡的弁別 疲れやすい、ぐっすり寝ても眠たい(肝は罷極の本。罷極とは疲労に関係すること。)、股関節痛、手足の冷え(肝は四極の本。四極とは四肢のこと。)、花粉症(肝陽上亢)は肝木経の変動。側彎(腎は骨髄を主る)、下痢しやすい(渋り便)(腎は二陰を主り、二陰とは生殖器と肛門で、下痢には痢病と泄瀉があり渋り腹は痢病で腎虚。別名裏急後重。)は腎水経の変動。肩こり(肺は臓腑の華蓋で五臓の最上に位置し肩は天の部である。)、蓄膿(鼻は肺の外候)、イボ痔(肛門を魄門という。魄は肺に宿る神気。)は肺金経の変動。胃腸が弱い(脾は運化すなわち消化吸収排泄を主る。)のは脾土経の変動。
☑証決定 以上を総合的に判断して肝虚陽虚証とした。
☑適応側 病症に偏りなく女性であるため右とした。また右足の三陰三陽は気の栓を閉め、気を上昇させ、気血を興奮させる作用がある。
☑本治法 気に敏感な患者のため、刺さない鍼を使用。
てい鍼で右曲泉、右陰谷に補法。左陰陵泉、右豊隆を圓鍼で瀉法。
☑補助療法 
✅宮脇奇経治療 奇経腹診より、陰蹻脈
と足陽明脉。照海-列缺と陥谷-合谷にテスターを貼り、腹部所見が変化するのを確認した後、主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。
セルフケアとして自宅でその上からドライヤー灸5壮-3壮を朝晩するように指導。
✅古野式経絡骨盤調整療法 ①股関節横紋外端の圧痛硬結と、②上前腸骨棘下内方の圧痛硬結をてい鍼で補う。
☑標治法 全身の気血を流すようにドーゼに気をつけて阻滞を疏通。
☑止め鍼 脉状、お腹の艶、主訴愁訴の変化を確認して、①中脘穴、非適応側の天枢、適応側の天枢、下腹部の最陥凹部(火曳きの鍼)に補鍼(これらをするとドーゼ多少を調整してくれる)。
②百会から2~3㍉左斜め後ろの凹みに補鍼(これをすると次回まで治療効果を保存できる。ドラクエでいうセーブ)。
☑経過 
✅このような治療を基本として週に1度の間隔で継続治療を行い、2年後に自然妊娠(特にクリニックには通っていない)。
✅証はほぼ肝虚陽虚証。時々腎虚や脾虚になることもあった。
湿痰の影響している時は脾に病実となって現れるので、陰陵泉や地機や公孫から瀉法を行った。
✅選穴も病体に応じて、太衝や中封や行間に適宜変更。
✅その時々の不定愁訴に合わせて、奇経を変更したり、標治法を使った。
例えば、
✔霜焼けになった時は、井穴刺絡をしたり局所に瀉的散鍼。
✔下痢が酷い時は、左曲池の1㍉上の圧痛硬結に知熱灸7壮。
✔イボ痔が出たときは、任脉の変法で孔最-照海。
✅治療開始から1年後には花粉症が出なくなる。
✅その間、乳管内乳頭腫、大腸憩室炎、めまい等に罹患するも、治療して軽快。
✅初診時の症状も改善し妊娠に至る。

☑考察
本来、肝虚証体質者(自邪)は妊娠しやすい。
これは『医心方』を勉強していただけると理解できる。
不妊症の大体が腎虚証になっている。
これはわりかし治しやすい。
肝と腎は相生関係(虚邪)にあるからだ。
現す証(現在の体質、病因病理)が、腎から反時計回りに外れていくと治しにくくなってくる。
肺虚証は肝に対して相剋関係(賊邪)、脾虚証は相剋関係(微邪、75難)、心虚証は相生関係にあるが五邪では実邪になる。またうつ病を患っている方が多い。

ただし、本症例のように、肝虚証であっても陽虚や気虚になってくると、肝虚陰虚証に比べて生命力が低下するため、肝虚体質者であっても時間がかかる。

このように、経絡治療では五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力を強化し、妊娠しにくい体質から妊娠しやすい体質に改善していく。

その指標となるのが、体表観察初見だ。
脉、お腹、皮膚の艶、気色などが、治療して良くなれば良い。
特にリアルタイムでその良否を教えてくれるのが脉状である。

“脉が変われば体が変わる”

病脉から平脉に近づける。
平脉とは、強くて柔らかくて締まりのある脉。
強さ=硬さではない。
むしろ硬いは脆い。
柔らかさ=軟らかさではない。
軟らかいは力なく弱い。
締まり=細いではない。
細いは生気に乏しい。
強さとは弾力であり、柔らかさとはしなやかさであり、締まりあるとはあくまで脉幅があって輪郭が鮮明で引き締まった脉であり、このような和緩を帯びた脉を平脉とする。
ただし、平脉に当てはめるのではなく、患者の素因脉を考慮した健康脉に作り替える作業を、「脉作りの臨床」とする。
ASAの病因病理
先にも書いたように精子に対するアレルギー反応である。
なぜ、精子を外敵と誤認するのか?
結論は「肝魂」の暴走である。

異常を知るためには正常を知る必要がある。
肝の生理を整理しよう。

肝は五行では、「木」に属す。
木は地上に枝を伸ばし葉を生い茂らせ、地下に根をはる。
このような働きを木とし、人体では肝とする。
四方八方に気血を伸び伸びと巡らせる働きと考えればいい。

  • 疏泄
そうして、目的地に向かって筋道を作って真っ直ぐと気血を届け、あらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与える働きを、「疏泄」とする。

  • 将軍の官謀慮出ず
疏泄は日夜行われているが、むやみやたらに行われていない。
必要な場所に必要な分だけ気血が疏泄されている。
近隣諸国から攻めこまれたり、大規模災害か発災した際に、その最前線の状況を見極めて有事に対応する一国の将のようであり、深い考えによって援軍や物資を調達するように気血を巡らすので肝は、「将軍の官謀慮出ず」と言われるのである。

さらに驚くことにこれらの働きは無意識に執り行われている。
これを、「魂」とする。
例えば風邪を引いたとする。
喉が腫れて熱が出る。
これは、上気道に侵入した菌やウイルスを撃退するために、喉に白血球が集まって腫れて炎症し、その結果熱が出て癒えていくのである。
別の言い方をすれば、侵入してきた風邪に対して、気血を疏泄して邪正抗争を引き起こしているのである。
これを魂とし、魂は肝臓に宿る神気であるため、合わせて、「肝魂」とする。
肝魂は正しく免疫である。

このような、木、疏泄、将軍の官謀慮出ず、魂といった働きの総称が肝臓である。

この超免疫機構、肝魂によって内外の外敵に蝕まれることなく健康でいられるのである。
では、この常は体の内外を栄養し、外敵にさらされた際には防衛してくれる超免疫機構である肝魂が、外敵が侵入していないにも関わらず侵入されたと誤って正常な細胞に気血を疏泄して攻撃したらどうなるか?

皮膚を攻撃したらアトピー。
毛髪を攻撃したら脱毛症。
血管を攻撃したら各種出血病。
筋肉を攻撃したら繊維筋痛症。
関節を攻撃したら膠原病。
骨を攻撃したらリウマチ。
腸を攻撃したらクローン病や過敏性腸症候群。
本来花粉は人体には無害であるのに有害と誤認して目や鼻の粘膜を攻撃するからかゆみや鼻炎が起こる。
そして、肝魂が子宮に誤って疏泄すると、精子を外敵と誤認して攻撃し、結果不妊症を引き起こすのである。

膠原病や自己免疫疾患やアレルギー疾患と同じく、肝魂の暴走こそがASAの病因病理である。
さてそれでは、肝魂が暴走するのはなぜか?
ここまでが大きな前フリで、ここからが本稿のメインである。
神に従い往来するのが魂
聖典『霊枢』本神篇に出てくる一説である。
この文言に全てが集約されている。

「神」は心臓に宿る神気。
「魂」は先程来より肝臓に宿る神気。
「心神」と「肝魂」。
これ如何に?(後述)。
解き明かす前に本神篇を見てみたい。
霊枢・本神篇
  1. 天が人に与えたものが「徳」
  2. 地が人に与えたものが「気」
  3. 徳と気が交流するものが「生」
  4. 生を発現させるものが「精」
  5. 二つの精が結合したものが「神」
  6. 神に従って往来するものを「魂」
  7. 精と並んで出入するものを「魄」
  8. 物を取り扱う所以となるものを「心」
  9. 心にあるおもいを「意」
  10. 意を保持するものを「志」
  11. 志にもとづいて保持したり変化させたりするものを「思」
  12. 思にもとづいて遠くを追求するものを「慮」
  13. 慮にもとづいて物を処理するのを「智」
精に並びて出入するのが魄
先ずはこれから始めよう。
「精」とは腎臓に宿る神気。
「魄」とは肺臓に宿る神気。
「腎精」と「肺魄」。

精とは、父母から授かりし、「先天の精(原気)」と、水穀の精微(飲食物)と天空の清気(酸素)から摂り入れ抽出する、「後天の精(原気)」。

その精に並びて出入するのが魄と言っているが、先天の精はむやみやたらに出入しないが、後天の精は摂取と排泄でよく出入するように、
Q.それと同じく人の体に出たり入ったりするものとは何か?
A.五官。

五官とは、視覚、臭覚、味覚、触覚、聴覚。

外界から様々な刺激を取り入れる働きを魄とし、これを肺が主る。
肺は皮毛を主ることにより、体表に肺魄が配置され、私たちはこの超高性能センサーを生まれながらにして搭載しているお陰で、視たり、嗅いだり、味わったり、触り分けたり、聴くことができるのである。
物を取り扱う所以となるものを心
そうして、取り入れた外界の様々な刺激や情報は、即座に心に送られて認識する。
現代医学では脳となるが、東洋医学ではこころで認識するとある。

9~13は、肺魄~心までの思考回路、処理、認識の過程の詳細な解説である。
意→志→思→慮→智と経て、それを認識する。
目に写った景色にカラーを、耳に聴こえた音色に高低清濁をつける。
そして、それに対して感情が生まれる。
自我、自意識の芽生えである。
これを心神とする。
つまり心神とは自意識である。
これには大きく2つある。

好きか嫌いか。

好きとは良好な感情。
嫌いとは悪嫌な感情。

良好な感情は身心によい影響を与える。
嫌悪な感情は身心によくない影響を与える。

何故か?
太陽と木々
自然に力を借りて。

木々の成長は陽の光りに左右される。
東に照らされれば南に伸び、西に照らされれば西に伸びる。

これら大宇宙の縮図が小宇宙である人体である。
人体では心が太陽であり、肝が木々である。
心の太陽である心神が輝けば、木々がすくすくと育つように肝魂は正しく発揮される。

心神が曇れば、肝魂も曇る。

なぜなら、神に従い往来するのが魂であるからだ。

つまり、自意識の在り方によって無意識の発現の仕方が違ってくるのである。

良好な感情を抱けば、心神が輝き、心は君主の官として神明を出し、肝将軍は謀慮して、木々を伸び伸びと伸ばすように、筋道を立てて真っ直ぐに目的地に向かって気血を疏泄し、超免疫機構肝魂を発動し、全身のあらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与え、内外の外敵から身を守ってくれる。

一方嫌悪な感情を抱けば、心神が曇り、心は暴君に成り果て、暴君の元、肝将軍は狂将軍に成り下がり、謀慮せず闇雲に気血を疏泄して、誤った肝魂は暴走し正常な細胞を傷つける。

心神を曇らす感情の起伏を「七情の乱れ」とする。
怒、喜、思、憂、悲、恐、驚。
現代ではストレスという。

これが肝魂が暴走する原因である。
故に、ストレスは最強の外邪である。

アレルギー疾患、膠原病、自己免疫疾患、あるいは癌までを含めて、これらの病の原因は肝魂の暴走であり、それは心神が曇るからである。

ASAもである。
心神と肝魂とか、メンタル鍼灸について詳しくお知りになりたい方は、以前にまとめた以下の記事をご覧になってください。
おわりに
生殖補助医療は神様の医療技術のように思われているが、着床率は決して高くない。
性差、年齢別にもよるが、ざっくり言って着床率は20%、つまり5人に1人の確率でしかない。
なぜか?
患者の体質が考慮されていないからである。
妊娠しやすい体質と妊娠しにくい体質の違い。
着床した20%の1/5の方々は、まだ妊娠しやすい体質だったから着床したわけであり、着床しなかった80%の4/5の方々は、妊娠しにくい体質だったから着床しないのである。
幾ら高度な生殖補助医療を施したところで妊娠しにくい体質を改善していなければ着床しにくいままである。
自然妊娠できれば一番いいが、晩婚化、晩産化で始めから生殖補助医療に臨まれる方も少なくない。
どうか、妊娠しにくい体質を鍼灸治療で妊娠しやすい体質に変えてから臨んでいただきたいと切に願うばかりである。

一般社団法人日本生殖医学会|一般のみなさまへ - 不妊症Q&A:Q11.生殖補助医療にはどんな種類があり、どこに行くと受けられますか?

生殖補助医療(ART)とは、体外受精をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法を指します。1)生殖補助医療の種類(1)体外受精・胚移植(IVF-ET)  採卵により未受精卵を体外に取り出し、精子と共存させる(媒精)ことにより得られた受精卵を、数日培養後、子宮に移植する(胚移植)治療法です。最初は卵管の障害が原因の不妊治療に用いられてきましたが、現在はその他の不妊原因の治療としても使われています。(2)顕微授精(卵細胞質内精子注入法、ICSI)  体外受精では受精が起こらない男性不妊の治療のため、卵子の中に細い針を用いて、精子を1匹だけ人工的に入れる治療法です。(3)凍結胚・融解移植  体外受精を行った時に、得られた胚を凍らせてとっておき、その胚をとかして移植することにより、身体に負担のかかる採卵を避けながら、効率的に妊娠の機会を増やすことができます。移植する胚の数を1つにしておけば、多胎妊娠となるリスクを減らすことができます。2)生殖補助医療を受けるための施設 生殖補助医療が始まった1980年代は、この治療をおこなえるのは大学病院や、大病院のような先端的な医療が可能な施設のみでした。しかし、技術が安定し、培養のための器具や試薬が一般化したことから、現在わが国においては、全国のどこの病院やART専門クリニックで治療を受けても、大きな違いがないレベルまで不妊治療は発展してきています。  日本産科婦人科学会では、生殖補助医療を行っている施設(生殖医療登録施設)の一覧を毎年発表しています(http://www.jsog.or.jp/public/shisetu_number/)。また、日本生殖医学会では、生殖医療を専門医とし資格を持つ医師(生殖医療専門医)を認定しています。 生殖医療専門医制度 認定者一覧印刷用PDFのダウンロード(PDF 263KB)©一般社団法人日本生殖医学会 掲載されている情報、写真、イラストなど文字・画像等のコンテンツの著作権は日本生殖医学会に帰属します。本内容の転用・複製・転載・頒布・切除・販売することは一切禁じます。〒102-8481 東京都千代田区麹町5-1 弘済会館6階 TEL:03-3288-7266 FAX:03-5216-5552 E-mail:info@jsrm.or.jp (業務時間:平日9時30分-17時30分) お問い合わせプ

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と同時に私たち鍼灸師も、妊娠しやすい体質に変えられる実力を身に付けなければならない。
鍼灸の学と術は、一朝一夕には身につかないのがもどかしいが、どうか目先の利益に走らずに、思い切って鍼灸道に突き進んでいただきたい。
そう、いつか誰かを救えるように。
「妊鍼」について以前にまとめた記事がありますので参考にしてください。
よろしければついでに安産灸もどうぞ。
はじめに
みなさん、臨床を楽しめていますか?
臨床は楽しくやらないと面白くないですよ。
臨床を楽しむ、楽しめるようになるためにはどうしたらいいかを書き記します。
治るからこそ楽しい
臨床を楽しめるか否かは、治せるかどうかです。
治るから楽しいのです。
KenjiSeki先生の言葉を借りれば、治る前提でやるから、毎回治療を楽しめるのです。

治る前提で、
どうやって治してやろうか?
この治療をしたらどうなるだろうか?
とやれればワクワクが止まりません。

正に心持ちの大事です。
信じること
治る前提で臨床に臨むためには、
  1. 人間は元々治るようにできている
  2. 病気を治すのは患者の生命力であり
  3. それを引き出す鍼灸の力を
信じることです。

自己治療の大事
信じれるようになるためには鍼灸治療で病気が治った、体が元気になったという実体験が一番腑に落ちます。

一番いい方法は、自分が病気になったら、不調になったら、自己治療をして、自分で自分を治すことです。
風邪を引いたら先ずは自分で治療するのです。
病気の程度にもよるかもしれませんが、病院に行くのは最後の最後です。
私は胆石仙痛を4回やりましたが、全部自分に鍼してお灸して痛みを止めました。
お陰さまで胆のう炎だけでなく、急性膵炎の痛みも止められるようになりました。
こういう経験をすると、否が応でも信じられるようになります。

自分で自分を治せたら、臨床においても患者の生命力とそれを引き出す鍼灸の力を信ることができ、治る前提で臨床に臨めます。
治らない理由
自己治療をしても、よくならないとします。
よくすることができないのにはワケがあります。
  1. 基本的な勉強が足りていない
  2. 基本的な技術が足りていない
からです。
基本的な勉強が足りていなくて治せないのであれば、治せるようになるまでしっかりと勉強してください。
基本的な技術が足りていなくて治せないのであれば、治せるようになるまで技術修練に励んでください。
どちらも水準に満たない場合は、直ぐにでも取りかかりましょう。

一番いいのは、師匠について2~3年はじっくりと見習うことです。
それが叶わないのであれば、自分がこれだと思った学術団体に所属して、その流派の学術を人に教えられるようになるまで学ぶことです。
そうして、開業して悪戦苦闘を重ね、修行期間から足掛け10年ぐらいすれば治せるようになります。

私も駆け出しの頃は全く治せませんでした。
特に情けなかったのが、風邪引きさんだった長男がよくかかっていた流行り病を治せなかったことです。
その度治療はすれども全く歯が立たず、我が子の病気も治せないのかと、本当に力不足を痛感させられました。
それでも前を向いてコツコツと努力を積み重ねて、段々と治せるようになり、治せるようになってくると、治療をするのが楽しくなっていきました。

10年前に来てくださっていた患者さんが、今来てくれたら治せるのになぁと思うことが多々あります。

技というのは、どっしりと腰を下ろして、コツコツと努力を積み重ねて、ようやく身に付くものです。
それも、一本の鍼と一つまみの艾だけで病気を治そうと思えば尚更です。
これができない人は患者を病苦から救うことはできません。

結果、患者が治らないので楽しくありません。
臨床が苦痛で苦痛でたまらなくなります。
本来は楽しいはずなのに。
まとめ
臨床を楽しめるようになるためには
  1. いかなる患者であっても治る前提で治療すること。
  2. 患者の生命力とそれを引き出す鍼灸の力を信じること。
  3. 自分が病気になったりや不調のときこそ、ここぞとばかりに自己治療をして自分で自分を治すこと。
  4. 治せるのようになるためには最低でも10年は1つの道に打ち込むこと。
  5. 術前術後で行った治療の良否を判定し客観的に評価すること。そうすることで何が効いて何が効かなかったのかが分かる。
  6. 患者の声に真摯に耳を傾けること。
おわりに
孔子の論語に、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」とあるように、楽しみながら鍼灸道を究めましょう。
10年かかりますが、本当に鍼灸を愛してやまないなら苦難の道ではなく、楽しくて仕方がないはずです。
そして鍼灸臨床においては、治せてこそ楽しめますから、治せるように努力しましょう。

また、「光ったナイフは草原の中に捨てられていても、いつか人が見出すものだ。」という清沢満之師(信州大谷派の僧)の格言に、鍼灸師としての在り方が集約されています。
自らを売り出す必要はありません。
師の言葉にあるように、己を磨き続ければ、いつか誰かが見つけてくれます。
世の中が無視できないくらいのまばゆい光を放てるように技術と人間性を磨いてください。

私は経絡治療家ですが、経絡治療の勉強が楽しくて仕方がありません。
ここまで打ち込めるものに出会えたことは幸せなことだと思います。
私にとっては、経“楽”治療です(*^^*)

どうか、みなさまにとって、臨床が楽しめる場となることを願っております。
今月の例会レポートをお届けします。
朝のあいさつ
第46回日本伝統鍼灸学会学術大会(茨木大会)第27回日本刺絡学会学術大会(併催)に参加してくださったお礼と、みなさんの応援のお陰で無事に藤井先生と一緒に発表することができ、当日の聴衆からは軒並み好評だったことをご報告させていただきました。

また先日、宮脇優輝名誉会長と宮脇ゆかり先生が、ゲスト講師を務められた、Kiiko Matsumoto's Japan Study Seminarが大大大好評だったことも報告させていただきました。
外国の鍼灸師が日本に来て鍼灸を学ぶセミナーですが、彼らは日本のやさしい鍼による繊細な技術を求めてやまないそうです。
国内のみなさん、間違いなく世界は経絡治療です。
痛くない鍼熱くないお灸です。
Kiiko Style×Miyawaki Style
臨床こぼれ話
誰でもできる銅×アルミ×チタン圓鍼ユニット治療を披露させていただきました。
宮脇優輝先生が考案した、「時短×簡便×即効性」を客観的に再現することができる革命的な標治法(局所治療)で、異種金属の圓鍼を組み合わせて施術し、硬結を中心とするコリ・ハリを瞬時に緩め、腫れ痛みを和らげることができます。 
これを一定の期間臨床追試して効果を確認できたので発表させていただきました
  • 特徴
  1. 治療時間を短縮できる。
  2. 施術が簡便で誰でもできる。
  3. 再現性がある。
  4. 即効性に優れている。
  5. 痛くない。
  6. 効果を患者さんと共有できる。
  7. 屋外や衛生環境が整っていない場所でも安心安全に治療できる。
  • やり方
  1. 局所のはっているところや硬結を探す。
  2. そこを治療点として、異種金属の圓鍼2本を組み合わせてなでる。
  3. チタンとアルミの圓鍼の組み合わせが最も影響力がある。
  4. 方向は右半身は上から下へ、左半身は下から上に、肩上部は中心から外へ向かってなでる。
  5. 回数は5回を基本とし、敏感な患者さんは3回とする。あとは微調整。
  6. 圓鍼をかけたあと所見を確認する。
  7. 緩んでいればそこを限度とし、緩んでいなければ加療する。
  8. この際、ドーゼを過ごすと逆にはってくる。その場合は、過ごした回数だけ反対方向になでるとリセットできる。
効果のほどは、本日みなさんに見ていただいた通りです。
即効性があって施術も簡単です。
早速臨床で追試検討してください。
コリ、腫れ痛み何でも来いとばかりに治療が楽しくなります。
試していただいて更に新しいことが分かったら是非教えてください。
講義
実技
認定アレルギー専門鍼灸師養成中級講座
  • 刺絡鍼法
例会と並行して開催しています、本講座で、刺絡鍼法の指導を担当させていただきました。

刺絡は刺絡すべき血絡をいかに探し選択するかに全てがかかっています。
本日は、そのコツのコツのコツをお伝えさせていただきましたが、受講生のみなさんは本当に筋がいいので教えるのが楽でした。
アレルギーだけでなく、器質的に変性をきたした疾患にバッチリ効くのでバンバン治してください。
  • 古野式経絡骨盤調整療法
  • 宮脇奇経治療
受講生のみなさん、本日も遠くからご参加いただきありがとうございました。
いよいよ上級講座に入ります。
みんなで一緒にアレルギー疾患を治せるようになりましょう!
楽しみにしておいてください。

終わりに
愛すべき会員のみなさま。
本日はお疲れさまでした。
今月の例会では、
収穫がありましたか?
課題はクリアできましたか?
新たな課題は見つかりましたか?
何か1つでもいいので仕入れて帰ってくださいね。

昨日治せなかった患者さんを明日は治せるように。

中野正得

外感病とは、気候変動が体に影響して発病する急性熱病や、インフルエンザウイルス、溶連菌、ヘルペスウイルスなどに感染することによって発病する病気の総称です。
また、秋冬の乾燥する季節に悪化するアトピーや喘息、冷えて筋肉が硬くなり発症するぎっくり腰なども狭義の外感病と言えます。
病気というのは、この外感病と雑病に大別されます。
雑病とは外感病以外の病全般です。
肩こり、腰痛、膝痛、内臓疾患、精神疾患など。
外感病は更に、傷寒(しょうかん)と温病(うんびょう)の別があります。
傷寒とは文字通り寒邪によって発病する外感病で、温病も文字通り温熱の邪気によって発病する外感病です。
寒邪と湿邪は陰邪ですから地の部である足元から侵入して来ます。だから足が冷えます。
風邪と暑邪と火邪と燥邪は陽邪ですから天の部である上半身から侵入して来ます。

傷寒は、風邪と寒邪がくっついた風寒の邪気として、項から侵入して来ます。
温病は風邪と火(熱)邪がくっついた風熱の邪気として、口鼻から侵入して来ます。

気候変動(外因、風暑湿燥寒火)が、発病の原因になると考えるのが東洋医学の独自性ですが、寒邪による傷寒にしろ、温熱の邪気による温病にしろ、これらはあくまで“客”であり、首謀者は“風邪”です。
ただし、外から吹き付ける風ではありません。
体内で発生した風です。
これを内風とします。
風邪は毛穴(腠理そうり)を開くという特徴があります。
内風が発生すると、体の内側から風穴を空けます。
そうして各季節(四時)の邪気を招き入れます。
寒凉の時期なら寒邪や燥邪を、温暖の時期なら暑邪や火邪を招き入れます。
どこからともなく吹く隙間風をイメージしてください。
正に風邪は万病の因です。
ではこの内風はどこからやってきたのでしょう?
大宇宙である自然界における異常な風の代名詞と言えば台風やハリケーンですが、台風は高気圧と低気圧の乱高下によって発生します。
小宇宙である人体においては、“落差”によって病的な風、風邪が生じると、奈良の上雅也先生は仰っておられます。

“落差”

○○の落差が激しいなどに使われる言葉ですが、人体における落差とは感情の起伏や気の緩みなどです。
激しく怒った後や、仕事やテスト勉強が一区切りついてホッとした時などに、平時との落差が生まれます
緊張の緩和の落差です。
自然界における高気圧と低気圧の乱高下の落差によって台風が発生するように、平時からの落差、緊張の緩和による落差によって風邪を生じます。
体内で発生した風邪ですのでこれを内風とします。
内風が、内側から隙間風を通す風穴を空け、腠理を開き、四時の邪気を招き入れます。

今のような寒凉の季節なら、寒邪を招き入れ、傷寒を発病させます。
春夏の温暖の季節なら、温熱の邪気を招き入れ、温病を発病させます。
暑気中りによる熱中症も温病に包括されます。
落差とは七情の乱れですから、肝鬱つまりストレスとも言えます。
精神状態の不安定さによって、落差が生まれ、肝風内動し、気候変動を受けやすい下地をこさえるから、外感病を発病するのです。
正に内傷なければ外邪入らずであり、ストレスこそが最強の外邪です。
受験生にインフルエンザが多いのもこれで考えれば納得です。

インフルエンザなどの感染症にかからないためには、各種予防接種も大事です。
温活も大事です。
うがい手荒いも大事です。
もっと大事なことは精神を安定させて落差を作らないことが何よりの予防になります。
これは熱中症でも同じことが言えます。
真の熱中症対策は落差を作らないことです。
落差によって生じた内風に風穴を空けられるから暑邪の侵入を許すのです。
このような下地をこさえていれば、幾ら水分補給や塩分補給をしっかりしていても熱中症になります。

外感病の予防は、精神を安定させること、つまり内傷を作らないことです。
一喜一憂しない。
気を緩めすぎない。
ある程度の緊張感は常に必要だということです。

子供が流行り病にかかりやすいのは、好奇心と不安の落差が大きいからです。
外感病の経絡治療
カゼをひいたり、インフルエンザになった場合は、医療機関に行くのが当たり前になっていますが、鍼灸を併用した方が経過がいいです。
患者さんとの信頼関係があれば、医療機関を経ずに鍼灸院に来るケースもあります。
厳密には、弁証のモノサシ(六経弁証、衛気営血弁証)や施治(散寒、清熱、凉血)が違うので傷寒か温病に分けるべきですが、経絡治療では、傷寒も温病も更には雑病も同じ土俵で勝負出来ます。

内傷である生気の不足を補います。
整脉力豊かに陰経から補えると、邪気が侵入している相剋経や陽経に邪気実となって姿を現してきます。
現れた脉状に応じて各論的に瀉法をし、邪気を除きます。
これを本治法とします。
本治法だけでなく、病体に応じた補助療法や標治法を施し早期回復に努めます。 

外感病の臨床
  • 急性発熱
発熱時は大人も子供も肺虚証ではやらない方がいいです。
肺経は気を巡らし温める作用があるので余計に発熱します。
麻黄湯や葛根湯や桂枝湯のように表寒や中風を発散できるほど温めて発汗させられればいいのですが、肺経を補って太陽経か陽明経を瀉して上手くいった試しがありません。
恥をさらしますが、駆け出しの頃は幼かった長男の急性発熱を全く治せませんでした。
治せないどころか余計に発熱させて高熱で意識が朦朧として譫言を発する中、夜間の救急に走ったこともありました。
小児の場合は首が短いので発散しにくく、頭が近いために停滞した邪熱が頭脳に昇りやすいのです。
この時、生気が邪気に負けると脳症を発症する危険があります。
なので、特に小児の発熱している急性疾患に対して肺経を補うのは慎重になるべきです。

僕は柳下登志夫先生の教えを参考に、小児のかぜや気管支炎など、熱の出る急性疾患で、悪寒、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、咳などがあるけれど、汗は出ないという状態のいわゆる太陽傷寒証に対しては、陰中の太陰である腎を補って気を下げます。
発熱児は頭は熱いけど足が冷たい子が多いので、超逆気症状と診るわけです。
この時足も熱ければ病はまだまだ登り坂ですので余談を許しません。
もし足の温度に左右差があれば温い側の金門を瀉します。
あるいは足に左右差がなく、手に左右差があれば、二間か三間か合谷、または胃経上のツボを瀉します。
手足に左右差がなければ、復溜など腎1穴だけ補って、両手に水掻きの鍼をします。
水掻きの部は、身熱を主治する滎穴が位置するので、瀉的に運鍼することで解熱に働きます。
後は気を巡らすように全身に小児はりをして、最後に非適応側の後谿にチョンと止め鍼をして終えます。
止め鍼はドーゼの多少を丁度いい塩梅に整えてくれます。
発熱している時は後谿、疳虫などの雑病は合谷、先天性疾患は陽池を使います。
このような方法で我が子を治せるようになり、治療室に来てくれる発熱児を救えるようになりました。
咳が主症状であれば、肺の変動ですがほとんどが肺実です。
正確には肺陰虚による肺熱、肺燥です。
本治法は、左の肝虚右の肺実証の相剋調整で治療することが多いです。
肺実は魚際を補って肺陰を潤して清熱します。
麦門冬湯証の応用です。
魚際を補っても肺実が取れなければ肺経上を切経して最も邪の客している箇所から瀉します。
胃経に邪が浮いてくることが多いですが、豊隆を邪して去痰するとよいでしょう。
補助療法は、任脉の変法で孔最-照海。
標治法は、大椎、風門の知熱灸。
肺経、大腸経上の圧痛に知熱灸。
で鎮咳去痰作用があります。
  • 咽喉痛/クループ
咽喉痛は腎虚か肝虚が多いです。
補助療法は、子午治療。
咽喉は小腸経か大腸経ですので、痛む側と反対側の蠡溝か大鐘。
左右どちらの咽喉が痛いか判別しない場合は人迎の圧痛の強い側を患側とし、健側の蠡溝か大鐘を使います。
奇経は照海-列缺+陥谷-合谷。
標治法は、分界項線のコリを取る。
  • ヘルペス
ヘルペスは、脾胃湿熱か肝胆湿熱です。
肝虚脾実か腎虚脾実、脾虚肝実か69難型肺虚肝実か75難型肺虚肝実で本治法します。
補助療法は、患部の流注を考慮した奇経を取る。帯状疱疹なら陽維脉か帯脉など。
標治法は、ボスキャラの水疱に直接知熱灸がよく効きます。
症例
☑患者 娘。
☑主訴 インフルエンザによる発熱、しんどい。
☑脉状診 浮、数、実。
☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑経絡腹芯 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑証決定 腎虚証。
☑適応側 右。
☑本治法 てい鍼で右復溜に補法。
☑標治法 左手から右手の順に水掻きの鍼。気を巡らすように全身に小児はり。左後谿にチョンと止め鍼。
☑経過 直後4回嘔吐(汗吐下の吐に作用)してすっかり元気になる。解熱。3日間治療して治癒。
症例②
☑患者 筆者。
☑主訴 咳、咽喉痛。
☑脉状診 浮、数、虚。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹芯 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑証決定 肝虚肺実証。
☑適応側 左。
☑本治法 左曲泉、左陰谷に補法。右魚際に輸瀉。
☑補助療法
✅奇経治療
右孔最-左照海に金銀粒貼付してその上から知熱灸5壮-3壮。
✅子午治療
肝-小腸で人迎を押さえて圧痛の強い側と反対側の蠡溝に知熱灸5壮。 
☑標治法 肺経~大腸経上の圧痛硬結に圧痛が取れるまで適宜知熱灸。
☑経過 一週間毎日治療して治癒。
沢田流太極療法を経絡治療の枠組みの中で補助療法として再考し、追試検討した結果、操作面での普遍性、効果面での確実性、応用面での広範囲を獲得でき、特に鍼灸臨床で最も大事な効果面において、即効性と全身調整・全体治療に優れていることが分かりましたので報告させていただきます。

太極
太極は万物の根源であり、ここから陰陽の二元が生ずるとする。
「易有太極 是生兩儀 兩儀生四象 四象生八卦 八卦定吉凶 吉凶生大業」(易に太極あり、これ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず)である。

道(タオ)とは宇宙と人生の根源的な不滅の真理を指す。
道の字は辶(しんにょう)が終わりを、首が始まりを示し、道の字自体が太極にもある二元論的要素を表している。
「道生一 一生二 二生三 三生萬物」(道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず)。

無極
さらに「無極」があるが、無極は太極に先行するものではなく、太極の性質を形容するものであるとして「無極にして太極」である。

沢田流太極療法
鍼灸医道中興の祖である、沢田健師が創始した治療法で、日蓮聖人の忠実なる弟子として、鍼灸古道身読の行者を以て自ら任じ、素霊、難経、十四経、和漢三才図絵などを研究し、五臓六腑の中枢を整えれば末梢の病気は全て治るという奥義を体得し、これを大乗法華経の一念三千十二因縁の理による太極療法とした。

後に神様から非常な難問題を与えられ、それを見事にパスしたといふ自覚で、其後は直神伝沢田流開祖を自称するに至る。
鍼灸真髄より抜粋した、師やその弟子の言葉を紹介する。
  1. 薬物を用いるのは第三の療法、人間の持っている力を活発に働かせるのが第一の医学。
  2. 医道乱るれば国乱る。
  3. 国の乱れを正すは医道を正すに如くはなし。
  4. 書物は死物なり、死物の古典を以て生ける人体を読むべし
  5. 内臓が完全になほつたときには姿勢も必ずよくなる。
  6. いらん物は外へ出し、足らんものは補うという大調和の原則によるものなのです。もともと病気のなほるとうのも、調和を失っていたのが調和を得るということなのです。一体病気なぞというものはないのです。血液の循環が不均衡になつた為に調和を失つて具合が悪くなつたので、血液の循環を平均にさせれば調和を得てなおるものなんです。
  7. 病気というのはくるひがあるということだから、くるつた体はくるつたように穴を取る必要が出て来るのです。
  8. 太極療法は根本病が治るばかりではない、体質まで改造できるのです。
  9. 直観力のすぐれた人々の組織した経絡経穴であるとすれば、我等も之を会得する為には、嗜慾を去り、心を空にして、身心を清澄ならしめ、直観力をいやが上にも磨かねばならない。
  10.  病気というものは、過去の罪行の因縁の結果。
  11. 迷ってはだめです、信仰です。あくまで信じてやるのです。
  12. 患者が迷うのではない。あなたが迷つているのです。自ら信じることの出来ないような人にどうして大切な生命があづけられるものですか。
  13. 死を恐れていたら何も出来るものではない。
  14. 真に腕さえあるなら山の中へ隠れていたつて人が尋ねて来て、治療せずには居れなくなつて了うのです。
  15. 子供は神様が守つていられるので子供の病気には命柱で沢山です。
  16. せん頃わしが神様の試験に出逢った時、この関係がよくわかりました。
  17. 第三行は第二行の変化で病の第三期に入ったものです。こういう大事なことが誰も解つて居りません。
  18. 小児七才までを神童と名づく。神これを守る。
  19. 本当の師匠というものは病人です。病人を師匠として教えて貰うのですよと。だから一円の謝礼を貰つたら、五十銭は教えて貰う謝礼として返すがよい。なほしてやるのではなく、体を貸して貰い、教えて貰うのですのですと。これは今に忘れぬ有難い言葉です。

異種金属てい鍼経絡調整療法

(一社)東洋はり医学会関西名誉会長、宮脇優輝先生が考案された治療法で、その方法は、銅とアルミの異種金属のてい鍼を、局所の硬結を、上下または左右から挟むことで、点であるいは面で、あるいは列で、緩めることができる標治法の一種である。


これを同会副会長、神開雄三先生が臨床追試して体系化し、筆者が異種金属てい鍼経絡調整療法と名付けた。

異種金属経絡てい鍼経絡調整療法×沢田流太極療法=異種金属てい鍼太極療法
従来はお灸で圧痛がなくなるように整えるのを、異種金属てい鍼を用いることで、時短での調整を可能とした。

  1. 証に応じた背部兪穴を選択する。肝の変動なら肝兪か胆兪の1~3行、心の変動なら心兪か厥陰兪か小腸兪か三焦兪の1~3行、脾の変動なら脾兪か胃兪の1~3行、肺の変動なら肺兪か大腸兪の1~3行、腎の変動なら腎兪か膀胱兪の1~3行。おもしろいことに、陽虚になればなるほど臓兪ではなく腑兪に反応がでる。同じ腎虚でも腎陰虚なら腎兪1~3行、腎陽虚なら膀胱兪1~3行というように。
  2. 督脉の際(5分)を第一行、1寸5分を第二行、3寸を第三行とする。
  3. 左右の1~3行の反応を仔細に捉えて、最圧痛点を選穴する。
  4. そのツボに銅のてい鍼を垂直に当て、反対側のツボにアルミのてい鍼を垂直に当て、1~2ミリ浮かしてかざす。
  5. 脉の速さに応じて、木・火・土・金・水と唱えて鍼をツボから取る。かざす時間は約3~7秒。
  6. 効果判定は、圧痛の軽減と主訴愁訴の軽減で確認する。
証法一致すれば、即座に変化する。
病の新久は、新しいものほど1行に現れることが多く、古くなると2行3行へと広がっていく。
尊敬するKenji Seki先生の仰る通りである。
3行には膏肓穴があり、難治を表す言葉で有名な、「病膏肓に入る」は古人の経験の集積である。

また単純に、手の親指の腫れ痛み屈伸不利は、肺兪か大腸兪1~3行とか、足の親指の痛風などであれば、脾兪・胃兪・肝兪・胆兪の1~3行というように、流中の表裏経を考えた使い方も効果がある。

さらには、上歯痛には厥陰兪など、子午治療にも応用できる。
また、急性症の場合は、お腹の四霊穴で調整する。
司天である滑肉門は、上焦の一切合切を主り、在泉である大巨は、下焦の一切合切を主り、気交である天枢は、中焦の一切合切を主る。
心肺の変動なら滑肉門、脾肝の変動なら天枢、肝腎の変動なら大巨の左右差を銅アルで整えると症状が軽減する。
これらを、異種金属てい鍼太極療法とする。

小児命柱に異種金属てい鍼太極療法を施している様子。


症例
  1. 80代男性、腰痛、肝虚証で本治法後、胆兪1行右銅左アルミで軽減。
  2. 50代男性、関節炎、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  3. 40代男性、頚上肢のしびれ痛み、肘の屈伸不利、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  4. 10代女性、頭痛、腹痛、胸痛、脾虚肝実証で本治法後、脾兪1行左銅右アルミで軽減。
  5. 20代男性、膝痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミ+天枢右銅左アルミで軽減。
  6. 80代男性、肩こり、肩関節周囲炎、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  7. 60代男性、腰痛、足首痛、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  8. 1歳男児、先天性皮膚欠損症、肺虚証で本治法後、肺兪1行+腎兪1行(いわゆる命柱)左銅右アルミで軽減。
  9. 60代女性、腰下肢痛、脾虚証で本治法後、脾兪2行右銅左アルミで軽減。
  10. 1歳女児、アトピー性皮膚炎、中耳炎、腎虚証で本治法後、肺兪1行+腎兪1行(いわゆる命柱)右銅左アルミで軽減。
  11. 70代男性、腰痛、脳梗塞後遺症、腎虚心実証で本治法後、膀胱兪2行左銅右アルミで軽減。
  12. 80代男性、腰下肢痛、肝虚脾実証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  13. 40代男性、頚上肢のしびれ痛み、膝痛、逆流性食道炎、肝兪3行右銅左アルミ+天枢右銅左アルミで症状軽減
  14. 20代男性、慢性関節痛筋痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  15. 80代女性、突発性難聴、膝痛、肝虚脾実証で本治法後、肝兪2行右銅左アルミで軽減。
  16. 50代女性、頚肩こり、眼精疲労、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  17. 60代男性、股関節痛、脾虚証で本治法後、脾兪2行右銅左アルミで軽減。
  18. 40代女性、腰痛、白血病骨髄移植後経過観察中、心の病、心虚証で本治法後、三焦兪1行左銅右アルミで症状軽減。
  19. 60代女性、頚肩痛、膝痛、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  20. 50代女性、めまい、全身の筋肉痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  21. 60代女性、腰下肢痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行左銅右アルミで軽減。
  22. 70代男性、腰下肢痛、肩関節周囲炎、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  23. 80代男性、肺がん、右肩痛、肝虚肺実証で本治法後、胆兪1行右銅左アルミで軽減。

おわりに

二刀の先駆者である岡西裕幸先生、銅アルによるてい鍼療法を考案された宮脇優輝先生、銅アルてい鍼/奇経てい鍼を作っていただいた伊藤勝則社長、異種金属てい鍼調整療法として確立された神開雄三先生、卓越した臨床成績により沢田流再考のきっかけを与えてくださったKenji Seki先生に心よりお礼申し上げます。

そして何といっても、鍼灸医道中興の祖として今なお私たちに影響を与えてくださる沢田健師と、師の業績を形にして世に残してくださった代田文誌師に深く感謝申し上げます。


なお、銅アルを数秒間かざすだけの手技で事足りているのは、本治法で生命力を強化した上で施しているからであり、異種金属てい鍼太極療法はあくまで本治法の補助療法である。

従来の太極療法のみ、あるいは一穴のみで施す場合は、圧痛が取れるまで施灸するか適当な時間置鍼が必要であることをお断りする次第である。


補法の基本刺鍼(tonification technique)
補法は虚(deficient)、即ち生気の不足を補うのが目的。

  • 毫鍼篇
「補に曰く、之に随ふ。之に随ふの意は、妄りに行くが如し、行くが若く按ずるが若く、蚊虻の止まるが如く、留るが若く還るが若く、去ること弦絶の如し。左をして右に属せしむ。其の気、故に止まる。外門巳に閉じて、中気乃ち実す。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉

  • 鍉鍼篇
「鍼、長さ三寸半、てい鍼は鋒黍粟しょぞくの鋭なるが如し、脉を按ずることを主つかさどる。陷すること勿なかれ、以って其の気を致いたすなり。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉
瀉法の基本刺鍼(draining technique)
瀉法は実(excess)、即ち邪気を取り除くのが目的。
「瀉に曰く、必ず持ちて之を内れ、放ちて之を出す。陽を排して鍼は得れば邪気泄るることを得る。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉

  • 実邪に対する瀉法
  1. 浮実(気の変化) 
  2. 弦実(血の変化)

  • 虚性の邪に対する補中の瀉法(draining within tonification technique)
  1. 塵(気の変化)
  2. 枯(気の変化)
  3. 堅(血の変化)

  • 陰実和法(yin exces Waho)
和法(Waho)は虚でもなく実でもなく、即ち気血の滞りを流し中和させるのが目的。
補瀉調整の目的は生命力の強化
疾病とは、内因(怒喜思憂悲恐驚)、外因(風暑湿燥寒火)、不内外因(飲食労倦)の三因により、私たちが生きていくために必要な五つの大切な働きである五臓(肝心脾肺腎)の生気が不足することに端を発します。

四診を総合的に判断して証を導き、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え、補瀉調整(生気の不足を補い、生気を妨害する邪気を瀉す)し、生命力を強化して、病体を治します。
その結果、病は癒えていきます。
「内傷なければ外邪入らず」「陰主陽従」に基づき、治療は陰経の補法から始めます。
整脉力豊かに陰経を補うことができれば、相剋する陰経や病症に関連する陽経に邪実が浮いてきます。
脉状に応じて各論的瀉法(瀉法・補中の瀉法・和法)を施します。
十二経の気血が平らかになり、五臓六腑のバランスが整います。
これを経絡治療の本治法とします。
鍼灸術の奥旨とは、正に生命力の強化に尽きます。
補法の基本刺鍼~応用編
ロングバージョン
ショートバージョン
補法の鍼~臨床篇
止め鍼
治療の最後は止め鍼をして、ドーゼの多少を調節します。
実際の本治法
扁鵲(秦越人)と難経
稀代の名医、扁鵲(秦越人)は、『難経』にて、命門は生気の原であると、医道の奥旨に達しています。
そして、その盛衰を三焦で捉え、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え、補瀉調整し、生命力の強化をはかることを鍼灸治療の本道としました。
これを為さんがために編み出されたのが、六十九難、七十五難、八十一難の治療法則であり、この千古不滅の大原則が、脉作りの臨床を可能たらしめます。

六十九難曰.
經言.

虚者補之.實者瀉之.不虚不實以經取之.何謂也.

然.

虚者補其母.

實者瀉其子.當先補之.然後瀉之.

不實不虚.以經取之者.是正經自生病.不中他邪也.當自取其經.故言以經取之.


◆七十五難曰.

經言.

東方實.西方虚.瀉南方.補北方.何謂也.

然.

金木水火土.當更相平.

東方木也.西方金也.

木欲實.金當平之.

火欲實.水當平之.

土欲實.木當平之.

金欲實.火當平之.

水欲實.土當平之.

東方肝也.則知肝實.

西方肺也.則知肺虚.

瀉南方火.補北方水.

南方火.火者木之子也.

北方水.水者木之母也.

水勝火.子能令母實.母能令子虚.故瀉火補水.欲令金不得平木也.

經曰.

不能治其虚.何問其餘.

此之謂也.


◆八十一難曰.

經言.

無實實虚虚.損不足而益有餘.

是寸口脉耶.

將病自有虚實耶.

其損益奈何.

然.

是病非謂寸口脉也.

謂病自有虚實也.

假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.金木當更相平.當知金平木.

假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.而反重實其肺.故曰實實虚虚.損不足而益有餘.

此者中工之所害也.


以下に基本脉型を記します。
基本脉型と治療法則
☑69難型 
適応側の肺脾補、反対側の肝瀉。
☑75難型 
適応側の腎補、同側の心または肝瀉。
☑69難型 
適応側の肝腎補、反対側の脾瀉。
☑75難型 
適応側の心補、同側の肺または脾瀉。
☑69難型 
適応側の脾心補、反対側の腎瀉。
☑75難型 
適応側の肺補、同側の肝または腎瀉。
☑69難型 
適応側の腎肺補、反対側の心瀉。
☑75難型 
適応側の肝補、同側の脾または心瀉。
☑69難型 
適応側の心肝補、反対側の肺瀉。
☑75難型 
適応側の脾補、同側の腎または肺瀉。
適応側の肝腎補、反対側の肺瀉。
適応側の肺脾補、反対側の心瀉。
適応側の心肝補、反対側の腎瀉。
適応側の腎肺補、反対側の脾瀉。
適応側の脾心補、反対側の肝瀉。

難経解説書
症例
☑患者 母親。
☑主訴 足の浮腫み。
☑現病歴 昨日から歩き過ぎたのか膝から下が浮腫んでだるくて痛い。
☑足首を周径すると、右23.8㎝左23.5。
☑脉状診 浮いて広がっている。
☑経絡腹診 脾心虚、肝腎実、肺平。
☑奇経腹診 陰蹻脉、陽蹻脉。
☑比較脉診 脾心虚、肝腎実、肺平
☑証決定 脾虚証。
☑適応側 女性であること、病症に偏りがないこと、天枢診により右側とした。
☑本治法 右水泉を補う→右陰陵泉を補う→右曲沢を補う→胃経に浮いた虚性の邪を切経して最も邪が客している左豊隆から枯に応ずる補中の瀉法→左水泉を補う。
✅効果判定 浮いて広がっていた脉が引き締まる。足に弾力性が出る。足首の周径、右23.6左23.3。
☑補助療法 宮脇奇経治療。左照海-右列缺、右申脈-左後谿に主穴に10壮従穴に6壮で無熱灸。
✅効果判定 足首の周径、右23.3左23.0。
☑経過 だる痛みが和らぐ。
☑考察 歩きすぎたということを鵜呑みにするならば、久しく行けば筋を傷るで肝か、四肢を主る脾の変動である。
僕が尊敬するSekiKenji先生は、多紀元堅(江戸時代末期の幕府医官。幕府医学館考証派を代表する漢方医。)は、肝は罷極の本を四極(四肢)の本だという解釈を述べていると教えてくれました。
脾が主になるか肝が主になるかは、四診を総合的に判断していきます。
今回は脾虚本証で上手くいきました。
良くなってよかったです。

オカンいつもありがとう。

浮腫みの病因病理
  • 脾の変動
摂取した水分は胃に納まり、消化されます。
身体にとって必要な水分と不必要な水分に泌別されます。
前者を「清」、後者を「濁」とします。
清は「津液」となってあらゆる細胞・組織・器官・臓腑経絡・四肢・百骸を潤し養い活動力を与えます。
濁は汗や小便となって体外に排泄されます。
この循環をスムーズに行う働きを「脾臓」とします。
脾臓が失調すると、水液の運化が滞ります。
流れているうちは津液として全身を巡りますが、滞ると「湿」と名を変えます。
生気を蝕む病理産物ですから「湿邪」とします。
また湿邪は蒸されると「痰」を形成しますので合わせて「湿痰」とします。
脾が失調すると湿痰によって浮腫みます。


  • 腎の変動

脾胃の消化には陽気が要ります。

この陽気を命門の火とします。

脾胃が鍋で命門が竈(かまど)の火です。

竈の火力が十分だと鍋の具がよく煮炊きできるように、命門の火が十全であれば脾胃の消化を助けます。

この働きを「腎臓」とします。

腎臓は水臓です。

ではどうして熱源となり得るのでしょうか?

ここからは発生学のお勉強です。

男子の一滴の精が女子の子宮に凝る時、胎が生じます。

父の精はその子の精となります。

精は陰であり水です。

陰は沈降の性質を有しているので、精は下に降ります。

精を蔵す器が必要なので腎臓ができます。

精は水です。

腎臓は水で満たされます。

ただし水だけだと冷えてしまうので、元々陽気が具わっています。

水中の中の決して消えることのない火です。

これを命門の火とか、臍下腎間の陽気とします。

この陽気によって水中が適温に保たれ、生命活動の根元的エネルギーとなります。

聖典『難経』では、「五臓六腑の本、十二経脈の根、呼吸の門、三焦の原、一に守邪の神と名づく」とし、命門の火、臍下腎間の陽気は生気の原であると、医道の深奥に達しています。

腎が変動すると原気の別使でる三焦が巡らないため水液が停滞します。



  • 肝の変動

肝は五行では木に属します。

木の性質は曲直です。

曲直とは屈曲と伸展です。

成長・昇発・条達の性質があります。

樹木が伸び伸びと枝葉を伸ばしていくように、気血を円滑で淀みなく隅々まで行き渡らせます。

これを「疏泄」とします。

四六時中目を凝らして適材適所に適量の気血を巡らしています。

これを「将軍の官謀慮出ず」とします。

肝将軍の疏泄による滋養と防衛は無意識に行われています。

これを「魂」とします。免疫機構です。

このような一連の働きを「肝臓」とします。

肝が十全であれば、気血を円滑に伸びやかに運行させることができるため、津液も淀みなく巡ることができます。

肝が変動して気が滞ると水も滞るので浮腫みます。


  • 肺の変動

肺は五官を主ります。

五官とは視覚・臭覚・味覚・触覚・聴覚です。

これを「魄」とします。

肺魄によって外界の情報を取り入れます。

その最前線が体表の皮膚です。

腠理(そうり)です。

呼気によって、濁気を吐き出し、津液や衛気を全身に宣発し、肌膚を温め潤し、腠理を開闔(皮膚の収縮と弛緩)し、外邪に対する防衛的な役割をします。

また吸気によって、清気を吸い込み、五臓の最も高い位置から華蓋として、津液の運行を管理調節し、軌道を清潔に保ち、中焦~下焦へと津液を粛降させ、全身に散布します。

このような働きから「肺は水の上源」とします。

これらの働きを「肺臓」とします。

肺が変動すると、宣発が失調し、腠理の開闔がバカになり、防衛力が低下するので、外邪の侵襲を受け、上焦で津液が停滞します。

風邪を引くとおしっこが出にくくなるのはよく経験するところです。

あるいは粛降できないので上に溢れて顔が浮腫みます。


  • 大自然と照らし合わせると

天空の太陽が地上の海面と大地を温めます。

温まった海面や大地に含まれる湧水が蒸発します。

蒸発した水蒸気が雲を作ります。

そして雨を降らします。

どこに降らすかは風のきまぐれです。

太陽は心です。

海面は腎です。

大地は脾です。

水蒸気は三焦です。

雲は肺です。

風は肝です。

心腎が交流しないと海面を蒸発させることができません。

脾が変動すると大地の保水力が低下します。

肺が変動すると雲ができないか乱発を招きます。

肝が変動すると風は吹かないか吹き荒れます。

その結果、

地上の水が上昇しないと下が水で溢れます。

手足が浮腫みます。

天空の水が下降しないと上に水が溢れます。

顔が浮腫みます。


治療

脾の変動は湿病、腎の変動は水気病、肝の変動は痛風歴節病、肺の変動は風水に分類されます。

また、圧痕がつくのは浮腫で脾腎の変動、圧痕がつかないのが水腫で肝の変動ということですが、絶対ではありません。


  • 本治法

病機十九条に「諸湿腫満は皆脾に求む」とあるように、浮腫みの中心は脾の変動です。

つまり、

  1. 脾虚証(脾心の虚)
  2. 肺虚証(肺脾の虚)
  3. 肝虚脾実証(肝腎の虚、脾の実)
  4. 腎虚脾実証(腎肺の虚、脾の実)

が立つことになります。

どの証にせよ、合水穴を補います。

合水穴には、大根に塩をふると水が出てしなびれるのと同じ作用があります。

本治法の前に適応側の水泉を補い、本治法の後に非適応側の水泉を補います。

水泉は内踝尖と踵の後端を結んだ線上の陥凹部あるいは圧痛硬結に取ります。

  • 補助療法

奇経治療。

照海-列缺を単独で用いるか、照海-列缺+申脈-後谿です。

宮脇奇経腹診で鑑別すると便利です。

  • 標治法

腎兪、膀胱兪に知熱灸。

足の三焦経を調整する。

「三焦は決瀆の官、水道これより出ず」とありますが、決は切り開く、瀆は水路、官は役人ですから、三焦は水路を切り開いて水に流れをよくする役人と同じ働きがあります。

膀胱経と胆経の間をこの足の三焦経は流れます。

三焦経の下合穴である委陽から崑崙までの硬結を処置していくと水はけがよくなります。

「膀胱は州都の官、津液これを蔵し、気化させ則ち出すことを能す。」とあるように、膀胱経の下合穴である委中も反応があれば調整します。

  • 養生

基本は脾を健やかにし、湿痰をこしらえないことです。

脾が変動すると湿痰を温床します。

以下の3つが病因となります。

  1. 暴飲暴食
  2. 運動不足
  3. 思慮過度

暴飲暴食すると清濁の泌別に負担をかけます。

腹八分目、場合によっては六分目を心がけましょう。

運動不足は脾胃を弱らせます。

中世の名医岡本一抱の説です。

脾胃は石臼の上下の石です。

取手は四肢です。

取手を良く動かすと石臼がよく回って細かく挽けるように、四肢つまり手足をよく動かすと脾胃が良く働き消化を助けます。

と仰っています。

適度な運動は消化もよくなるしお腹も空くので、是非心がけましょう。

散歩が一番お手軽です。

思慮過度もまた脾胃に負担をかけます。

食事は飲食物の清濁の泌別ですが、善悪の判断は精神の清濁の泌別です。

考え過ぎは脾胃に負担をかけます。

あれこれと考え過ぎないように心がけましょう。

  • 肝鬱気滞瘀血

最後に最も大事なことはストレスを回避することです。

各臓腑が失調すると浮腫みを発症しますが、その根本的原因はストレスです。

肝鬱気滞瘀血がその背景にあります。

肝鬱つまりストレスがあるから食べ過ぎに走るのです。

現代においては、ストレスこそが最強の外邪です。

ストレスを回避できるように、抱え込まないように工夫してください。

  1. ご縁のある患者さんだけでいい。
  2. 自分を磨き仕入をする。
  3. 治療成績で勝負する。
  4. 自分を大事にしまわりに感謝する。

温故知新
  • 『黄帝内経素問』上古天真論
夫上古聖人之教下也、皆謂之虚邪賊風、避之有時。恬淡虚無、真氣從之、精神内守、病安從來。是以志閑而少欲、心安而不懼、形勞而不倦、氣從以順、各從其欲、皆得所願。故美其食、任其服、樂其俗、高下不相慕、其民故曰朴。是以嗜欲不能勞其目、淫邪不能惑其心、愚智賢不肖不懼於物、故合於道。所以能年皆度百、而動作不衰者、以其徳全不危也。
 
 そもそも大昔の聖人と呼ばれる方々が、下々の人民共をよくよく教育されたのは、すべて次の事柄でござます。人間の生命力を消失させ、体の円滑な動きをそこなういろいろな病の源となる邪風というものは、これを避けることができないわけではありません。その邪風の吹く時を、暦法を按じてちゃんと知り、自ら逃れるようにすればよいのであります。
 およそ、心を静かにして、むやみやたらな欲望をおこさなければ、生の泉である真気はその人の体内を隈なく巡り、身体を正しく運営することができます。このようにして、五臓の精気であり、生命活動の根本である心の神気と腎の精気とが、充実してゆるぐことなく、体内をがっちりと防衛しておりますならば、病を起こさせる外邪など、どこから、どうして侵入することができましょうか?
 ですから、何が何でもやらねばというような、度を超えた気持ちをおこさずにのんびりとして欲望は少なくし心を安泰にして物事に動かされることなく何物も怖れず、また、肉体労働をしてもくたくたに疲れ果てるような無理をしないというようにすれば営気、衛気、ともに順調に体内を運行できるのであります。つまり欲望が少ない人は、心がいつも満足の状態であり得るわけでございます。
 そうなりますと、摂られた食物は、それで、ああ、おいしいなあ、と心に満ち足りますし服装は得られただけの衣服で不足と思わずそれぞれの境遇に甘んじて楽しく暮らし身分の上下の者共が互いにその地位と生活をうらやむことがなければ、当然、上は下をいためることなく、下は上をないがしろにすることもなくその結果として、社会は円満に治まるものであります。そうであれば人民共は真に素朴であることができます。
このような社会でありますと、人民共はどんな楽しみも、その心をまどわすことはできません。
愚かな奴も、智のある者も、賢い人も、つまらぬ連中も、皆、平等に何物もおそれることがございませんので、よく養生の道理にかなうのであります。ですから、大概の者が百歳をこえても老衰しなかったというのは、人間としてのあるべき心得を全うすることができましたので、肉体の方もそれに従って安泰であったというわけでございます。

ということで、聖人の理に則って、鍼灸師の経営学を考えると、
  1. ご縁のある患者さんだけでいい。
  2. 自分を磨き仕入をする。
  3. 治療成績で勝負する。
  4. 自分を大事にしまわりに感謝する。
ということになります。

ご縁のある患者さんだけでいい
業界に目を向ければ「やれ受療率だ」とか、個人に目を向ければ「やれ集客だ」と躍起になっていますが、本来鍼灸院には、ご縁のある患者さんが来ますから、ご縁のある患者さんだけでいいのです。
これが真理です。

そうして来ていただいた患者さんを病苦から救うために、準備をするのです。
準備は、
自分磨きと仕入れです。

自分を磨き仕入をする
東洋医学のお勉強をします。
つきなみですが、『素問』で東洋医学の生理解剖学を修め、『霊枢』で鍼と灸の運用を修め、『難経』で生命活動の根源と治療法則を修め、『傷寒雑病論』で急性病とそれ以外の病気のメカニズムを修め、『十四経発揮』で経穴を修め、さらには後生の医学書で補完します。

自分の体を使って鍼とお灸の練習をします。
自分の体で試してよければ、家族に試します。
家族に試してよければ、初めて患者さんに使えます。
リスクマネジメントです。

そして社会や地域に貢献します。

学と術を磨き、徳をつみます。

鍼灸師の仕入は、最新の医療知識と技術です。
  1. 本を読む→自分に試す→分からなかったらその道の第一人者に教えを乞う→直ぐに自分に試す。
  2. あるいは、勉強会に行って学ぶ→自分に試すでもいいです。
そうしてご縁のあった患者さんを病苦から救えるように懸命に治療します。
毎日がそのための準備です。

また、孫子は、敵を知り、味方を知れば危うからずと言っています。
あらゆる病気を東洋医学に則って、分析し治療法を研究しておけば、どんな患者さんが来ても失敗することはありません。
仕入と検証が必要なわけです。

  • 『孫子』謀攻篇
故曰、知彼知己者、百戰不殆、不知彼而知己、一勝一負、不知彼不知己、毎戰必殆、

敵を知り、味方を知れば、100度戦っても危険はない。味方を知り、敵を知らなければ勝ったり負けたりする。敵を知らず、味方も知らなければ、戦うたびに必ず危機に陥る。

治療成績で勝負する
鍼灸院経営の中心は、仕組みやサービスではなく、治療成績で勝負します。
あそこに行くと治るよー元気になるよーです😊
経営におけるこれ以上の良策を私は知りません。

自分を大事にしまわりに感謝する
体が資本ですから治療家自身の健康保全に努めます。
鍼とお灸の練習を兼ねて自分の治療をします。
体調を崩したときこそチャンスです。

また家族や身内や自分のまわりの大切な人たちの体調がすぐれない時は積極的に治療してあげてください。
日頃の恩を返すよき機会です。

  1. 自分の健康管理
  2. 家族の健康管理
  3. 自分のまわりの大切な人たちの健康管理
これを鍼灸師の三大義務としてください。

終わりに
勉強してください。
技術を身に付けてください。
社会や地域に貢献して徳をつんでください。
そうして求心力を高めれば患者は勝手に集まってきます。
このような格言があります。

“光ったナイフは草原の中に捨てられていても、いつか人が見出すものだ。”
清沢満之(信州大谷派の僧)

しかもご縁のある患者さんが来てくれます。
そしてご縁のあった患者さんを病苦から救ってあげてくたさい。

修行も修養も臨床も、全ては「道」に通じています。
故に上古天真論を設けて、養生を説いているのです。
真人、至人、聖人、賢人を紹介して、
治療家は道と一体となれるよう聖人(無心の人)を目指せと奨励しているのです。
その根底にあるのが、「老荘思想」です。

違いはあれ、老子も荘子も道を説いています。
道と一体になった者が聖人です。
聖人の特徴は「無心」です。
無心とは、
  1. 善悪、是非、美醜などの分別を退けること。あれこれ比べないこと。一切のはからいを捨てること。
  2. 私利私欲がないこと。自分の利益、自分に都合のよい願い、不安、いらだち、悩み、隠し事、後悔、世間体を気にする、気がねする、欲張るなどの有心をできるだけ取り除く。
無心であれば、よく診てよく治療することができます。
そういう治療家のもとに患者をまわしてくれるのです。
道は天地とつながっているからです。

道は人々の心の在り方でいかようにも分かれていきます。
道と一体となれるかはその人次第です。
上古天真論で対比している今の人と同じ現代人には中々困難な道かもしれませんが、現代人にも馴染みのある方の言葉で聖人への道をナビゲートさせていただき了とします。

”心が変われば行動が変わる  
行動が変われば習慣が変わる  
習慣が変われば人格が変わる  
人格が変われば運命が変わる“
(星稜高等学校野球部名誉監督 山下智茂)

治療家の資質
治療家の資質がない者はイバラの道が待っています。
治療家の資質とは、患者を思いやる気持ちです。
人ならば誰しもが持つ思いやりです。
鍼の道は人の道です。
霊枢では、黄帝が人民を思いやり、傷寒雑病論では張仲景が一族を思いやっています。
私たちも患者を思いやる心と病苦から救える実力を持たなければなりません。
以下に聖人の医療者としての気概を記します。

  • 『霊枢』九鍼十二原篇第一 法天
黄帝問於岐伯曰.
余子萬民.養百姓.而收其租税.
余哀其不給.而屬有疾病.
余欲勿使被毒藥.無用砭石.欲以微鍼.通其經脉.調其血氣.營其逆順出入之會.令可傳於後世.
必明爲之法.令終而不滅.久而不絶.易用難忘.
爲之經紀.異其章.別其表裏.
爲之終始.令各有形.先立鍼經.願聞其情.

あるとき、黄帝が岐伯を召されて、しみじみと話をなさるには、余はかねがね人民をわが子のように思い、また、文武百官をも大事にして、まつりごとを行っているつもりだ。しかしつらつら考えるにただ租税をとるばかりであって、人民どもに充分のこともしてやれない現状では余の心は痛む。そのうえ病邪に犯されて苦しんでいる者たちを見るごとに、まことに不憫に思われてならない。
そこで、このやまいを治療してやるのに、ただくすりを飲ませるだけでなく、また単にメスを用いて手術するだけでもなくて、この小さな鍼をもって皮膚の中に刺し入れ、それによってとどこおった経脈を通じ、みだれた血気の調和をとり、経脈中の血気の運行を円滑にさせ、このようにして病気を治してやりたいと思うのである。
それと同時に、この鍼による治法を確立し、永く後の世に伝えて久しく絶えることのないようにしたい。また、ひとたび治法を確立すれば以後は運用も容易になるし、記憶にも便利になって、有意義であると思う。
そのために規範を作り、各章を明らかにし、内容の表裏関係を弁別して、始めから終わりまでをはっきりと区分したい。また、使用する鍼は、すべて具体的にその形状を規定したい。
このようにして、鍼術の教典となるものを編纂したいと考えている。
  • 『傷寒論』
余毎覧越人入虢之診.望斉侯之色.未嘗不慨然嘆其才秀也。
怪当今居世之士.曾不留神医薬.精究方術.上以療君親之疾.下以救貧賤之厄.中以保身長全.以養其生.
但競逐栄勢.企踝権豪.孜孜汲汲.惟名利是務.
崇飾其末.忽棄其本.華其外而悴其内。皮之不存.毛将安附焉。
卒然遭邪風之気.嬰非常之疾.患及禍至.而方震慄.
降志屈節.欽望巫祝.告窮帰天.束手受敗。
賚百年之寿命.持至貴之重器.委付凡医.恣其所措。
咄嗟嗚呼.厥身已斃.神明消滅.変為異物.幽潜重泉.徒為啼泣.痛夫,
挙世昏迷.莫能覚悟.不惜其命.若是軽生.彼何栄勢之云哉.
而進不能愛人知人.退不能愛身知己.遭災値禍.身居厄地.蒙蒙昧昧.惷若游魂.哀乎. 
趨世之士.馳競浮華.不固根本.忘軀徇物.危若冰谷.至於是也.
余宗族素多.向餘二百。建安紀年以来.猶未十稔.其死亡者.三分有二.傷寒十居其七。
感往昔之淪喪.傷横夭之莫救.乃勤求古訓.博采衆方.撰用素問.九巻.八十一難.陰陽大論.胎臚薬録.并平脈辨証.為傷寒雑病論.合十六巻.
雖未能尽愈諸病.庶可以見病知源。若能尋余所集.思過半矣

越人(扁鵲)が虢(かく)の国へ行った時に、葬式の準備をしていたほどの仮死状態にあった太子を生き返らせたり、齊の国の桓候の顔色をみただけで病を見出したりした事実を書物でみるたびに、彼の才能が秀でていたことを今までに一度として感心し憤激しなかったことはない。
不思議に思うのは、世間の立派な人たちは、すぐれた医術を学び極めることで人々の病苦を療したり自分が天寿を全うしようなどとは少しも思うことがなく、出世したり多くの財を築こうとするために、自分より力や金のあるものに取り入ろうとして、毎日毎日あくせく名を売ることと富を得ることに一生懸命で、自分自身を削り命すらも捨ててしまうほどであるが、病気にかかり命が危うくなっても健康になることは出来ず、せっかく苦労して手に入れた権力や富も、命があってのものなのに。
突然風寒などにより激しい熱病にかかったり、とても重い病気を患ったりして事態が急になり心配したり恐怖を感ずるようになって、始めて恐れおののくようになる。そして、自分が今まで大事だと思っていたことを捨てて変心し、それまで気にもとめなかった巫女や神主に懇願する。いよいよ危篤となると、天命だとあきらめてむなしく受け入れる。人は天から百年の寿命を授かり、この上なく大切なものとして扱われていたものを、医術もろくに知らないやぶ医者に自分の命を任せて死んでいく。なんと情けないことであろうか。
ああ、その身体は死んで精神は消えて変わり果てた姿になって黄泉の国にただよう。このようになってから泣きわめく。痛ましいことだ。人は皆、利や名声にとらわれて、本当に大切なものがわかっていない。自分の命を惜しまずに軽くみていながら、どこに栄華や権勢があるというのだ。
他人を愛し親しむことができず、自分自身を愛し大切にし己を知ることができない。その結果、災難にあって、自分が危険な状態にいる。一向にその危うさに気づくことなく平気でいて、まるで魂のぬけがらのようだ。哀しいことだが、世間で威勢の良い人たちは、根本である心身の健康も顧みることなく、名誉や権力ばかりを求める。その危険なほどは、氷った谷を渡るようなものである。
私の一族一門は昔から多く、以前は二百人以上いたのだが、建安元年から十年もたたない間に、三分の二も死んでしまい、その原因の七割が傷寒によるものであった。そういった昔の悲惨な出来事を哀しく思い、救えなくて死んでしまった人々の事を痛ましく感ずることで、何とかしたいという願いから、できるだけ古人の残した書物から知識を求め、広く良い薬を探したところ、素問九巻、難経や陰陽大論、胎臚薬録の古経書と更に平脈証辨をも選び学んで、傷寒雑病論なる医術書をまとめ上げた。しかし、いまだにすべての病を治すのは無理ではあるのだが、病をみれば、病の原因
を知ることができるだろう。更に、学んできわめれば、それまで思い悩んでいたことの多くが知れるであろう。
宮川浩也先生(みやかわ温灸院院長/日本内経医学会会長)は、
ツボには(365穴のうち)、【気穴】(※腎経の气穴ではない)という特別なツボがあり、
  1. 蔵兪(陰経五兪穴の計25穴)と、
  2. 府輸(陽経五兪穴+原穴の計36穴)と、
  3. 熱兪(頭部の熱をもらすツボ+胸中の熱をもらすツボ+胃中の熱をもらすツボ+四肢の熱をもらすツボ+五臓の熱をもらす背兪穴の計59穴)がある。
この気穴は、窓(気の出入口)を持ったツボである。
窓を持っているので皮膚に存在する。
皮膚に存在するのだから、鍼は浅く刺さねばならない。
窓があるのだから、鍼を刺したあとの開け閉めは適切に行われなければならない。
この開け閉めこそが【開闔の補瀉】である。
補法とは、窓を閉じて気の漏出を防ぐことである。
瀉法とは、窓を開いて気の有余をもらすことである。
と、誌上で、気穴の所在と、気穴に対する浅刺や開闔(窓の開け閉め)等の刺鍼の要諦が、〈素問・気穴論篇〉に由来することを詳解されています。
これを根拠に、やはり蔵府治療、すなわち経絡の補瀉調整を行うのは四肢の要穴がその主役であり、浅く刺して鍼口を閉じたり開いたりしなければ、本来の効果を最大限に引き出すことはできないと言えます。
また、背部兪穴は二通りの使い方ができます。
熱兪として使う場合は、四肢同様、浅く刺して窓を開いて排熱するべきです。
例えば、アトピー性皮膚炎を治療する場合は邪熱の排熱が基本となりますが、多くは気分の熱を清熱解毒します。
気分は肌肉に相当します。
肌肉は脾の司りです。
〈素問・刺熱論篇〉に五臓の熱は三椎下~七椎下に反応が現れるとあります。
すなわち診断点であり治療点となります。
脾の熱は六椎下の霊台に出てくるので、霊台を瀉せば脾臓=肌肉=気分の熱を冷ますことができますが、瀉法を行う場合は窓を開ける刺鍼手技を加える必要があるということです。
それで熱兪として作用させることができます。

〈素問・刺熱論篇〉「・・・熱病氣穴、三椎下間主胸中熱,四椎下間主鬲中熱,五椎下間主肝熱,六椎下間主脾熱,七椎下間主腎熱,・・・。」 
もうひとつの使い方として、腰背部の筋疲労をとるのを目的とするならば、虚実寒熱を見極めて開闔の補瀉をする必要はなく、コリ所見(硬結や筋張り)を目当てに置鍼したり、必要に応じて深く刺しても構いません。
頑固な硬結には、お灸がよく効きます。
器質的な変性疾患には、刺絡をする場合もあります。
この論は、初学者だけでなく、中堅~ベテランの先生方にも有意義なものになるのではないでしょうか。

少なくとも、我々経絡治療家にとっては、普段の臨床で何気に行っている本治法で、なぜ四肢の要穴を使うのか、なぜ補法の場合は去ること弦絶の如く抜鍼と同時に鍼口を閉じ、瀉法においては下圧をかけて抜鍼し、鍼口は閉じないのかが、とってもクリアになりました。
また、東洋はり医学会が開発した補瀉の技術は、この気穴に対して最高のアプローチをしているということを、より一層認識することができました。
「補法のテクニック(tonification technique)」
「瀉法のテクニック(draining technique)」
お陰様で、本治法で四肢の要穴に補瀉をする理論的拠り所が、さらに磐石のものとなりました。
宮川先生には、心より感謝申し上げます。
より深く学ばれたい方は、〈素問・気穴論篇〉を熟読してください。

宮川先生には、日本伝統鍼灸学会で何度かお目にかかりましたが、それ以外にも様々な媒体で、宮川先生の教えの一端に触れさせていただいております。
いつも思うのですが、本当に分かりやすくスッと入ってきます。
そんな先生の書籍を1冊ご紹介させていただきます。 
温灸の専門書ですが、冒頭で経脈にも触れておられ、初学者でも経絡や気血が理解しやすい内容になっていてお得です。
特に鍼灸学生のみなさんに読んでもらいたいです\(^^)/
もちろん臨床家にもお勧めです。
是非ご購入されるとよいかと思います。
症例
☑患者 筆者。
☑現病歴 散歩から帰宅して朝食中に腹痛、悪心を発症。他には体が熱い。倦怠感。下痢。
ガイドラインによるとⅡ度に相当。
☑脉状診 やや沈、数、虚。伏脉かもしれない。
☑経絡腹診 よくわからない。
☑比較脉診 脾虚のような気がする。
※どうやら神が低下しているようだ。
☑奇経腹診 陰維脉。
☑望診 いつもより顔が赤い。
☑証決定 脉証腹証はよくわからないが病症から中焦な暑邪が中っていると診て脾虚とした。
☑適応側 天枢診にて左。
☑本治法 左陰陵泉、左曲沢に補法。陰陵泉は毫鍼で、曲沢は押し手が使えないのでてい鍼を当てる。
→腹痛、熱さ、倦怠感が消失。神がしっかりしてきた。
☑補助療法 宮脇奇経治療。左内関-右公孫に5壮-3壮で知熱灸。
→悪心が消失。
☑標治法 膻中と中脘に知熱灸3壮。
→全快。
☑止め鍼 中脘→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部の最も虚した所見に火曳きの鍼→百会の左斜め後ろ2~3ミリの順に補鍼。
熱中症の病因病理
  • 古典から見た熱中症
「暑の気たる事、天に在りては、熱たり、地に在りては火たり、人の臓に在りては心たり、これを以て暑の人に中たる事、まず心につく、およそ、これに中る者は、身熱し頭痛し、煩渇して口渇く、甚だしき時は昏して人を知らず、手足微冷し、或いは吐し、或いは瀉し、或いは喘し、或いは満す。」(南北経験醫方大成)

「霍乱は、外暑熱に感じ、内飲食生冷に傷られ、たちまち心腹痛み、吐瀉、発熱、悪寒、頭痛、眩暈、煩燥し、手足冷え、脉沈にして死せんとす、転筋腹に入るものは死す。又吐せず、瀉せず、悶乱するを乾霍乱という、治しがたし。転筋は卒に吐瀉して津液乾き、脉閉じ、筋縮まり、攣(ひきつ)け、甚だしきは嚢縮り、舌巻くときは治しがたし~」(鍼灸重宝記)

  • 所在
外感病です。
温病です。

  • 八綱弁証
熱証ですから陽病です。
ただし虚熱実熱の違いがあります。
若者は陽気が盛んですから陽実証になりやすく、老人は陰液が不足してますから陰虚陽亢になりやすいです。
表裏は病症によって違います。
寒熱は熱です。
虚実も程度によって違います。

  • 病邪弁証
暑邪です。
暑気中りです。

  • 衛気営血弁証
衛分から侵襲した邪気が気分~営分~血分へと進みます。
表から裏へと進むほどに重症化します。

  • 風邪
ということで分析していくと何らかの原因によって暑邪が人体に侵襲して発病します。
原因は「風邪」です。
風邪が呼び水となって暑邪を引っ張り混んできます。

  • 風邪の発生のメカニズム
台風は高気圧と低気圧の気圧の「落差」によって発生します。
人体においても落差によって台風=風邪が発生します。
仕事や目標が達成されるとホッとします。緊張と緩和による落差です。
一喜一憂も感情の落差です。
休みの日になるとだらけます。生活リズムの落差です。
これら落差の開きが大きくなると高気圧と低気圧がぶつかり合って台風を生じるように、緊張(陰)と緩和(陽)の落差によって風邪が生じます。

  • 風邪と四時の邪
太陽中風証で自汗するように、風邪は腠理を開きます。
文字通り内側から風穴を開けます。
どこからともなくすきま風が入ってくるようなものです。
通常は衛気が体表に分布して外邪から身を守ってくれてますが、体内で風邪が発生すると腠理を開き表に風穴を開け四時の邪を呼び込みます。
冬場なら寒邪、夏場なら暑邪です。

風邪がなければ暑邪を引っ張り混んできません。
落差がなければその風邪は発生しません。
正に「内傷なければ外邪入らず」です。
熱中症の経絡治療
脾を中心に考えます。
運化、昇清、統血。
運化がままならないので消化器の病症が出現します。
昇清がままならないので意識傷害が起こります。
血を統べることがままならないので手足が冷え痙攣します。

  • 予後の診察
  1. 爪を押さえる。色が戻らなければ重症。
  2. 伏脉は順、浮いて強い脉は逆証。
※医療搬送は常に視野にいれておく。

  • 治療前に
番茶に塩を入れて飲まし、涼しいところで一服させる。

  • 本治法
  1. 脾虚で太白、大陵を補います。
  2. 顔が赤ければ陰陵泉、曲沢を補います。
  3. 時々腎虚があります。

  • 補助療法
奇経治療。
  1. 陰維脉
  2. 衝脉

  • 標治法
  1. 膻中と中脘に知熱灸。
  2. 第7-8胸椎棘突起間の右脊際に円皮鍼。

  • 養生
  1. 日々適度な緊張感をもって、一喜一憂せず、落差をなくす。
  2. 梅干しを常食する。
  3. 梅干しが苦手な幼児は番茶に塩を入れて飲ます。
最後にくれぐれも患者ファースト、人命第一で当たってください。
症例
☑患者 60歳代女性。
☑主訴 急性腰痛(ギックリ腰)。
☑現病歴 今朝起きた時から痛い。右の腰臀部に限局している。
☑理学検査 
①ラセーグ左足に比べて右足が挙がらない。その差10㎝。
②後屈と側屈と回旋で痛みが増悪。
☑脉状診 浮、数、実。 
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑奇経腹診 陽維脉と陰蹻脉に反応が出ているので、右外関-右臨泣と左照海-右列缺に奇経テスターを貼付して制限のある動作をしてもらうと後屈と側屈と回旋時の痛みが軽減する。
ここでは確認だけで治療はしない。
☑証決定 肝虚証。
☑適応側 天枢診にて左。患者の脉を診ながら空いている手の労宮を左右の天枢に当てまたは翳し脉状が良くなる方を適応側とする。
誤診を防ぐため患部の変化も診ると的中率が上がる。
例えば本症例では主訴が腰痛なので腰の硬さを捉えて天枢を触って弛む方が正しい。
変化が分からなければ、基本通り男は左女は右、病症に偏りがあれば健康側を取る。
☑本治法 左中封、左復溜に補法。右上巨虚に弦実に応ずる瀉法。(※マニュアル通りにやるのではなく一鍼毎に検脉しながら必要な経絡に鍼を入れる)
☑効果判定 右足が挙がるようになりラセーグ左右差がなくなる。
後屈と側屈と回旋時の痛みも軽減するがまだもう少し残るというので、
☑標治法 
①右脊中と腰陽関に深瀉浅補。
→効果判定 後屈がさらに楽になる。
②右股関節横紋外端の反応に深瀉浅補。
→効果判定 側屈と回旋がさらに楽になる。
☑セルフケア 仕事の都合で1週間後しか来れないとのことなので、治療前に症状が軽減するのを確認しておいた奇経に自宅で金銀粒を貼るように指示して治療を終える。

ギックリ腰の病因病理
結果として仙腸関節の亜脱臼です。
なぜここが亜脱臼するのかが問題です。
その病因はストレスです。
専門的には七情の乱れです。
特に「怒」が関係します。
怒は肝を傷ります。
肝は筋(筋膜・靭帯・腱)を主るので、変動すると筋がやられます。
また、仙腸関節には沢田流小腸兪があります。
肝が変動すると子午陰陽関係にある小腸に影響し、小腸の兪穴である小腸兪が脆弱します。
肝が旺気する起床時や何かのきっかけで仙腸関節が亜脱臼します。
肝風内動で小腸兪が動揺したとも言えます。

また経絡治療では、陰経を整脉力豊かに補えると体内に潜んでいた邪が所定の経絡に浮いてきます。
多くは主訴に関連する陽経に浮いてきてこれを脉状と触覚所見を捉えて的確に処置すれば症状がスッキリと取れますが、通常腰痛の場合であれば、膀胱経や胆経に浮いてきそうなものですが本症例では胃経に出ています。
飽食の時代の特徴です。
脾胃に負担がかかっていて、出るべき経に邪が出ないことが多いです。
これも肝鬱があるために食べ過ぎるのです。
食べることでストレスを発散しています。
脾胃の変動が多いわけです。
特に脾実は湿痰を形成し癌などに発展していくので見過ごしては行けません。
治療
  • 本治法
病を治するには必ず本を求むとあるように、病因病理を解決することが本質治療です。
経絡治療では本治法とします。

肝鬱気滞によって生じた肝火が、
  1. 肝陰肝血を焼灼したら肝虚証。
  2. 腎精を焼灼したら腎虚証か75難型肺虚肝実証。
  3. 肺を衝いたら69難型肺虚肝実証。
  4. 同じ中焦にある脾に横逆したら脾虚肝実証。
  5. 心血を焼灼したら心虚証。
証に従い五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力を強化します。
  • 補助療法
奇経治療がよく効きます。
原則として病症を勘案して奇経腹診で診察診断しますが、経験的に、
  1. 前屈、側屈、回旋で痛むのは陽維脉
  2. 後屈で痛むのは陰蹻脉。
  3. 動作痛なく腰下肢が痛むものには督脉と帯脉が的中することが多いです。
また、治療はもちろん、患者さんのセルフケアに使えます。
  1. 都合がつかない。
  2. 遠方である。
  3. 経済的理由。
などの事情により頻繁に治療に通えない方にはツボを卸して自宅で奇経治療をしてもらいます。
わけも分かってないのに有名穴を指導するより、きちんと診察診断して、効果を確認した上で指示した方がよっぽど親切です。
宮脇奇経治療の即効性と再現性がそれを可能にします。

また僕もそうだったように、初学者を助けてくれます。
駆け出しの頃は一本の鍼の影響力が乏しく本治法で効かすことができませんでした。
かといって患者さんは僕が上手くなるまで待ってくれません。
それでも効果を出さなければならなかったのです。
それを助けてくれたのが宮脇奇経でした。
あの頃の僕の不味い本治法でも、奇経のお陰で何とか来てくれた患者さんを楽にして返すことができました。

今でももちろん使います。
本題からは外れますが、特に癌などの器質的変性をきたした疾患には必ず用います。
今まで効果を確認できたのが、
  1. 虫垂がん 照海-列缺+陥谷-合谷
  2. 肺がん 照海-列缺+陥谷-合谷。
  3. 膵臓がん 内関-公孫+外関。
  4. 肝胆がん 通里-太衝か太衝-通里か内関-公孫に左腕骨を加える。
  5. 腎がん 照海-列缺+陥谷-合谷。
  6. 胃がん 内関-公孫+列缺-照海。
  7. 食道がん 内関-公孫+列缺-照海。
  8. 子宮がん 太衝-通里か公孫-内関+照海-列缺。
  9. 卵巣がん 太衝-通里か陥谷-合谷+照海-列缺。
  10. 脳腫瘍 後谿-申脈+照海-列缺で嚥下傷害が出たら舌診して舌歪する側の内関-公孫か公孫-内関を加える。
  11. 乳がん 照海-列缺+陥谷-合谷。
※忘れてるのもあります。
  • 標治法
  1. 前屈、側屈、回旋痛は患側の股関節横紋の外端(環跳の移動穴)の反応に刺鍼。圧痛硬結がありますが、押さえて痛いということは中が実です。相対的に表面は虚になっています。これを外虚内実とします。表面の虚を補うと中の実が中和され弛みます。陰陽論です。これで取れなければ中の実を瀉します。硬結の頭まで鍼を進めてたら、何もせずに硬結が弛みのを待ちます。硬結が弛みだしたら鍼先がスッと進むのでこれを度として抜き上げ皮膚を離れ間際に鍼口を塞ぎます。中の実を瀉し表面の虚を補うので深瀉浅補とします。
  2. 後屈痛は脊中+腰陽関か上仙の圧痛の強い方に刺鍼します。やはり外虚内実になっているので、先ず表面の虚を補うか、取れなければ深瀉浅補を用います。脊中は左腰が痛ければ左脊際、右腰が痛ければ右脊際に取ります。
標治法はいわゆる局所治療、対症療法で
即効性がありますが、その効果と持続性は本治法の足元にも及びません。
それでも患部の虚実を弁えて補瀉調整すると、その場では患者さんを楽にして帰すことができます。
僕も駆け出しの頃は標治法ばっかりでした。
お陰でレパートリーは沢山あります。

初学者の方は早く標治法祭りを卒業できるように、来る日も来る日も鍼の練習に明け暮れて、一本の鍼の影響力を高め、本治法で体を変化させることができるように腕を磨いてください。
患者の気血を思いのままにに動かせるようになると臨床がもっと楽に楽しくなります。