ぎっくり腰の鍼灸治療

恥をさらしますが、実は数日前にぎっくり腰になりました。
不養生ですね。
お陰さまで自己治療して回復することができたので紹介させていただきます。

現病歴

何をしたわけでもないのに、午前の臨床前に突然ぎっくり腰を発症。患者さんに悟られないように何とか臨床をこなす。(地獄でした(>_<))。
左の仙腸関節付近に激しい痛みが襲ってくる。
前屈>後屈>側屈≧回旋で痛みが増悪。
満を持してお昼休みに治療。

基盤作り

■左右を比べてアキレス腱反射の鈍い方で圧痛の強い側のTポイントを中野式柳下てい鍼で補う。
■左→右の順に脈会を中野式柳下てい鍼で補う。

診察診断

【経絡腹診】肝最も虚、腎次いで虚、肺最も実、脾次いで実、心は平。
【宮脇奇経腹診】陽維脉、陰キョウ脉。
【脉状診】沈・数・虚・堅。
【比較脉診】肝最も虚、腎次いで虚、肺最も実、脾次いで実、心は平。
【証決定】肝虚証。
【適応側】左側に痛みが偏っているので右側を適応側とした。

治療

【本治法】
右曲泉を補う。腎も虚しているので陰谷も補う。右関上沈めて脾の脉位に虚性の邪が触れるので脾経を切経して実所見の反応が最も強い左陰陵泉に堅に応じる補中の瀉法。
→少しマシ。
【補助療法】
宮脇奇経治療。右外関-左臨泣+左照海-右列缺に金銀粒を貼付してその上から主穴に5壮、従穴に3壮知熱灸。
→もう少しマシ。
【標治法】
■前屈に対して股関節横紋の外端(環跳)に刺鍼。
■寝返りに対して大転子の上端に刺鍼。
■後屈に対しては脊中と腰陽関にだいたいの位置感覚でドライヤー灸10壮ずつ。
→さらにマシ。

経過

3日間治療して治癒。冷や汗かきました(^_^;)

ぎっくり腰の原因

内因は怒が影響します。
外因は冷えです。寒邪の凝滞性により気血が縮こまり筋肉も伸縮性を失って堅くなります。
老子によれば堅いは脆いです。
ビールの冷えも寒邪です。
不内外因は労倦です。
中でも内因の怒が最も影響を及ぼします。
怒は肝を傷ります。
怒は陽の感情の極みですから一気に炎上して肝陰肝血を焼き払います。
あるいは肝火は腎に飛び火して腎陰腎精を焼き払う場合もあります。
そんなわけで肝虚や腎虚が主体になります。
肝火は子午陰陽関係に当たる小腸に影響を及ぼします。
小腸の兪穴である小腸兪が仙腸関節にあるので、仙腸関節が亜脱臼してぎっくり腰になるわけです。
ぎっくり腰に関係なく骨盤がずれている人の大半が肝-小腸の不和でずれています。

もう少しつっこむと、肝火は風邪を発生させます。
陽気が体内で動じると風を巻き起こします(内風、肝風内動)。
病的な風なので風邪とします。
風が揺れるように風邪は人体を動揺させます。
上焦が動揺すると目が回ります。めまいです。
中焦が動揺すると不安になります。
そして下焦が動揺すると仙腸関節、骨盤がずれます。
火は風を生むと覚えておいてください。
風邪を慎めるためには火事を消さなければなりません。
そこで肝陰肝血や腎陰腎精を補うのが本質治療になります。
絶対ではありませんが、簡単な鑑別法として、前屈>後屈は肝虚、後屈>前屈は腎虚になることが多いです。
時々肝虚でなくて肝実もあるので気を付けてください。

奇経は前屈・側屈・回旋は陽維脉、後屈は陰キョウ脉です。

いざ自分がぎっくり腰になってみてその辛さがよく分かりました。
ぎっくり腰になられた患者さんをより早くこの痛みから解放してあげたいと心を新たにしました。

鍼灸師の鍼灸師による鍼灸師のためのOWND ONE

鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いに切磋琢磨する間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師に違いはありません。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 どうぞ、よろしくお願いします。