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はじめに
脉診流経絡治療は、妊活期、周産期、産褥期の女性を包括的にケアすることができます。

思うところあり、流産癖のある妊婦さんに対する脉診流経絡治療を記します。
肺虚証か心虚証で本治法します。
気が下がっているからです。
陽臓である心肺を使って気を上げます。

肝虚証や腎虚証でやらない方がいいです。
陰臓である肝腎を使うと気が下がるので、余計に流産を促します。
特に左の腎虚証が一番危険です。

妊娠するまでは、肝虚証や腎虚証でやったとしても、妊娠したら、特に流産を繰り返している妊婦さんは肺虚証か心虚証に切り替えます。
適応側
適応側は左です。
左手は気を上に引き上げる作用があります。
本治法
  • 左肺虚証
左太淵を補います。
これで肺だけでなく母経の脾も出ますが、もし脾が依然として虚していて脾経を補わなければならない場合は右の太白を補います。
左足の三陰三陽経は気を下に引き下げる作用があります。

  • 左心虚証
左大陵左神門を補います。
鑑別は脉が良くなる方を使います。

  • 三焦経
流産の兆候がある方は、右尺中沈めて命門の脉が弱いので、肺虚証、心虚証とも、左の陽池三陽絡を補います。
鑑別は脉が良くなる方を使います。

  • 用鍼
気虚が甚だしいので、てい鍼を用います。

おさらい
  1. 肺虚証 左太淵、(必要に応じて右太白)、左陽池左三陽絡をてい鍼で補う。
  2. 心虚証 左大陵左神門左陽池左三陽絡をてい鍼で補う。
絶対に肝虚証や腎虚証でやってはならない。
専門書では、腎の封蔵、肝の蔵血の弱りなどとありますが、臨床的には逆です。
補助療法
  • 奇経治療
右照海左列缺右太衝右通里に、主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸をして金銀粒を貼付します。
照海
列缺
太衝
接合部に取ります。
正経の太衝より随分上に取ります。
通里
腱の尺側で神門の上1寸付近に取ります。
正経では撓側に取りますが、奇経では尺側に取ります。
標治法
  • 安産お灸
蠡溝三陰交中封至陰に知熱灸をします。
左右を比べて圧痛の強い側に5壮、反対側に3壮、左右差がなければ3壮ずつ施灸します。
  1. 蠡溝 内踝から6横指ら辺~その上下の最も陥凹部の圧痛に取る。
  2. 三陰交 標準位置付近で最も著明な圧痛硬結。
  3. 中封 前脛骨筋腱の付着部と内踝の尖端を結んだ線上の陥凹部、最も著明な圧痛硬結。
至陰 爪甲根部から指を進めて直ぐ止まる所の圧痛に取る。
セルフケア
奇経と安産お灸の各穴は、自宅でドライヤー灸をしてもらいます。
できれば朝昼晩1日3回、無理でも朝晩はやっていただきます。
おわりに
夫婦仲睦まじく、たくさんの愛で、精一杯の愛で、お互いを思いあってください。
赤ちゃん世界では、一組のご夫婦につき約二万人の赤ちゃんがお二人を競合しています。
赤ちゃんたちが選ぶ理由は様々ですが、共通しているのは、ご夫婦の健やかな輝きです。
光に惹かれるのは私たちも同じですが、彼らもまたそうらしいです。
だから授かりものなのですね。

  • 安産灸ネットワーク
鍼灸師として周産期医療に携わりたい方は、医療リスクも含め、以下の団体で専門的に学ばれることをお奨めします。
  • (一社)東洋はり医学会関西
脉診流経絡治療を系統的に学ばれたい方は下記サイトをご覧になってください。
鍼灸ボランティアを終えて
災害医療やスポーツイベントにおける鍼灸ボランティアは、鍼灸師会、鍼灸マッサージ師会の大切な普及事業の1つです。

私が所属している、(一社)和歌山県鍼灸師会は毎年、紀州口熊野マラソンにて鍼灸ボランティアを行っていますが、今年も大きな事故もなく無事にその任を終えることができました。
関係各位にお礼申し上げます。

中には重篤な症状の方もいましたが、日頃磨いた技量を存分に発揮することができ、しっかりとレース前後のケアをさせていただきました。
大多数の利用者に喜んでいただけたようです。
鍼灸を知ってもらうよき機会となりました。
県外からの参加者も多かったので、お住まいの地域の鍼灸院の受療のきっかけになれば幸いです。
そうなるといいなぁ😊
少し気を大きくして、今回の鍼灸ボラが例え自分たちの鍼灸院への直接の来院に繋がらなかったとしても、この鍼灸ボランティアをきっかけとして、全国の私たちの仲間であるみなさんの所に足を運んでいただけとしたら、それはもう鍼灸会全体で見れば成功なのです。

そうしてそこから先は行った先々の先生方に頑張っていただいて、今まで鍼灸に縁のなかった方々が日々の生活に鍼灸を取り入れていただけるようになり、地域住民にとって鍼灸師は“健幸”な日々を送るためにはなくてはならないパートナーとして活躍の場を広げていただけたとしたら、最高に報われた気持ちになれます。

もちろん、県内の参加者が自分たちの鍼灸院に来ていただけたらやっぱり嬉しいですね😊
全国の先生方、各都道府県市民マラソン鍼灸ボランティアが開催されました折りには、ひとつ気合いを入れてよろしくお願い申し上げます🙇

鍼灸の広報活動には二種類あります。
大きな広報小さな広報です。
小さな広報とは、各自の日頃の臨床です。
そこからの広がりを小さな口コミとします。
大きな広報とは、業団のブランドを活用して、鍼灸ボランティアや市民講座による一度に大勢への広報です。
そこから不特定多数への広がりを大きな口コミとします。
大小の広報による大小の口コミの喚起は自分のためでもありみんなのためでもあります。

ということで、鍼灸学生のみなさん、業団に所属しておられない鍼灸師の先生方、是非都道府県の鍼灸師会、鍼灸マッサージ師会に入会されて、オフィシャルの鍼灸ボランティアに参加してください。
みんなで一緒に鍼灸の素晴らしさを、鍼灸師の職能を、国民のみなさまに普及啓発しましょう。
よろしくお願い申し上げます🙇
こんなおふざけもできますよ😊
熊野高等学校看護学科の学生さんが受付をお手伝いしてくれました。
未来の多職種連携です。
お疲れさまでした。
柔整師会の先生方もボランティアをされておられました。
ランナーのみなさま、どうかお疲れが出ませんように。
イベントで踊るキッズダンサー。
インタビュアーは和歌山放送の名物リポーターキヨちゃん。
鍼灸ボランティアにおける宮脇奇経治療の即効性×客観性×再現性
今回もやはり、宮脇奇経治療の破壊力は抜群でした。

1人10分という治療時間の制限の中で効果を出し利用者のみなさんに鍼灸ファンになっていただくためには宮脇奇経は最適解の1つです💯

2020のアスリート公式ケアにしてくれへんかなぁ?
世界中のアスリートが助かると思いません😉✨

みなさん、どこへ行くにも奇経テスターと金銀隆と施灸セットを携えましょう。
本日の症例トピックス
本日ケアさせていただいたランナ-の中から印象に残った症例をご紹介します。

☑患者 50代女性ランナー。
☑主訴 足の痙攣ひきつり。
☑現病歴 レースが終わるや否や足がひきつり痙攣が始まった。もはや自力では歩くことができずにお仲間に車イスに乗せてもらってやっとこさ、鍼灸コンデイショニングルームへやってこられた。
ベッドに移動すらできない状態なので車イスのままで、応急処置。
☑宮脇奇経治療 持続されるひきつり痛みに苦悶の表情を浮かべ唸り声が響く。お仲間もただただ心配されている。そんな中、痙攣が治まるまで左太衝-左通里にひたすら多壮灸。
⏩しばらくして、全体の痙攣から部分的痙攣になり、今は左血海付近がひきつるという。
☑子午治療 脾-三焦で右外関にやはり多壮灸。
⏩痛みが和らいできたので、ベッドに移動しようとしたら再び痙攣。
☑宮脇奇経治療 ということで、子午も兼ねて左太衝ー左通里+右外関-左臨泣の奇経パターンに変更して再び多壮灸。
⏩聞けば伊丹から来られているとのこと。このままでは帰っていただけないし何とかしてあげないといけないので、1人10分で治療を終えなければならない決め事があったのだが、鍼灸ボラのリーダーに事情を説明してもう少しかかると無理を聞き入れてもらった。
⏩多壮を繰り返すこと数回、ようやく痛みひきつりが和らぎ痙攣が治まってきた。
⏩ただし、このまま帰して帰りの道中ぶり返してはなんのこっちゃないと思い、ここで本治法をすることにした。
✅脉状診 浮、数、虚。空虚、正に空っぽの脉。相当な血虚だ。
✅比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
✅腹診 車イスなので診れない。
✅適応側 病症に偏りなく、女性なので右。
✅本治法 ▶イトウメディカル社製中野てい鍼95㍉にて右太衝を補う。ちなみに中野てい鍼は鋼に焼きを入れているので貧血にもってこいである⏩肝脉が充実▶腎も虚しているので右太谿を補う⏩腎脉が充実⏩血虚だから肝脾相剋証も睨み合わせたが相剋経は整っている⏩陽経を診ると右関上浮かして胃の脉位に邪気実を触れるので▶左右の胃経を切経して最も邪の客している左下巨虚から豊隆にかけて柳下圓鍼にて瀉法⏩脉に和緩を帯び陰陽が整う。
✅経過 これでどうかと尋ねると、動けそうな気がすると仰り車イスから立ち上がろうとして立ち上がれたので、そのまま辺りを少し歩いてもらったら自力で歩けるまで回復。
しばらく歩き続けてもひきつってこない。
痙攣は治まったようで、どうやらこれで無事にご自宅まで帰っていただけそうである。
とってもお礼を言ってくださり、安堵してコンデイショニングルームを後にされた。
筋のひきつり・痙攣の病因病理
汗は白い血です。
多量に発汗すれば血虚になります。
女子の中長距離選手に無月経が多いのはそのためです。
血が筋肉を養っていますから、血虚が著しいと当然のごとく足がつります。
ここまで酷いと急性の亡血といっていいでしょう。

また、血虚は肝虚だけでなく脾虚もあります。
気血生化の原たる所以です。
別の表現をすれば同じ血虚でも、蔵血できないか生血できないかの違いです。

肝血虚だと肝は筋を主るため筋肉のひきつり痙攣が酷いです。
ただし、本症例でもそうであったように、一見物凄く酷く見えても(実際に酷かったですが)蔵血して発散させてあげることさえできれば経過はドンドンよくなります。

脾の津液不足になると、筋病だけでなく悪心嘔吐などの消化器系の症状や、心血虚も伴うので意識レベルが低下してきます。
蔵血に比べ生血は直ぐにはまかなえないので経過に慎重にならないといけません。

救護班から緊急要請を受けて向かった先の救護者が正にそれでした。
痙攣と消化器症状と軽い意識障害がありました。
これは眼神が危うかったので一瞬ヒヤッとしましたが、脉診して胃神根があったのでイケると思って脾虚で治療して、梅干しをなめさせました。

そんな人がもう一人いて、駐在していたドクターと看護師さんと協力して何とか事なきを得ました。
ここでも医療連携ですね。
この救護者のお二方も県外からのエントリーで、それぞれ無事に奈良と枚方に帰っていただけました。
おわりに
救急はやっぱり緊張感があって後から少々疲労感が来ましたが、とっても勉強になりましたので、僭越ながらご報告申し上げます🙇
今回の戦利品は参加賞のTシャツとたくさんの治験から得た経験ですね。

本日、鍼灸コンデイショニングルームをご利用していただいた選手のみなさま。
負傷したり体調が優れないときには、是非お住まいの地域の鍼灸院に足を運んでください。
きっと素敵な先生が、抱える問題を解決してくれます。
そうして、日頃の健康管理にもご活用ください。
初診 2019年1月17日
☑患者 30代女性、看護師さん。
☑現病歴 予定日を過ぎても陣痛が起こらないということで、お世話になっている助産師の先生と来院。
週明けの21日朝には入院が決まっている。
助産院でお産できるタイムリミットまで後4日。
☑脉状診 浮、数、やや実。
☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑経絡腹診 腎が虚のようだ。
お腹が張っている。
☑証決定 腎虚証。
☑適応側 気を引き下げるため左。
☑本治法 
▶銀1寸3分1番鍼にて左陰谷を補う⏩検脉⏩腎が充実⏩肺も出ている⏩相剋経も整っている⏩陽経を診ると右関上浮かして胃の脉位に虚性の邪を触れる▶左胃経を切経して最も邪気実の客している左豊隆にコバルト1寸3分2番鍼にて枯に応ずる補中の瀉法⏩脉状に和緩を帯び陰陽共に整う⏩頚肩のコリが和らぎお腹の張りが楽になる。
☑標治法
▶陣痛促進穴 予定日の1週間前になると背部督脉上に現れる非生理的な反応を陣痛促進穴とする。
だいたい第3胸椎の高さに出現して予定日が近づくにつれ第5胸椎の高さまで降りてくる。
第5胸椎まで降りてきたら2日以内に陣痛が来る。
予定日超過の予後は、陣痛促進穴の高さで判定する。
タイムリミットと逆算して間に合うかどうかを判断する。
ということで確認すると第5胸椎の高さまで降りてきている。
逆算して4日あるから間に合うと判断、ご本人と助産師の先生に「大丈夫」と告げる。
督脉のど真ん中ではなく左脊際に出現する(右の場合もある)。
陣痛促進穴に円皮鍼を貼る。
▶安産灸 肩井⏩合谷⏩三陰交⏩右至陰尖に知熱灸10壮ずつ施灸。

  • 肩井、合谷
堕胎のツボとして江戸期の産科であった中条流で使われていたとされ、気を下げ子宮口を開く作用がある(妊娠初期は禁忌、本来予定日の20日前からすえると超過しない)。

  • 三陰交
子宮の収縮を喚起する。
出すは三陰交、止めるは蠡溝と覚えておくと使い勝手がいい。

  • 右至陰尖
至陰は第5爪甲根部の角に取るが、右至陰尖は小指の尖端に取る。
『和漢三才図絵』にあるように命門の陽気を鼓舞してくれる。
☑セルフケア 自宅で安産灸のツボにドライヤー灸と暇さえあれば肩井と合谷を自分で指圧するように指導。
治療2回目(1月18日)
入院まで残り3日
☑経過 陣痛はまだ来ないがお腹がよく動くようになったとのこと。
助産師の先生もだいぶ下がってきていると仰る(時間さえあれば毎回付き添ってこられ、寄り添われる姿勢に、医療者としての在るべき姿を学ばせていただいております)。
☑本治法 腎虚証で左然谷を補い、左豊隆に枯に応ずる補中の瀉法。
☑標治法 
▶陣痛促進穴の高さを確認するとやはり第5胸椎の左脊際に降りてきている。
円皮鍼を貼付。
▶安産灸 肩井、合谷、三陰交、右至陰尖に知熱灸。
セルフケアを指示して終了。
翌1月19日
入院まで残り2日
午前の臨床中に助産院からの電話が鳴り、緊張が走る。
助産師の先生、陣痛が来て今分娩中だが、微弱のため、助産院まで往診してもらえないかとのこと。
行ってあげたいのは山々だが、予約がビッシリつまっていて行けそうにないので、そこにご主人がいるかを確認するといるとのことなので、陣痛の間隔が狭くなるまで肩井を指圧し続けるように伝えてもらう。
そして1時間後⏩
再び助産院からの電話が鳴る。
無事に出産、母子ともに健やかとのこと✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨
経産婦は陣痛が来たら早いね。
ということでミッション達成。
年に数回、助産院からご依頼をいただくことがありますが、今回も何とか応えることができました。
陣痛促進剤を使うとしんどいらしいので、毎回喜ばれています。
でもまあ、本音を言うとギリギリはヒヤヒヤするので、最低でも臨月に入ったくらいから来ていただけると助かります。
一番いいのは妊娠初期から安産灸をするのが最高です。
午前の臨床を終え、助産院にうかがうと、ご家族も含めみなさんからお礼の言葉をいただきました。
何回聞いても嬉しいですね。
ご本人から、2回目の治療の後すぐに、おしるしがあり、夜には陣痛ぽいのがきて、まだ強くなかったので朝まで待って助産院に向かわれたと、赤ちゃんを抱きながら嬉しそうに話してくれました。
やっぱり助産院でのお産はアットホームでいいですね。
あいさつも程々に、午後の臨床の準備のため助産院をあとにし、治療室に戻りました。
おわりに
もっと楽に臨床したいですが、多少無茶な依頼であっても、現代の名工、伝統工芸士・市原吉博氏の言葉を借りれば、

“安請け合いしてから苦労する。頼まれ事は試され事。仕事の依頼は全て受け、熱意で応える。NOと言えないアーティスト、それが職人。”

付け加えて結果を出す。
ですね。
頼ってくださりありがとうございます。
勉強になりました。
ご出産おめでとうございます。
妊鍼|安産灸は以下のリンクをご覧ください。
はじめに
鍼灸治療の本質は生命力の強化につきますが、❝本質治療は健美力を兼ね備えています❞

以下に根拠を示しますが、私の臨床経験では根拠とするにはいささか説得力に欠けますことをご容赦ください。
本治法と美容
経絡治療における生命力の強化は本治法です。
本治法では、一鍼毎に検脉し、その良否と入れるべき経の適否を確認しながら進めますが、ある時、刺鍼後に検脉をしようと寸口脉(手首の橈骨動脈部)に指を当てたところ、刺鍼前よりそこの肌艶がツルツルしていることに気がつきました。
試しに全身を触ってみると撓骨動脈部の皮膚と同じように肌艶がツルツルしていました。
もちろん顔もです。
よく妻に、手足の要穴に鍼をしているのに、「あんたに鍼してもらうと顔がちっちゃくなるわ」とか、「肌がきれいになる」、「化粧のりが良くなる」、などと言われてきましたが、そうゆうことだったのです。
本質治療(各流派によって表現は違いますが《例えば経絡治療では本治法》以下本治法とします。)においては、相当以前から知らず知らずのうちに、今でいう美容鍼灸を結果的にやっていたことになります。
古典と美容
『霊枢』邪気蔵府病形篇に、「人体を巡る十二の経脈と、それあい通じる三百六十五の絡脈の血気の流れは、みな顔面に集中し、耳目口鼻にそそいで、その器官の機能が充分にできるようになっています。」
とありますから、実は太古から美容鍼灸の機序は出来上がっていたことになります。
標本同源
顔および体表は木の枝葉です。
木の根が臓腑経絡です。
根っこに栄養を与えると枝葉が生い茂るように、臓腑経絡の営血と衛気の不調和を整えると、全身の肌が艶々し、引き締まり、美人になります。
髪の毛にも影響します。
リンス要らずになります。

また逆もしかりです。
局所(顔)の営血と衛気の不調和を整えると全身に影響します。
雨の滴が枝葉を伝って根に注ぐことからもそれが言えます。
末端が局所を養い、局所もまた末端を養います。
本が標を養い、標が本を養います。
全体が1つであり、1つが全体です。
健美力
ということで、体を変化させることができる鍼灸師は、美容鍼灸を標榜するしないに関わらず、顔に鍼を打つ打たないに関わらず、全員が健美力を兼ね備えた鍼灸師と言えます。
肺魄と美容
身体の可視できる範疇を「形」とします。
形の現れを主宰するのが「神」です。
神気の遊行出入りする所がツボです。
ツボが在るのは体表の皮膚です。
ツボに鍼やお灸をして気血を動かせば、腠理の開闔(皮膚の収縮と弛緩)がよくなり、全身のあらゆる細胞・組織・器官が潤い、引き締まり、弾力性に富み、温かくなります。
これは私たちの体には生まれながらにして肺魄という働きが備わっているからです。
『霊枢』本神篇に、「精とならびて出入するのが魄」とあります。
精とは腎に宿る神気で、先天の精と飲食物から抽出する後天の精です。
同じように私たちに出たり入ったりするものを魄としていますが、これは肺に宿る神気で、五官です。
五官とは視覚、臭覚、味覚、触覚、聴覚です。
外の情報を伝え認識する働きです。
鍼やお灸の刺激を肺魄によって認識するのです。
だから、先の鋭利な毫鍼を接触させると脉が細く締まり、先の丸いてい鍼を接触させると脉が幅広になります。
脉を介して、先の尖ったものが触れたよ、先の丸いものが触れたよと教えてくれるのです。
色々分かると楽しいので、先ずは自分にやって確認してください。
おわりに
経絡治療からみたお肌のトラブルの原因は、臓腑経絡の変動です。
本治法で、五臓を原とする主たる変動経絡の気血の虚実を弁えて補瀉調整し、生命力を強化します。
その結果、体が元気になり、健美力も旺盛になり、美顔、美肌をもたらします。

そして顔肌など局所の治療もまた、末端の経絡へとフィードバックされます。
顔に鍼やお灸をしたら、膝がよくなったとか、胃腸の調子がよくなった等ということを経験されたことがあると思います。
標本同源で説明がつきます。

ということで、上にも書きましたが、体を変化させることができる鍼灸師は、健美力を備えた鍼灸師であり、顔に鍼を打つ打たないに関わらず、美容鍼灸師を標榜するしないに関わらず、美容鍼灸をやっていることにかわりはないということです。

ご縁のある患者さんを超健康美人にしてより良い人生を送っていただきましょう。
抗精子抗体(anti-sperm antibody:以下ASA)の患者さんが経絡治療によって自然妊娠することができた症例を報告させていただきます。
ASAとは
精子をアレルギー(外敵)と誤認して攻撃してしまう自己免疫疾患です。

一般社団法人日本生殖医学会|一般のみなさまへ - 不妊症Q&A:Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?

妊娠が成立するためには、卵子と精子が出会い、受精して着床するまで、多くの条件がそろう必要が有ります。そのため、不妊症の原因は、多くの因子が重複していたり、逆に検査をしても、どこにも明らかな不妊の原因が見つからない原因不明のものもあります。  ここでは、女性、男性それぞれで認められる不妊の原因をご紹介します。1)女性の不妊症の原因 女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞、狭窄、癒着)、子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、先天奇形)、頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。女性側の不妊原因を図1に示しました。これらを順に説明していきます。(1)排卵因子  月経周期が25日~38日型で、基礎体温が二相性の場合は心配ありませんが、これにあてはまらない方(月経不順)は、排卵障害の可能性が有るので、産婦人科医にご相談下さい。  排卵障害の原因は様々ですが、プロラクチンという乳汁を分泌させるホルモンの分泌亢進による高プロラクチン血症によるものや、男性ホルモンの分泌亢進を特徴とする多嚢胞性卵巣症候群によるものがあります。その他、環境の変化等に伴う大きな精神的ストレス、あるいは短期間に大幅なダイエットに成功した場合にも月経不順をきたし、不妊症になります。  日本人の女性は45歳から56歳の間に閉経を迎えますが、まれに20歳台や30歳台にもかかわらず卵巣機能が極端に低下し無排卵に陥る早発卵巣不全も不妊症の原因になります。(2)卵管因子  性器クラミジア感染症は、卵管の閉塞や、卵管周囲の癒着によって卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になります。とくに女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。  虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験がある方にも、卵管周囲の癒着をきたしていることがあります。また月経痛が徐々に悪化し、鎮痛剤の使用量が増えている方は子宮内膜症の疑いがありますが、この子宮内膜症の方の中に、卵管周囲の癒着がみつかることもあります。(3)子宮因子  月経量が多く、血液検査で貧血を指摘された方は子宮筋腫、中でも子宮の内側へ隆起する粘膜下筋腫の疑いがあります。粘膜

www.jsrm.or.jp

症例
☑患者 40代女性。
☑初診 2017年。
☑随伴症状 疲れやすい。ぐっすり寝ても眠たい。肩こり。股関節痛。側彎。手足の冷え(冬には霜焼け)。花粉症。蓄膿。胃腸が弱い。下痢しやすい(渋り便)。イボ痔。
☑脉状診 浮、数、虚、硬。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑病症の経絡的弁別 疲れやすい、ぐっすり寝ても眠たい(肝は罷極の本。罷極とは疲労に関係すること。)、股関節痛、手足の冷え(肝は四極の本。四極とは四肢のこと。)、花粉症(肝陽上亢)は肝木経の変動。側彎(腎は骨髄を主る)、下痢しやすい(渋り便)(腎は二陰を主り、二陰とは生殖器と肛門で、下痢には痢病と泄瀉があり渋り腹は痢病で腎虚。別名裏急後重。)は腎水経の変動。肩こり(肺は臓腑の華蓋で五臓の最上に位置し肩は天の部である。)、蓄膿(鼻は肺の外候)、イボ痔(肛門を魄門という。魄は肺に宿る神気。)は肺金経の変動。胃腸が弱い(脾は運化すなわち消化吸収排泄を主る。)のは脾土経の変動。
☑証決定 以上を総合的に判断して肝虚陽虚証とした。
☑適応側 病症に偏りなく女性であるため右とした。また右足の三陰三陽は気の栓を閉め、気を上昇させ、気血を興奮させる作用がある。
☑本治法 気に敏感な患者のため、刺さない鍼を使用。
てい鍼で右曲泉、右陰谷に補法。左陰陵泉、右豊隆を圓鍼で瀉法。
☑補助療法 
✅宮脇奇経治療 奇経腹診より、陰蹻脈
と足陽明脉。照海-列缺と陥谷-合谷にテスターを貼り、腹部所見が変化するのを確認した後、主穴に金粒、従穴に銀粒を貼付。
セルフケアとして自宅でその上からドライヤー灸5壮-3壮を朝晩するように指導。
✅古野式経絡骨盤調整療法 ①股関節横紋外端の圧痛硬結と、②上前腸骨棘下内方の圧痛硬結をてい鍼で補う。
☑標治法 全身の気血を流すようにドーゼに気をつけて阻滞を疏通。
☑止め鍼 脉状、お腹の艶、主訴愁訴の変化を確認して、①中脘穴、非適応側の天枢、適応側の天枢、下腹部の最陥凹部(火曳きの鍼)に補鍼(これらをするとドーゼ多少を調整してくれる)。
②百会から2~3㍉左斜め後ろの凹みに補鍼(これをすると次回まで治療効果を保存できる。ドラクエでいうセーブ)。
☑経過 
✅このような治療を基本として週に1度の間隔で継続治療を行い、2年後に自然妊娠(特にクリニックには通っていない)。
✅証はほぼ肝虚陽虚証。時々腎虚や脾虚になることもあった。
湿痰の影響している時は脾に病実となって現れるので、陰陵泉や地機や公孫から瀉法を行った。
✅選穴も病体に応じて、太衝や中封や行間に適宜変更。
✅その時々の不定愁訴に合わせて、奇経を変更したり、標治法を使った。
例えば、
✔霜焼けになった時は、井穴刺絡をしたり局所に瀉的散鍼。
✔下痢が酷い時は、左曲池の1㍉上の圧痛硬結に知熱灸7壮。
✔イボ痔が出たときは、任脉の変法で孔最-照海。
✅治療開始から1年後には花粉症が出なくなる。
✅その間、乳管内乳頭腫、大腸憩室炎、めまい等に罹患するも、治療して軽快。
✅初診時の症状も改善し妊娠に至る。

☑考察
本来、肝虚証体質者(自邪)は妊娠しやすい。
これは『医心方』を勉強していただけると理解できる。
不妊症の大体が腎虚証になっている。
これはわりかし治しやすい。
肝と腎は相生関係(虚邪)にあるからだ。
現す証(現在の体質、病因病理)が、腎から反時計回りに外れていくと治しにくくなってくる。
肺虚証は肝に対して相剋関係(賊邪)、脾虚証は相剋関係(微邪、75難)、心虚証は相生関係にあるが五邪では実邪になる。またうつ病を患っている方が多い。

ただし、本症例のように、肝虚証であっても陽虚や気虚になってくると、肝虚陰虚証に比べて生命力が低下するため、肝虚体質者であっても時間がかかる。

このように、経絡治療では五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力を強化し、妊娠しにくい体質から妊娠しやすい体質に改善していく。

その指標となるのが、体表観察初見だ。
脉、お腹、皮膚の艶、気色などが、治療して良くなれば良い。
特にリアルタイムでその良否を教えてくれるのが脉状である。

“脉が変われば体が変わる”

病脉から平脉に近づける。
平脉とは、強くて柔らかくて締まりのある脉。
強さ=硬さではない。
むしろ硬いは脆い。
柔らかさ=軟らかさではない。
軟らかいは力なく弱い。
締まり=細いではない。
細いは生気に乏しい。
強さとは弾力であり、柔らかさとはしなやかさであり、締まりあるとはあくまで脉幅があって輪郭が鮮明で引き締まった脉であり、このような和緩を帯びた脉を平脉とする。
ただし、平脉に当てはめるのではなく、患者の素因脉を考慮した健康脉に作り替える作業を、「脉作りの臨床」とする。
ASAの病因病理
先にも書いたように精子に対するアレルギー反応である。
なぜ、精子を外敵と誤認するのか?
結論は「肝魂」の暴走である。

異常を知るためには正常を知る必要がある。
肝の生理を整理しよう。

肝は五行では、「木」に属す。
木は地上に枝を伸ばし葉を生い茂らせ、地下に根をはる。
このような働きを木とし、人体では肝とする。
四方八方に気血を伸び伸びと巡らせる働きと考えればいい。

  • 疏泄
そうして、目的地に向かって筋道を作って真っ直ぐと気血を届け、あらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与える働きを、「疏泄」とする。

  • 将軍の官謀慮出ず
疏泄は日夜行われているが、むやみやたらに行われていない。
必要な場所に必要な分だけ気血が疏泄されている。
近隣諸国から攻めこまれたり、大規模災害か発災した際に、その最前線の状況を見極めて有事に対応する一国の将のようであり、深い考えによって援軍や物資を調達するように気血を巡らすので肝は、「将軍の官謀慮出ず」と言われるのである。

さらに驚くことにこれらの働きは無意識に執り行われている。
これを、「魂」とする。
例えば風邪を引いたとする。
喉が腫れて熱が出る。
これは、上気道に侵入した菌やウイルスを撃退するために、喉に白血球が集まって腫れて炎症し、その結果熱が出て癒えていくのである。
別の言い方をすれば、侵入してきた風邪に対して、気血を疏泄して邪正抗争を引き起こしているのである。
これを魂とし、魂は肝臓に宿る神気であるため、合わせて、「肝魂」とする。
肝魂は正しく免疫である。

このような、木、疏泄、将軍の官謀慮出ず、魂といった働きの総称が肝臓である。

この超免疫機構、肝魂によって内外の外敵に蝕まれることなく健康でいられるのである。
では、この常は体の内外を栄養し、外敵にさらされた際には防衛してくれる超免疫機構である肝魂が、外敵が侵入していないにも関わらず侵入されたと誤って正常な細胞に気血を疏泄して攻撃したらどうなるか?

皮膚を攻撃したらアトピー。
毛髪を攻撃したら脱毛症。
血管を攻撃したら各種出血病。
筋肉を攻撃したら繊維筋痛症。
関節を攻撃したら膠原病。
骨を攻撃したらリウマチ。
腸を攻撃したらクローン病や過敏性腸症候群。
本来花粉は人体には無害であるのに有害と誤認して目や鼻の粘膜を攻撃するからかゆみや鼻炎が起こる。
そして、肝魂が子宮に誤って疏泄すると、精子を外敵と誤認して攻撃し、結果不妊症を引き起こすのである。

膠原病や自己免疫疾患やアレルギー疾患と同じく、肝魂の暴走こそがASAの病因病理である。
さてそれでは、肝魂が暴走するのはなぜか?
ここまでが大きな前フリで、ここからが本稿のメインである。
神に従い往来するのが魂
聖典『霊枢』本神篇に出てくる一説である。
この文言に全てが集約されている。

「神」は心臓に宿る神気。
「魂」は先程来より肝臓に宿る神気。
「心神」と「肝魂」。
これ如何に?(後述)。
解き明かす前に本神篇を見てみたい。
霊枢・本神篇
  1. 天が人に与えたものが「徳」
  2. 地が人に与えたものが「気」
  3. 徳と気が交流するものが「生」
  4. 生を発現させるものが「精」
  5. 二つの精が結合したものが「神」
  6. 神に従って往来するものを「魂」
  7. 精と並んで出入するものを「魄」
  8. 物を取り扱う所以となるものを「心」
  9. 心にあるおもいを「意」
  10. 意を保持するものを「志」
  11. 志にもとづいて保持したり変化させたりするものを「思」
  12. 思にもとづいて遠くを追求するものを「慮」
  13. 慮にもとづいて物を処理するのを「智」
精に並びて出入するのが魄
先ずはこれから始めよう。
「精」とは腎臓に宿る神気。
「魄」とは肺臓に宿る神気。
「腎精」と「肺魄」。

精とは、父母から授かりし、「先天の精(原気)」と、水穀の精微(飲食物)と天空の清気(酸素)から摂り入れ抽出する、「後天の精(原気)」。

その精に並びて出入するのが魄と言っているが、先天の精はむやみやたらに出入しないが、後天の精は摂取と排泄でよく出入するように、
Q.それと同じく人の体に出たり入ったりするものとは何か?
A.五官。

五官とは、視覚、臭覚、味覚、触覚、聴覚。

外界から様々な刺激を取り入れる働きを魄とし、これを肺が主る。
肺は皮毛を主ることにより、体表に肺魄が配置され、私たちはこの超高性能センサーを生まれながらにして搭載しているお陰で、視たり、嗅いだり、味わったり、触り分けたり、聴くことができるのである。
物を取り扱う所以となるものを心
そうして、取り入れた外界の様々な刺激や情報は、即座に心に送られて認識する。
現代医学では脳となるが、東洋医学ではこころで認識するとある。

9~13は、肺魄~心までの思考回路、処理、認識の過程の詳細な解説である。
意→志→思→慮→智と経て、それを認識する。
目に写った景色にカラーを、耳に聴こえた音色に高低清濁をつける。
そして、それに対して感情が生まれる。
自我、自意識の芽生えである。
これを心神とする。
つまり心神とは自意識である。
これには大きく2つある。

好きか嫌いか。

好きとは良好な感情。
嫌いとは悪嫌な感情。

良好な感情は身心によい影響を与える。
嫌悪な感情は身心によくない影響を与える。

何故か?
太陽と木々
自然に力を借りて。

木々の成長は陽の光りに左右される。
東に照らされれば南に伸び、西に照らされれば西に伸びる。

これら大宇宙の縮図が小宇宙である人体である。
人体では心が太陽であり、肝が木々である。
心の太陽である心神が輝けば、木々がすくすくと育つように肝魂は正しく発揮される。

心神が曇れば、肝魂も曇る。

なぜなら、神に従い往来するのが魂であるからだ。

つまり、自意識の在り方によって無意識の発現の仕方が違ってくるのである。

良好な感情を抱けば、心神が輝き、心は君主の官として神明を出し、肝将軍は謀慮して、木々を伸び伸びと伸ばすように、筋道を立てて真っ直ぐに目的地に向かって気血を疏泄し、超免疫機構肝魂を発動し、全身のあらゆる細胞、組織、器官、臓腑、経絡、四肢、百骸を潤し養い活動力を与え、内外の外敵から身を守ってくれる。

一方嫌悪な感情を抱けば、心神が曇り、心は暴君に成り果て、暴君の元、肝将軍は狂将軍に成り下がり、謀慮せず闇雲に気血を疏泄して、誤った肝魂は暴走し正常な細胞を傷つける。

心神を曇らす感情の起伏を「七情の乱れ」とする。
怒、喜、思、憂、悲、恐、驚。
現代ではストレスという。

これが肝魂が暴走する原因である。
故に、ストレスは最強の外邪である。

アレルギー疾患、膠原病、自己免疫疾患、あるいは癌までを含めて、これらの病の原因は肝魂の暴走であり、それは心神が曇るからである。

ASAもである。
心神と肝魂とか、メンタル鍼灸について詳しくお知りになりたい方は、以前にまとめた以下の記事をご覧になってください。
おわりに
生殖補助医療は神様の医療技術のように思われているが、着床率は決して高くない。
性差、年齢別にもよるが、ざっくり言って着床率は20%、つまり5人に1人の確率でしかない。
なぜか?
患者の体質が考慮されていないからである。
妊娠しやすい体質と妊娠しにくい体質の違い。
着床した20%の1/5の方々は、まだ妊娠しやすい体質だったから着床したわけであり、着床しなかった80%の4/5の方々は、妊娠しにくい体質だったから着床しないのである。
幾ら高度な生殖補助医療を施したところで妊娠しにくい体質を改善していなければ着床しにくいままである。
自然妊娠できれば一番いいが、晩婚化、晩産化で始めから生殖補助医療に臨まれる方も少なくない。
どうか、妊娠しにくい体質を鍼灸治療で妊娠しやすい体質に変えてから臨んでいただきたいと切に願うばかりである。

一般社団法人日本生殖医学会|一般のみなさまへ - 不妊症Q&A:Q11.生殖補助医療にはどんな種類があり、どこに行くと受けられますか?

生殖補助医療(ART)とは、体外受精をはじめとする、近年進歩した新たな不妊治療法を指します。1)生殖補助医療の種類(1)体外受精・胚移植(IVF-ET)  採卵により未受精卵を体外に取り出し、精子と共存させる(媒精)ことにより得られた受精卵を、数日培養後、子宮に移植する(胚移植)治療法です。最初は卵管の障害が原因の不妊治療に用いられてきましたが、現在はその他の不妊原因の治療としても使われています。(2)顕微授精(卵細胞質内精子注入法、ICSI)  体外受精では受精が起こらない男性不妊の治療のため、卵子の中に細い針を用いて、精子を1匹だけ人工的に入れる治療法です。(3)凍結胚・融解移植  体外受精を行った時に、得られた胚を凍らせてとっておき、その胚をとかして移植することにより、身体に負担のかかる採卵を避けながら、効率的に妊娠の機会を増やすことができます。移植する胚の数を1つにしておけば、多胎妊娠となるリスクを減らすことができます。2)生殖補助医療を受けるための施設 生殖補助医療が始まった1980年代は、この治療をおこなえるのは大学病院や、大病院のような先端的な医療が可能な施設のみでした。しかし、技術が安定し、培養のための器具や試薬が一般化したことから、現在わが国においては、全国のどこの病院やART専門クリニックで治療を受けても、大きな違いがないレベルまで不妊治療は発展してきています。  日本産科婦人科学会では、生殖補助医療を行っている施設(生殖医療登録施設)の一覧を毎年発表しています(http://www.jsog.or.jp/public/shisetu_number/)。また、日本生殖医学会では、生殖医療を専門医とし資格を持つ医師(生殖医療専門医)を認定しています。 生殖医療専門医制度 認定者一覧印刷用PDFのダウンロード(PDF 263KB)©一般社団法人日本生殖医学会 掲載されている情報、写真、イラストなど文字・画像等のコンテンツの著作権は日本生殖医学会に帰属します。本内容の転用・複製・転載・頒布・切除・販売することは一切禁じます。〒102-8481 東京都千代田区麹町5-1 弘済会館6階 TEL:03-3288-7266 FAX:03-5216-5552 E-mail:info@jsrm.or.jp (業務時間:平日9時30分-17時30分) お問い合わせプ

www.jsrm.or.jp

と同時に私たち鍼灸師も、妊娠しやすい体質に変えられる実力を身に付けなければならない。
鍼灸の学と術は、一朝一夕には身につかないのがもどかしいが、どうか目先の利益に走らずに、思い切って鍼灸道に突き進んでいただきたい。
そう、いつか誰かを救えるように。
「妊鍼」について以前にまとめた記事がありますので参考にしてください。
よろしければついでに安産灸もどうぞ。
はじめに
みなさん、臨床を楽しめていますか?
臨床は楽しくやらないと面白くないですよ。
臨床を楽しむ、楽しめるようになるためにはどうしたらいいかを書き記します。
治るからこそ楽しい
臨床を楽しめるか否かは、治せるかどうかです。
治るから楽しいのです。
KenjiSeki先生の言葉を借りれば、治る前提でやるから、毎回治療を楽しめるのです。

治る前提で、
どうやって治してやろうか?
この治療をしたらどうなるだろうか?
とやれればワクワクが止まりません。

正に心持ちの大事です。
信じること
治る前提で臨床に臨むためには、
  1. 人間は元々治るようにできている
  2. 病気を治すのは患者の生命力であり
  3. それを引き出す鍼灸の力を
信じることです。

自己治療の大事
信じれるようになるためには鍼灸治療で病気が治った、体が元気になったという実体験が一番腑に落ちます。

一番いい方法は、自分が病気になったら、不調になったら、自己治療をして、自分で自分を治すことです。
風邪を引いたら先ずは自分で治療するのです。
病気の程度にもよるかもしれませんが、病院に行くのは最後の最後です。
私は胆石仙痛を4回やりましたが、全部自分に鍼してお灸して痛みを止めました。
お陰さまで胆のう炎だけでなく、急性膵炎の痛みも止められるようになりました。
こういう経験をすると、否が応でも信じられるようになります。

自分で自分を治せたら、臨床においても患者の生命力とそれを引き出す鍼灸の力を信ることができ、治る前提で臨床に臨めます。
治らない理由
自己治療をしても、よくならないとします。
よくすることができないのにはワケがあります。
  1. 基本的な勉強が足りていない
  2. 基本的な技術が足りていない
からです。
基本的な勉強が足りていなくて治せないのであれば、治せるようになるまでしっかりと勉強してください。
基本的な技術が足りていなくて治せないのであれば、治せるようになるまで技術修練に励んでください。
どちらも水準に満たない場合は、直ぐにでも取りかかりましょう。

一番いいのは、師匠について2~3年はじっくりと見習うことです。
それが叶わないのであれば、自分がこれだと思った学術団体に所属して、その流派の学術を人に教えられるようになるまで学ぶことです。
そうして、開業して悪戦苦闘を重ね、修行期間から足掛け10年ぐらいすれば治せるようになります。

私も駆け出しの頃は全く治せませんでした。
特に情けなかったのが、風邪引きさんだった長男がよくかかっていた流行り病を治せなかったことです。
その度治療はすれども全く歯が立たず、我が子の病気も治せないのかと、本当に力不足を痛感させられました。
それでも前を向いてコツコツと努力を積み重ねて、段々と治せるようになり、治せるようになってくると、治療をするのが楽しくなっていきました。

10年前に来てくださっていた患者さんが、今来てくれたら治せるのになぁと思うことが多々あります。

技というのは、どっしりと腰を下ろして、コツコツと努力を積み重ねて、ようやく身に付くものです。
それも、一本の鍼と一つまみの艾だけで病気を治そうと思えば尚更です。
これができない人は患者を病苦から救うことはできません。

結果、患者が治らないので楽しくありません。
臨床が苦痛で苦痛でたまらなくなります。
本来は楽しいはずなのに。
まとめ
臨床を楽しめるようになるためには
  1. いかなる患者であっても治る前提で治療すること。
  2. 患者の生命力とそれを引き出す鍼灸の力を信じること。
  3. 自分が病気になったりや不調のときこそ、ここぞとばかりに自己治療をして自分で自分を治すこと。
  4. 治せるのようになるためには最低でも10年は1つの道に打ち込むこと。
  5. 術前術後で行った治療の良否を判定し客観的に評価すること。そうすることで何が効いて何が効かなかったのかが分かる。
  6. 患者の声に真摯に耳を傾けること。
おわりに
孔子の論語に、「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」とあるように、楽しみながら鍼灸道を究めましょう。
10年かかりますが、本当に鍼灸を愛してやまないなら苦難の道ではなく、楽しくて仕方がないはずです。
そして鍼灸臨床においては、治せてこそ楽しめますから、治せるように努力しましょう。

また、「光ったナイフは草原の中に捨てられていても、いつか人が見出すものだ。」という清沢満之師(信州大谷派の僧)の格言に、鍼灸師としての在り方が集約されています。
自らを売り出す必要はありません。
師の言葉にあるように、己を磨き続ければ、いつか誰かが見つけてくれます。
世の中が無視できないくらいのまばゆい光を放てるように技術と人間性を磨いてください。

私は経絡治療家ですが、経絡治療の勉強が楽しくて仕方がありません。
ここまで打ち込めるものに出会えたことは幸せなことだと思います。
私にとっては、経“楽”治療です(*^^*)

どうか、みなさまにとって、臨床が楽しめる場となることを願っております。
今月の例会レポートをお届けします。
朝のあいさつ
第46回日本伝統鍼灸学会学術大会(茨木大会)第27回日本刺絡学会学術大会(併催)に参加してくださったお礼と、みなさんの応援のお陰で無事に藤井先生と一緒に発表することができ、当日の聴衆からは軒並み好評だったことをご報告させていただきました。

また先日、宮脇優輝名誉会長と宮脇ゆかり先生が、ゲスト講師を務められた、Kiiko Matsumoto's Japan Study Seminarが大大大好評だったことも報告させていただきました。
外国の鍼灸師が日本に来て鍼灸を学ぶセミナーですが、彼らは日本のやさしい鍼による繊細な技術を求めてやまないそうです。
国内のみなさん、間違いなく世界は経絡治療です。
痛くない鍼熱くないお灸です。
Kiiko Style×Miyawaki Style
臨床こぼれ話
誰でもできる銅×アルミ×チタン圓鍼ユニット治療を披露させていただきました。
宮脇優輝先生が考案した、「時短×簡便×即効性」を客観的に再現することができる革命的な標治法(局所治療)で、異種金属の圓鍼を組み合わせて施術し、硬結を中心とするコリ・ハリを瞬時に緩め、腫れ痛みを和らげることができます。 
これを一定の期間臨床追試して効果を確認できたので発表させていただきました
  • 特徴
  1. 治療時間を短縮できる。
  2. 施術が簡便で誰でもできる。
  3. 再現性がある。
  4. 即効性に優れている。
  5. 痛くない。
  6. 効果を患者さんと共有できる。
  7. 屋外や衛生環境が整っていない場所でも安心安全に治療できる。
  • やり方
  1. 局所のはっているところや硬結を探す。
  2. そこを治療点として、異種金属の圓鍼2本を組み合わせてなでる。
  3. チタンとアルミの圓鍼の組み合わせが最も影響力がある。
  4. 方向は右半身は上から下へ、左半身は下から上に、肩上部は中心から外へ向かってなでる。
  5. 回数は5回を基本とし、敏感な患者さんは3回とする。あとは微調整。
  6. 圓鍼をかけたあと所見を確認する。
  7. 緩んでいればそこを限度とし、緩んでいなければ加療する。
  8. この際、ドーゼを過ごすと逆にはってくる。その場合は、過ごした回数だけ反対方向になでるとリセットできる。
効果のほどは、本日みなさんに見ていただいた通りです。
即効性があって施術も簡単です。
早速臨床で追試検討してください。
コリ、腫れ痛み何でも来いとばかりに治療が楽しくなります。
試していただいて更に新しいことが分かったら是非教えてください。
講義
実技
認定アレルギー専門鍼灸師養成中級講座
  • 刺絡鍼法
例会と並行して開催しています、本講座で、刺絡鍼法の指導を担当させていただきました。

刺絡は刺絡すべき血絡をいかに探し選択するかに全てがかかっています。
本日は、そのコツのコツのコツをお伝えさせていただきましたが、受講生のみなさんは本当に筋がいいので教えるのが楽でした。
アレルギーだけでなく、器質的に変性をきたした疾患にバッチリ効くのでバンバン治してください。
  • 古野式経絡骨盤調整療法
  • 宮脇奇経治療
受講生のみなさん、本日も遠くからご参加いただきありがとうございました。
いよいよ上級講座に入ります。
みんなで一緒にアレルギー疾患を治せるようになりましょう!
楽しみにしておいてください。

終わりに
愛すべき会員のみなさま。
本日はお疲れさまでした。
今月の例会では、
収穫がありましたか?
課題はクリアできましたか?
新たな課題は見つかりましたか?
何か1つでもいいので仕入れて帰ってくださいね。

昨日治せなかった患者さんを明日は治せるように。

中野正得

外感病とは、気候変動が体に影響して発病する急性熱病や、インフルエンザウイルス、溶連菌、ヘルペスウイルスなどに感染することによって発病する病気の総称です。
また、秋冬の乾燥する季節に悪化するアトピーや喘息、冷えて筋肉が硬くなり発症するぎっくり腰なども狭義の外感病と言えます。
病気というのは、この外感病と雑病に大別されます。
雑病とは外感病以外の病全般です。
肩こり、腰痛、膝痛、内臓疾患、精神疾患など。
外感病は更に、傷寒(しょうかん)と温病(うんびょう)の別があります。
傷寒とは文字通り寒邪によって発病する外感病で、温病も文字通り温熱の邪気によって発病する外感病です。
寒邪と湿邪は陰邪ですから地の部である足元から侵入して来ます。だから足が冷えます。
風邪と暑邪と火邪と燥邪は陽邪ですから天の部である上半身から侵入して来ます。

傷寒は、風邪と寒邪がくっついた風寒の邪気として、項から侵入して来ます。
温病は風邪と火(熱)邪がくっついた風熱の邪気として、口鼻から侵入して来ます。

気候変動(外因、風暑湿燥寒火)が、発病の原因になると考えるのが東洋医学の独自性ですが、寒邪による傷寒にしろ、温熱の邪気による温病にしろ、これらはあくまで“客”であり、首謀者は“風邪”です。
ただし、外から吹き付ける風ではありません。
体内で発生した風です。
これを内風とします。
風邪は毛穴(腠理そうり)を開くという特徴があります。
内風が発生すると、体の内側から風穴を空けます。
そうして各季節(四時)の邪気を招き入れます。
寒凉の時期なら寒邪や燥邪を、温暖の時期なら暑邪や火邪を招き入れます。
どこからともなく吹く隙間風をイメージしてください。
正に風邪は万病の因です。
ではこの内風はどこからやってきたのでしょう?
大宇宙である自然界における異常な風の代名詞と言えば台風やハリケーンですが、台風は高気圧と低気圧の乱高下によって発生します。
小宇宙である人体においては、“落差”によって病的な風、風邪が生じると、奈良の上雅也先生は仰っておられます。

“落差”

○○の落差が激しいなどに使われる言葉ですが、人体における落差とは感情の起伏や気の緩みなどです。
激しく怒った後や、仕事やテスト勉強が一区切りついてホッとした時などに、平時との落差が生まれます
緊張の緩和の落差です。
自然界における高気圧と低気圧の乱高下の落差によって台風が発生するように、平時からの落差、緊張の緩和による落差によって風邪を生じます。
体内で発生した風邪ですのでこれを内風とします。
内風が、内側から隙間風を通す風穴を空け、腠理を開き、四時の邪気を招き入れます。

今のような寒凉の季節なら、寒邪を招き入れ、傷寒を発病させます。
春夏の温暖の季節なら、温熱の邪気を招き入れ、温病を発病させます。
暑気中りによる熱中症も温病に包括されます。
落差とは七情の乱れですから、肝鬱つまりストレスとも言えます。
精神状態の不安定さによって、落差が生まれ、肝風内動し、気候変動を受けやすい下地をこさえるから、外感病を発病するのです。
正に内傷なければ外邪入らずであり、ストレスこそが最強の外邪です。
受験生にインフルエンザが多いのもこれで考えれば納得です。

インフルエンザなどの感染症にかからないためには、各種予防接種も大事です。
温活も大事です。
うがい手荒いも大事です。
もっと大事なことは精神を安定させて落差を作らないことが何よりの予防になります。
これは熱中症でも同じことが言えます。
真の熱中症対策は落差を作らないことです。
落差によって生じた内風に風穴を空けられるから暑邪の侵入を許すのです。
このような下地をこさえていれば、幾ら水分補給や塩分補給をしっかりしていても熱中症になります。

外感病の予防は、精神を安定させること、つまり内傷を作らないことです。
一喜一憂しない。
気を緩めすぎない。
ある程度の緊張感は常に必要だということです。

子供が流行り病にかかりやすいのは、好奇心と不安の落差が大きいからです。
外感病の経絡治療
カゼをひいたり、インフルエンザになった場合は、医療機関に行くのが当たり前になっていますが、鍼灸を併用した方が経過がいいです。
患者さんとの信頼関係があれば、医療機関を経ずに鍼灸院に来るケースもあります。
厳密には、弁証のモノサシ(六経弁証、衛気営血弁証)や施治(散寒、清熱、凉血)が違うので傷寒か温病に分けるべきですが、経絡治療では、傷寒も温病も更には雑病も同じ土俵で勝負出来ます。

内傷である生気の不足を補います。
整脉力豊かに陰経から補えると、邪気が侵入している相剋経や陽経に邪気実となって姿を現してきます。
現れた脉状に応じて各論的に瀉法をし、邪気を除きます。
これを本治法とします。
本治法だけでなく、病体に応じた補助療法や標治法を施し早期回復に努めます。 

外感病の臨床
  • 急性発熱
発熱時は大人も子供も肺虚証ではやらない方がいいです。
肺経は気を巡らし温める作用があるので余計に発熱します。
麻黄湯や葛根湯や桂枝湯のように表寒や中風を発散できるほど温めて発汗させられればいいのですが、肺経を補って太陽経か陽明経を瀉して上手くいった試しがありません。
恥をさらしますが、駆け出しの頃は幼かった長男の急性発熱を全く治せませんでした。
治せないどころか余計に発熱させて高熱で意識が朦朧として譫言を発する中、夜間の救急に走ったこともありました。
小児の場合は首が短いので発散しにくく、頭が近いために停滞した邪熱が頭脳に昇りやすいのです。
この時、生気が邪気に負けると脳症を発症する危険があります。
なので、特に小児の発熱している急性疾患に対して肺経を補うのは慎重になるべきです。

僕は柳下登志夫先生の教えを参考に、小児のかぜや気管支炎など、熱の出る急性疾患で、悪寒、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、咳などがあるけれど、汗は出ないという状態のいわゆる太陽傷寒証に対しては、陰中の太陰である腎を補って気を下げます。
発熱児は頭は熱いけど足が冷たい子が多いので、超逆気症状と診るわけです。
この時足も熱ければ病はまだまだ登り坂ですので余談を許しません。
もし足の温度に左右差があれば温い側の金門を瀉します。
あるいは足に左右差がなく、手に左右差があれば、二間か三間か合谷、または胃経上のツボを瀉します。
手足に左右差がなければ、復溜など腎1穴だけ補って、両手に水掻きの鍼をします。
水掻きの部は、身熱を主治する滎穴が位置するので、瀉的に運鍼することで解熱に働きます。
後は気を巡らすように全身に小児はりをして、最後に非適応側の後谿にチョンと止め鍼をして終えます。
止め鍼はドーゼの多少を丁度いい塩梅に整えてくれます。
発熱している時は後谿、疳虫などの雑病は合谷、先天性疾患は陽池を使います。
このような方法で我が子を治せるようになり、治療室に来てくれる発熱児を救えるようになりました。
咳が主症状であれば、肺の変動ですがほとんどが肺実です。
正確には肺陰虚による肺熱、肺燥です。
本治法は、左の肝虚右の肺実証の相剋調整で治療することが多いです。
肺実は魚際を補って肺陰を潤して清熱します。
麦門冬湯証の応用です。
魚際を補っても肺実が取れなければ肺経上を切経して最も邪の客している箇所から瀉します。
胃経に邪が浮いてくることが多いですが、豊隆を邪して去痰するとよいでしょう。
補助療法は、任脉の変法で孔最-照海。
標治法は、大椎、風門の知熱灸。
肺経、大腸経上の圧痛に知熱灸。
で鎮咳去痰作用があります。
  • 咽喉痛/クループ
咽喉痛は腎虚か肝虚が多いです。
補助療法は、子午治療。
咽喉は小腸経か大腸経ですので、痛む側と反対側の蠡溝か大鐘。
左右どちらの咽喉が痛いか判別しない場合は人迎の圧痛の強い側を患側とし、健側の蠡溝か大鐘を使います。
奇経は照海-列缺+陥谷-合谷。
標治法は、分界項線のコリを取る。
  • ヘルペス
ヘルペスは、脾胃湿熱か肝胆湿熱です。
肝虚脾実か腎虚脾実、脾虚肝実か69難型肺虚肝実か75難型肺虚肝実で本治法します。
補助療法は、患部の流注を考慮した奇経を取る。帯状疱疹なら陽維脉か帯脉など。
標治法は、ボスキャラの水疱に直接知熱灸がよく効きます。
症例
☑患者 娘。
☑主訴 インフルエンザによる発熱、しんどい。
☑脉状診 浮、数、実。
☑比較脉診 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑経絡腹芯 腎肺虚、脾心実、肝平。
☑証決定 腎虚証。
☑適応側 右。
☑本治法 てい鍼で右復溜に補法。
☑標治法 左手から右手の順に水掻きの鍼。気を巡らすように全身に小児はり。左後谿にチョンと止め鍼。
☑経過 直後4回嘔吐(汗吐下の吐に作用)してすっかり元気になる。解熱。3日間治療して治癒。
症例②
☑患者 筆者。
☑主訴 咳、咽喉痛。
☑脉状診 浮、数、虚。
☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑経絡腹芯 肝腎虚、肺脾実、心平。
☑証決定 肝虚肺実証。
☑適応側 左。
☑本治法 左曲泉、左陰谷に補法。右魚際に輸瀉。
☑補助療法
✅奇経治療
右孔最-左照海に金銀粒貼付してその上から知熱灸5壮-3壮。
✅子午治療
肝-小腸で人迎を押さえて圧痛の強い側と反対側の蠡溝に知熱灸5壮。 
☑標治法 肺経~大腸経上の圧痛硬結に圧痛が取れるまで適宜知熱灸。
☑経過 一週間毎日治療して治癒。
沢田流太極療法を経絡治療の枠組みの中で補助療法として再考し、追試検討した結果、操作面での普遍性、効果面での確実性、応用面での広範囲を獲得でき、特に鍼灸臨床で最も大事な効果面において、即効性と全身調整・全体治療に優れていることが分かりましたので報告させていただきます。

太極
太極は万物の根源であり、ここから陰陽の二元が生ずるとする。
「易有太極 是生兩儀 兩儀生四象 四象生八卦 八卦定吉凶 吉凶生大業」(易に太極あり、これ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず)である。

道(タオ)とは宇宙と人生の根源的な不滅の真理を指す。
道の字は辶(しんにょう)が終わりを、首が始まりを示し、道の字自体が太極にもある二元論的要素を表している。
「道生一 一生二 二生三 三生萬物」(道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず)。

無極
さらに「無極」があるが、無極は太極に先行するものではなく、太極の性質を形容するものであるとして「無極にして太極」である。

沢田流太極療法
鍼灸医道中興の祖である、沢田健師が創始した治療法で、日蓮聖人の忠実なる弟子として、鍼灸古道身読の行者を以て自ら任じ、素霊、難経、十四経、和漢三才図絵などを研究し、五臓六腑の中枢を整えれば末梢の病気は全て治るという奥義を体得し、これを大乗法華経の一念三千十二因縁の理による太極療法とした。

後に神様から非常な難問題を与えられ、それを見事にパスしたといふ自覚で、其後は直神伝沢田流開祖を自称するに至る。
鍼灸真髄より抜粋した、師やその弟子の言葉を紹介する。
  1. 薬物を用いるのは第三の療法、人間の持っている力を活発に働かせるのが第一の医学。
  2. 医道乱るれば国乱る。
  3. 国の乱れを正すは医道を正すに如くはなし。
  4. 書物は死物なり、死物の古典を以て生ける人体を読むべし
  5. 内臓が完全になほつたときには姿勢も必ずよくなる。
  6. いらん物は外へ出し、足らんものは補うという大調和の原則によるものなのです。もともと病気のなほるとうのも、調和を失っていたのが調和を得るということなのです。一体病気なぞというものはないのです。血液の循環が不均衡になつた為に調和を失つて具合が悪くなつたので、血液の循環を平均にさせれば調和を得てなおるものなんです。
  7. 病気というのはくるひがあるということだから、くるつた体はくるつたように穴を取る必要が出て来るのです。
  8. 太極療法は根本病が治るばかりではない、体質まで改造できるのです。
  9. 直観力のすぐれた人々の組織した経絡経穴であるとすれば、我等も之を会得する為には、嗜慾を去り、心を空にして、身心を清澄ならしめ、直観力をいやが上にも磨かねばならない。
  10.  病気というものは、過去の罪行の因縁の結果。
  11. 迷ってはだめです、信仰です。あくまで信じてやるのです。
  12. 患者が迷うのではない。あなたが迷つているのです。自ら信じることの出来ないような人にどうして大切な生命があづけられるものですか。
  13. 死を恐れていたら何も出来るものではない。
  14. 真に腕さえあるなら山の中へ隠れていたつて人が尋ねて来て、治療せずには居れなくなつて了うのです。
  15. 子供は神様が守つていられるので子供の病気には命柱で沢山です。
  16. せん頃わしが神様の試験に出逢った時、この関係がよくわかりました。
  17. 第三行は第二行の変化で病の第三期に入ったものです。こういう大事なことが誰も解つて居りません。
  18. 小児七才までを神童と名づく。神これを守る。
  19. 本当の師匠というものは病人です。病人を師匠として教えて貰うのですよと。だから一円の謝礼を貰つたら、五十銭は教えて貰う謝礼として返すがよい。なほしてやるのではなく、体を貸して貰い、教えて貰うのですのですと。これは今に忘れぬ有難い言葉です。

異種金属てい鍼経絡調整療法

(一社)東洋はり医学会関西名誉会長、宮脇優輝先生が考案された治療法で、その方法は、銅とアルミの異種金属のてい鍼を、局所の硬結を、上下または左右から挟むことで、点であるいは面で、あるいは列で、緩めることができる標治法の一種である。


これを同会副会長、神開雄三先生が臨床追試して体系化し、筆者が異種金属てい鍼経絡調整療法と名付けた。

異種金属経絡てい鍼経絡調整療法×沢田流太極療法=異種金属てい鍼太極療法
従来はお灸で圧痛がなくなるように整えるのを、異種金属てい鍼を用いることで、時短での調整を可能とした。

  1. 証に応じた背部兪穴を選択する。肝の変動なら肝兪か胆兪の1~3行、心の変動なら心兪か厥陰兪か小腸兪か三焦兪の1~3行、脾の変動なら脾兪か胃兪の1~3行、肺の変動なら肺兪か大腸兪の1~3行、腎の変動なら腎兪か膀胱兪の1~3行。おもしろいことに、陽虚になればなるほど臓兪ではなく腑兪に反応がでる。同じ腎虚でも腎陰虚なら腎兪1~3行、腎陽虚なら膀胱兪1~3行というように。
  2. 督脉の際(5分)を第一行、1寸5分を第二行、3寸を第三行とする。
  3. 左右の1~3行の反応を仔細に捉えて、最圧痛点を選穴する。
  4. そのツボに銅のてい鍼を垂直に当て、反対側のツボにアルミのてい鍼を垂直に当て、1~2ミリ浮かしてかざす。
  5. 脉の速さに応じて、木・火・土・金・水と唱えて鍼をツボから取る。かざす時間は約3~7秒。
  6. 効果判定は、圧痛の軽減と主訴愁訴の軽減で確認する。
証法一致すれば、即座に変化する。
病の新久は、新しいものほど1行に現れることが多く、古くなると2行3行へと広がっていく。
尊敬するKenji Seki先生の仰る通りである。
3行には膏肓穴があり、難治を表す言葉で有名な、「病膏肓に入る」は古人の経験の集積である。

また単純に、手の親指の腫れ痛み屈伸不利は、肺兪か大腸兪1~3行とか、足の親指の痛風などであれば、脾兪・胃兪・肝兪・胆兪の1~3行というように、流中の表裏経を考えた使い方も効果がある。

さらには、上歯痛には厥陰兪など、子午治療にも応用できる。
また、急性症の場合は、お腹の四霊穴で調整する。
司天である滑肉門は、上焦の一切合切を主り、在泉である大巨は、下焦の一切合切を主り、気交である天枢は、中焦の一切合切を主る。
心肺の変動なら滑肉門、脾肝の変動なら天枢、肝腎の変動なら大巨の左右差を銅アルで整えると症状が軽減する。
これらを、異種金属てい鍼太極療法とする。

小児命柱に異種金属てい鍼太極療法を施している様子。


症例
  1. 80代男性、腰痛、肝虚証で本治法後、胆兪1行右銅左アルミで軽減。
  2. 50代男性、関節炎、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  3. 40代男性、頚上肢のしびれ痛み、肘の屈伸不利、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  4. 10代女性、頭痛、腹痛、胸痛、脾虚肝実証で本治法後、脾兪1行左銅右アルミで軽減。
  5. 20代男性、膝痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミ+天枢右銅左アルミで軽減。
  6. 80代男性、肩こり、肩関節周囲炎、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  7. 60代男性、腰痛、足首痛、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  8. 1歳男児、先天性皮膚欠損症、肺虚証で本治法後、肺兪1行+腎兪1行(いわゆる命柱)左銅右アルミで軽減。
  9. 60代女性、腰下肢痛、脾虚証で本治法後、脾兪2行右銅左アルミで軽減。
  10. 1歳女児、アトピー性皮膚炎、中耳炎、腎虚証で本治法後、肺兪1行+腎兪1行(いわゆる命柱)右銅左アルミで軽減。
  11. 70代男性、腰痛、脳梗塞後遺症、腎虚心実証で本治法後、膀胱兪2行左銅右アルミで軽減。
  12. 80代男性、腰下肢痛、肝虚脾実証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  13. 40代男性、頚上肢のしびれ痛み、膝痛、逆流性食道炎、肝兪3行右銅左アルミ+天枢右銅左アルミで症状軽減
  14. 20代男性、慢性関節痛筋痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  15. 80代女性、突発性難聴、膝痛、肝虚脾実証で本治法後、肝兪2行右銅左アルミで軽減。
  16. 50代女性、頚肩こり、眼精疲労、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  17. 60代男性、股関節痛、脾虚証で本治法後、脾兪2行右銅左アルミで軽減。
  18. 40代女性、腰痛、白血病骨髄移植後経過観察中、心の病、心虚証で本治法後、三焦兪1行左銅右アルミで症状軽減。
  19. 60代女性、頚肩痛、膝痛、肝虚証で本治法後、肝兪2行左銅右アルミで軽減。
  20. 50代女性、めまい、全身の筋肉痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  21. 60代女性、腰下肢痛、肝虚証で本治法後、肝兪1行左銅右アルミで軽減。
  22. 70代男性、腰下肢痛、肩関節周囲炎、肝虚証で本治法後、肝兪1行右銅左アルミで軽減。
  23. 80代男性、肺がん、右肩痛、肝虚肺実証で本治法後、胆兪1行右銅左アルミで軽減。

おわりに

二刀の先駆者である岡西裕幸先生、銅アルによるてい鍼療法を考案された宮脇優輝先生、銅アルてい鍼/奇経てい鍼を作っていただいた伊藤勝則社長、異種金属てい鍼調整療法として確立された神開雄三先生、卓越した臨床成績により沢田流再考のきっかけを与えてくださったKenji Seki先生に心よりお礼申し上げます。

そして何といっても、鍼灸医道中興の祖として今なお私たちに影響を与えてくださる沢田健師と、師の業績を形にして世に残してくださった代田文誌師に深く感謝申し上げます。


なお、銅アルを数秒間かざすだけの手技で事足りているのは、本治法で生命力を強化した上で施しているからであり、異種金属てい鍼太極療法はあくまで本治法の補助療法である。

従来の太極療法のみ、あるいは一穴のみで施す場合は、圧痛が取れるまで施灸するか適当な時間置鍼が必要であることをお断りする次第である。


補法の基本刺鍼(tonification technique)
補法は虚(deficient)、即ち生気の不足を補うのが目的。

  • 毫鍼篇
「補に曰く、之に随ふ。之に随ふの意は、妄りに行くが如し、行くが若く按ずるが若く、蚊虻の止まるが如く、留るが若く還るが若く、去ること弦絶の如し。左をして右に属せしむ。其の気、故に止まる。外門巳に閉じて、中気乃ち実す。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉

  • 鍉鍼篇
「鍼、長さ三寸半、てい鍼は鋒黍粟しょぞくの鋭なるが如し、脉を按ずることを主つかさどる。陷すること勿なかれ、以って其の気を致いたすなり。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉
瀉法の基本刺鍼(draining technique)
瀉法は実(excess)、即ち邪気を取り除くのが目的。
「瀉に曰く、必ず持ちて之を内れ、放ちて之を出す。陽を排して鍼は得れば邪気泄るることを得る。」〈霊枢・九鍼十二原篇〉

  • 実邪に対する瀉法
  1. 浮実(気の変化) 
  2. 弦実(血の変化)

  • 虚性の邪に対する補中の瀉法(draining within tonification technique)
  1. 塵(気の変化)
  2. 枯(気の変化)
  3. 堅(血の変化)

  • 陰実和法(yin exces Waho)
和法(Waho)は虚でもなく実でもなく、即ち気血の滞りを流し中和させるのが目的。
補瀉調整の目的は生命力の強化
疾病とは、内因(怒喜思憂悲恐驚)、外因(風暑湿燥寒火)、不内外因(飲食労倦)の三因により、私たちが生きていくために必要な五つの大切な働きである五臓(肝心脾肺腎)の生気が不足することに端を発します。

四診を総合的に判断して証を導き、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え、補瀉調整(生気の不足を補い、生気を妨害する邪気を瀉す)し、生命力を強化して、病体を治します。
その結果、病は癒えていきます。
「内傷なければ外邪入らず」「陰主陽従」に基づき、治療は陰経の補法から始めます。
整脉力豊かに陰経を補うことができれば、相剋する陰経や病症に関連する陽経に邪実が浮いてきます。
脉状に応じて各論的瀉法(瀉法・補中の瀉法・和法)を施します。
十二経の気血が平らかになり、五臓六腑のバランスが整います。
これを経絡治療の本治法とします。
鍼灸術の奥旨とは、正に生命力の強化に尽きます。
補法の基本刺鍼~応用編
ロングバージョン
ショートバージョン
補法の鍼~臨床篇
止め鍼
治療の最後は止め鍼をして、ドーゼの多少を調節します。
実際の本治法
扁鵲(秦越人)と難経
稀代の名医、扁鵲(秦越人)は、『難経』にて、命門は生気の原であると、医道の奥旨に達しています。
そして、その盛衰を三焦で捉え、五臓を原とする主たる変動経絡の虚実を弁え、補瀉調整し、生命力の強化をはかることを鍼灸治療の本道としました。
これを為さんがために編み出されたのが、六十九難、七十五難、八十一難の治療法則であり、この千古不滅の大原則が、脉作りの臨床を可能たらしめます。

六十九難曰.
經言.

虚者補之.實者瀉之.不虚不實以經取之.何謂也.

然.

虚者補其母.

實者瀉其子.當先補之.然後瀉之.

不實不虚.以經取之者.是正經自生病.不中他邪也.當自取其經.故言以經取之.


◆七十五難曰.

經言.

東方實.西方虚.瀉南方.補北方.何謂也.

然.

金木水火土.當更相平.

東方木也.西方金也.

木欲實.金當平之.

火欲實.水當平之.

土欲實.木當平之.

金欲實.火當平之.

水欲實.土當平之.

東方肝也.則知肝實.

西方肺也.則知肺虚.

瀉南方火.補北方水.

南方火.火者木之子也.

北方水.水者木之母也.

水勝火.子能令母實.母能令子虚.故瀉火補水.欲令金不得平木也.

經曰.

不能治其虚.何問其餘.

此之謂也.


◆八十一難曰.

經言.

無實實虚虚.損不足而益有餘.

是寸口脉耶.

將病自有虚實耶.

其損益奈何.

然.

是病非謂寸口脉也.

謂病自有虚實也.

假令肝實而肺虚.肝者木也.肺者金也.金木當更相平.當知金平木.

假令肺實而肝虚微少氣.用鍼不補其肝.而反重實其肺.故曰實實虚虚.損不足而益有餘.

此者中工之所害也.


以下に基本脉型を記します。
基本脉型と治療法則
☑69難型 
適応側の肺脾補、反対側の肝瀉。
☑75難型 
適応側の腎補、同側の心または肝瀉。
☑69難型 
適応側の肝腎補、反対側の脾瀉。
☑75難型 
適応側の心補、同側の肺または脾瀉。
☑69難型 
適応側の脾心補、反対側の腎瀉。
☑75難型 
適応側の肺補、同側の肝または腎瀉。
☑69難型 
適応側の腎肺補、反対側の心瀉。
☑75難型 
適応側の肝補、同側の脾または心瀉。
☑69難型 
適応側の心肝補、反対側の肺瀉。
☑75難型 
適応側の脾補、同側の腎または肺瀉。
適応側の肝腎補、反対側の肺瀉。
適応側の肺脾補、反対側の心瀉。
適応側の心肝補、反対側の腎瀉。
適応側の腎肺補、反対側の脾瀉。
適応側の脾心補、反対側の肝瀉。

難経解説書
症例
☑患者 母親。
☑主訴 足の浮腫み。
☑現病歴 昨日から歩き過ぎたのか膝から下が浮腫んでだるくて痛い。
☑足首を周径すると、右23.8㎝左23.5。
☑脉状診 浮いて広がっている。
☑経絡腹診 脾心虚、肝腎実、肺平。
☑奇経腹診 陰蹻脉、陽蹻脉。
☑比較脉診 脾心虚、肝腎実、肺平
☑証決定 脾虚証。
☑適応側 女性であること、病症に偏りがないこと、天枢診により右側とした。
☑本治法 右水泉を補う→右陰陵泉を補う→右曲沢を補う→胃経に浮いた虚性の邪を切経して最も邪が客している左豊隆から枯に応ずる補中の瀉法→左水泉を補う。
✅効果判定 浮いて広がっていた脉が引き締まる。足に弾力性が出る。足首の周径、右23.6左23.3。
☑補助療法 宮脇奇経治療。左照海-右列缺、右申脈-左後谿に主穴に10壮従穴に6壮で無熱灸。
✅効果判定 足首の周径、右23.3左23.0。
☑経過 だる痛みが和らぐ。
☑考察 歩きすぎたということを鵜呑みにするならば、久しく行けば筋を傷るで肝か、四肢を主る脾の変動である。
僕が尊敬するSekiKenji先生は、多紀元堅(江戸時代末期の幕府医官。幕府医学館考証派を代表する漢方医。)は、肝は罷極の本を四極(四肢)の本だという解釈を述べていると教えてくれました。
脾が主になるか肝が主になるかは、四診を総合的に判断していきます。
今回は脾虚本証で上手くいきました。
良くなってよかったです。

オカンいつもありがとう。

浮腫みの病因病理
  • 脾の変動
摂取した水分は胃に納まり、消化されます。
身体にとって必要な水分と不必要な水分に泌別されます。
前者を「清」、後者を「濁」とします。
清は「津液」となってあらゆる細胞・組織・器官・臓腑経絡・四肢・百骸を潤し養い活動力を与えます。
濁は汗や小便となって体外に排泄されます。
この循環をスムーズに行う働きを「脾臓」とします。
脾臓が失調すると、水液の運化が滞ります。
流れているうちは津液として全身を巡りますが、滞ると「湿」と名を変えます。
生気を蝕む病理産物ですから「湿邪」とします。
また湿邪は蒸されると「痰」を形成しますので合わせて「湿痰」とします。
脾が失調すると湿痰によって浮腫みます。


  • 腎の変動

脾胃の消化には陽気が要ります。

この陽気を命門の火とします。

脾胃が鍋で命門が竈(かまど)の火です。

竈の火力が十分だと鍋の具がよく煮炊きできるように、命門の火が十全であれば脾胃の消化を助けます。

この働きを「腎臓」とします。

腎臓は水臓です。

ではどうして熱源となり得るのでしょうか?

ここからは発生学のお勉強です。

男子の一滴の精が女子の子宮に凝る時、胎が生じます。

父の精はその子の精となります。

精は陰であり水です。

陰は沈降の性質を有しているので、精は下に降ります。

精を蔵す器が必要なので腎臓ができます。

精は水です。

腎臓は水で満たされます。

ただし水だけだと冷えてしまうので、元々陽気が具わっています。

水中の中の決して消えることのない火です。

これを命門の火とか、臍下腎間の陽気とします。

この陽気によって水中が適温に保たれ、生命活動の根元的エネルギーとなります。

聖典『難経』では、「五臓六腑の本、十二経脈の根、呼吸の門、三焦の原、一に守邪の神と名づく」とし、命門の火、臍下腎間の陽気は生気の原であると、医道の深奥に達しています。

腎が変動すると原気の別使でる三焦が巡らないため水液が停滞します。



  • 肝の変動

肝は五行では木に属します。

木の性質は曲直です。

曲直とは屈曲と伸展です。

成長・昇発・条達の性質があります。

樹木が伸び伸びと枝葉を伸ばしていくように、気血を円滑で淀みなく隅々まで行き渡らせます。

これを「疏泄」とします。

四六時中目を凝らして適材適所に適量の気血を巡らしています。

これを「将軍の官謀慮出ず」とします。

肝将軍の疏泄による滋養と防衛は無意識に行われています。

これを「魂」とします。免疫機構です。

このような一連の働きを「肝臓」とします。

肝が十全であれば、気血を円滑に伸びやかに運行させることができるため、津液も淀みなく巡ることができます。

肝が変動して気が滞ると水も滞るので浮腫みます。


  • 肺の変動

肺は五官を主ります。

五官とは視覚・臭覚・味覚・触覚・聴覚です。

これを「魄」とします。

肺魄によって外界の情報を取り入れます。

その最前線が体表の皮膚です。

腠理(そうり)です。

呼気によって、濁気を吐き出し、津液や衛気を全身に宣発し、肌膚を温め潤し、腠理を開闔(皮膚の収縮と弛緩)し、外邪に対する防衛的な役割をします。

また吸気によって、清気を吸い込み、五臓の最も高い位置から華蓋として、津液の運行を管理調節し、軌道を清潔に保ち、中焦~下焦へと津液を粛降させ、全身に散布します。

このような働きから「肺は水の上源」とします。

これらの働きを「肺臓」とします。

肺が変動すると、宣発が失調し、腠理の開闔がバカになり、防衛力が低下するので、外邪の侵襲を受け、上焦で津液が停滞します。

風邪を引くとおしっこが出にくくなるのはよく経験するところです。

あるいは粛降できないので上に溢れて顔が浮腫みます。


  • 大自然と照らし合わせると

天空の太陽が地上の海面と大地を温めます。

温まった海面や大地に含まれる湧水が蒸発します。

蒸発した水蒸気が雲を作ります。

そして雨を降らします。

どこに降らすかは風のきまぐれです。

太陽は心です。

海面は腎です。

大地は脾です。

水蒸気は三焦です。

雲は肺です。

風は肝です。

心腎が交流しないと海面を蒸発させることができません。

脾が変動すると大地の保水力が低下します。

肺が変動すると雲ができないか乱発を招きます。

肝が変動すると風は吹かないか吹き荒れます。

その結果、

地上の水が上昇しないと下が水で溢れます。

手足が浮腫みます。

天空の水が下降しないと上に水が溢れます。

顔が浮腫みます。


治療

脾の変動は湿病、腎の変動は水気病、肝の変動は痛風歴節病、肺の変動は風水に分類されます。

また、圧痕がつくのは浮腫で脾腎の変動、圧痕がつかないのが水腫で肝の変動ということですが、絶対ではありません。


  • 本治法

病機十九条に「諸湿腫満は皆脾に求む」とあるように、浮腫みの中心は脾の変動です。

つまり、

  1. 脾虚証(脾心の虚)
  2. 肺虚証(肺脾の虚)
  3. 肝虚脾実証(肝腎の虚、脾の実)
  4. 腎虚脾実証(腎肺の虚、脾の実)

が立つことになります。

どの証にせよ、合水穴を補います。

合水穴には、大根に塩をふると水が出てしなびれるのと同じ作用があります。

本治法の前に適応側の水泉を補い、本治法の後に非適応側の水泉を補います。

水泉は内踝尖と踵の後端を結んだ線上の陥凹部あるいは圧痛硬結に取ります。

  • 補助療法

奇経治療。

照海-列缺を単独で用いるか、照海-列缺+申脈-後谿です。

宮脇奇経腹診で鑑別すると便利です。

  • 標治法

腎兪、膀胱兪に知熱灸。

足の三焦経を調整する。

「三焦は決瀆の官、水道これより出ず」とありますが、決は切り開く、瀆は水路、官は役人ですから、三焦は水路を切り開いて水に流れをよくする役人と同じ働きがあります。

膀胱経と胆経の間をこの足の三焦経は流れます。

三焦経の下合穴である委陽から崑崙までの硬結を処置していくと水はけがよくなります。

「膀胱は州都の官、津液これを蔵し、気化させ則ち出すことを能す。」とあるように、膀胱経の下合穴である委中も反応があれば調整します。

  • 養生

基本は脾を健やかにし、湿痰をこしらえないことです。

脾が変動すると湿痰を温床します。

以下の3つが病因となります。

  1. 暴飲暴食
  2. 運動不足
  3. 思慮過度

暴飲暴食すると清濁の泌別に負担をかけます。

腹八分目、場合によっては六分目を心がけましょう。

運動不足は脾胃を弱らせます。

中世の名医岡本一抱の説です。

脾胃は石臼の上下の石です。

取手は四肢です。

取手を良く動かすと石臼がよく回って細かく挽けるように、四肢つまり手足をよく動かすと脾胃が良く働き消化を助けます。

と仰っています。

適度な運動は消化もよくなるしお腹も空くので、是非心がけましょう。

散歩が一番お手軽です。

思慮過度もまた脾胃に負担をかけます。

食事は飲食物の清濁の泌別ですが、善悪の判断は精神の清濁の泌別です。

考え過ぎは脾胃に負担をかけます。

あれこれと考え過ぎないように心がけましょう。

  • 肝鬱気滞瘀血

最後に最も大事なことはストレスを回避することです。

各臓腑が失調すると浮腫みを発症しますが、その根本的原因はストレスです。

肝鬱気滞瘀血がその背景にあります。

肝鬱つまりストレスがあるから食べ過ぎに走るのです。

現代においては、ストレスこそが最強の外邪です。

ストレスを回避できるように、抱え込まないように工夫してください。