肺がんオペ後の不定愁訴の治療

【患者】40代女性。
【現病歴】肺がんのため右肺を全摘して以降、息があがって運動ができない、胸から喉にかけての違和感、常に汗が吹き出て夜中も合わせて日に10回以上着替えなければならないのがとにかく辛い。
【経絡腹診】腎肺虚、脾心実、肝平。心窩部から水分穴までメチャクチャ張っている。
【奇経腹診】陰維脉、陰キョウ脉、足陽明脉が出ている。
【脉状診】空虚甚だしい。
【比較脉診】腎肺虚、脾心実、肝平。
【証決定】腎虚証。
【適応側】右肺を患側として左側とした。
【本治法】左の復溜と経渠をてい鍼で補う。※生気が著しく虚損している患者には毫鍼だとドーゼオーバーを起こすので使えない。
【補助療法】左内関-左公孫+右照海-左列缺+右陥谷-右合谷に金銀粒を貼付して自宅でドライヤー灸でのセルフケアを指示。
【標治法】汗を止めるために身柱に上向きに皮内鍼を止めてその上から知熱灸7壮。
【2診目】初診後、体が楽になったが右手が痛くなって整形外科に行くと腱鞘炎だと言われたとのこと。これは誤治かと疑い検証。右手大腸経の偏歴付近を痛がる。切経すると確かに腫れている。前回の治療は左の腎虚で左の復溜と経渠を補っているのと訴える症状を鑑みて左の腎を補ったために右の子午陰陽関係にあたる大腸経に誤治反応が出たと診た。
証を再検討。
証は腎虚である。病症も腎の変動であるからやはり腎に間違いない。
結論は適応側の間違いによる誤治である。
※証を取り違えた誤治の被害が最も大きいですが、左右の適応側を取り違えてもそれなりの誤治反応が出ます。気を調整する経絡治療の影響力は計り知れないものがあります。

適応側を右側に変更して、右の復溜と経渠をてい鍼で補い、大腸経に浮いた虚性の邪を右偏歴から陽谿にかけて圓鍼で経に逆らい押し撫でる手技で瀉法。
補助療法、標治法は前回と同じ。
【3診目】前回治療後、右手の痛みは和らいだ。特に新しい症状も出ていない。不定愁訴もマシとのこと。
以降、右腎虚、同じ奇経と標治で治療を続ける。
【経過】腱鞘炎の誤治反応は完全に消える。汗は夜間はかかなくなり日中の着替えも2~3回に減った。胸から喉にかけての違和感も軽減。そして今ではすっかり運動ができるようになり大好きなバレー(踊る方の)を再開している。
現在も継続治療中。
【考察】誤治は褒められたものではありませんが(^_^;)、直ぐにそれに気づき被害を最小限度にとどめ正治に軌道修正できれば誤治も治癒の一過程とさえなります。
毎回の体表観察を欠かさず患者の話をよく聞くことです。
誰でも簡単に始められることは手足の三陰三陽経を切経することです。
よく観察すると蚊に噛まれたような痕が経絡上にあるいは経と経をまたいで出ていることがあります。
これは明らかに経絡変動であり、再診以降で出現すれば鍼の影響です。
これを気に止めずに流すようでは宝を見す見す逃しているようなものです。
早速明日から注意深く観察されることをお奨めします。気を付けることは余り時間をかけずにサッと観ることです。

本治法で生命力を高め、病体に応じた補助療法と標治法を行えば、全摘した肺を再生することは不可能ですが、肺の機能を再生することは可能です。

大好きなバレーを踊れるようになって僕も自分のことのように嬉しいです(*^^*)

ONE

鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いに切磋琢磨する間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師に違いはありません。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 どうぞ、よろしくお願いします。