学生たちと経絡治療のお勉強⑦

応用鍼灸治療学Ⅴ(内科)の7回目は、先週に引き続いて診察診断~本治法の補法終了までを実習しました。
分からないなりにも覚えたての知識を駆使して脉証腹証一貫性を守って証決定をし、適応側を決め、主たる変動経絡とその母経に補法の基本刺鍼を施して生気を補い、余った時間で自主的に標治法をする姿に感心しました。
これで経絡治療の型を一通りできるようになったわけですから、あなたたちはまがりなりにも経絡治療家です。
おめでとう(*^^*)
いよいよ来週で僕の授業はお終いです。
何か授業のリクエストがあれば是非言ってくださいね。
もう1回だけお付き合いください(*^^*)

長くなりますが、最後に本日の公開臨床で治療した学生の主訴であるアトピー性皮膚炎について解説させていただきます。

アトピー性皮膚炎の

病因病理

■二大症状
皮膚炎とかゆみです。
皮膚炎の正体は炎症ですから病的な熱、邪熱です。
かゆみの正体は風邪です。
■邪熱と風邪
何らかの原因によって体内の陽気が過剰になります。
陽気は本来体を温める恵ですが過剰になると体を蝕みます。
病的な熱ですから邪熱とします。
体で起こった火事と考えてください。
実際の火災現場では「火は風を生む」という自然の摂理によって炎は上空まで舞い上がります。
そしてこの風に乗って次々に家々へ山々へ燃え広がっていきます。
この火事が皮下で発生したのがアトピー性皮膚炎です。
皮下で病的な熱である邪熱が多くなるために皮膚が炎症して赤くなります。
皮膚炎です。

次に火は風を生むの法則に従い、皮下に停滞した邪熱は風を発生させます。
風を本来植物の種を運んだり湿気を取っ払ってくれる恵であるはずですが、病的に発生した風ですから風邪とします。
風邪が皮下で吹き荒れるとかゆみが起こります。
そして風の遊走性により皮膚炎とかゆみは、火災が家々山々へ燃え広がっていくように全身に広がっていきます。
アトピー性皮膚炎の激しいかゆみの正体は風邪であり、その風邪は火は風を生むという法則により邪熱から派生します。
つまりアトピー性皮膚炎の原因は邪熱です。
ではこの邪熱は何によって生み出されたのでしょうか?
■邪熱の原因は気血水にあり?!
“気が巡れば水が巡り水が巡れば血が巡る”
“気が滞れば水が滞り水が滞れば血が滞る“
この大原則に則り、気血水の停滞から邪熱が発生します。
順に見ていきましょう。

■気の停滞
ストレスにさらされると気が伸びやかでなくなり滞ります。
これを気滞とします。
気滞とは緊張状態です。
緊張すればするほど内圧が亢進し軋轢を生じ摩擦しあい自然発火(火化)します。
病的に生じた火熱ですからこれを邪熱とします。
気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱。
■水の停滞
摂取した水分は胃で必要な水分と不必要な水分に分けられます。
前者を清水、後者を濁水とします。
清水は津液と名を変え、津は浅いところを液は深いところを巡り、ありとあらゆる細胞・組織・器官・臓腑経絡・四肢百骸を潤し養い、最終的に腎に蔵水されます。

一方濁水は小腸から膀胱へと輸送され小便として体外へ排泄されます。また大腸で再吸収された際に津となり体表に巡って発汗を喚起し汗となってやはり体外へ排泄されます。

このように、清濁を泌別し循環させる働きを脾臓とします。
水分は巡っている間は津液として体にみずみずしさを与えてくれますが何らかの原因によって滞ると湿となって巡りを妨げます。
病的な水分ですからこれを湿邪とします。
湿邪は文字通りネバネバした状態ですから伸びやかさを欠き気滞を招きます。
湿邪は煮詰められると痰になるので合わせて湿痰とします。
湿痰→気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱へと発展します。
■血の停滞
「気は血の帥」ですから、血の働きは気に依存しています。
それもあり、気が滞れば水が滞り水が滞れば血が滞るわけです。
そんなわけで気滞や湿痰があると血の停滞を招き血瘀へと発展し瘀血という病理産物を生み出します。
瘀血はさらなる気の停滞を招きます。
瘀血→気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱です。
■アトピー性皮膚炎の病因病理
気滞・湿痰・瘀血から邪熱が発生し邪熱から風邪が派生し遊走性によって全身に皮膚炎とかゆみが広がっていきます。
これがアトピー性皮膚炎の病因病理です。

■本質治療
大本の気滞を動かすことが本質治療になります。
気とは機能/働きです。
私たちの体は生きていくために必要な五つの大切な働きによって支えられ生理活動を営んでいます。
この生きていくために必要な五つの大切な働きを五臓とします。

気滞とは五臓の働きが低下した状態です。
最も問題のある五臓を突き止めこれを(肝虚証・心虚証・脾虚証・肺虚証・腎虚証)とし、所属する経絡を主たる変動経絡とします。
証決定の手段が四診法です。
最終的に脉証腹証一貫性により導きだされた主たる変動経絡を治療すべき原因経絡とし、生気を補い生気を妨害する邪気を瀉し生命力を強化して五臓の調和をはかれば、気滞・湿痰・瘀血が改善され、邪熱を冷まし風邪を慎めることができ、アトピー性皮膚炎が癒えていきます。
■対症療法
とは言うものの体質が変わるまでにはそれなりの時間を要します。
そこで今あるかゆみを何とかするために対症療法が必要になってきます。
我々の研究では前肩髃と蠡溝への施灸がかゆみと乾燥肌に効果があります。
■セルフケア
かゆいときにはかくのが一番です。
ただし手でかくと雑菌が入って皮膚炎が余計に広がります。
そこで亀の子だわしでかきます。
かゆみが止まり皮膚がきれいになります。
強くかくと皮膚を傷つけるのでたわしの毛先が柔らかくなるまでは加減して擦ってください。
乳幼児には濡らしたタオルを固く絞って代用します。
■養生
□ストレスを溜めないことが気滞を防ぎます。
□湿痰は暴飲暴食を控え適度な運動を心がけることで防げます。
運動の大切さを中世の名医岡本一抱は石臼を引き合いに出して説明しています。
上下の石が脾胃です。
取っ手が手足です。
取っ手をよく回せば米や豆を挽けるように、手足を動かせば脾胃がよく働いて消化がよくなります。
散歩が一番いいです。
□気滞と湿痰を解消することが瘀血の回避に繋がります。
瘀血は外傷からも発生するので慌てずに落ち着いて行動することが大事です。
そして胎毒を防ぐことが先天的な瘀血の予防になります。
実はこれがとてもとても大切です。
■胎毒とアトピー性皮膚炎
1つ疑問に思いませんか?
生まれつきアトピーの子はストレスなんか関係ないんじゃないかと?
それが関係あるんです。
妊婦さんが強いショックやストレスを受けたとします。
ストレスを我慢すると季肋部がはります。
季肋部の真後ろには膈兪があります。
膈兪は八会穴の血会です。
上に血脈を司る心の兪穴である心兪、下に蔵血を司る肝の兪穴である肝兪があり、その間に挟まれている膈兪には一身の血が行き交いしています。
季肋部がはると膈兪がつまります。
膈兪がつまると血の停滞を起こしアレが生じます。

瘀血です。

妊婦と胎児は胎盤でつながっています。
瘀血は胎盤を通じて胎児に影響します。
これを胎毒とします。
胎毒は胎児の気血水を滞らせ邪熱と風邪を喚起します。
これが生まれつきのアトピー性皮膚炎の病因病理です。
また、生まれた時は発症していなくても入学・受験・就職・結婚・子育てなどの環境の変化による強いストレスがかかると、それが引き金となって、気滞→緊張→軋轢→摩擦→火化→邪熱(皮膚炎)→風邪(かゆみ)→遊走性→全身性のアトピー性皮膚炎を発症することがあります。
だからこそ妊娠中の鍼灸治療がすごく大事なんです。
特に安産灸です。
鍼は気を動かすのに最適ですが、お灸は血を積極的に動かします。
瘀血を解消し胎毒を極力防いでくれます。
そして何よりも大切なことがあります。
妊婦さんを大事にしてあげてください。
妊婦さんは大事にしてもらってください。
世の男性諸君、子はかすがいと申しますが、妻は家宝です。
大大大事にしてあげてください。
■まとめ
□アトピー性皮膚炎の二大症状である皮膚炎の正体は邪熱、かゆみの正体は風邪です。

□火は風を生むの法則により風邪は邪熱から派生します。
邪熱は気滞・湿痰・瘀血の末路です。

□気滞の原因はストレス、湿痰の原因は暴飲暴食と運動不足、瘀血の原因は気滞と湿痰と外傷と胎毒です。
これらを回避することが予防に繋がります。

□治療は、主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力の強化に努めることが本質治療です。
顔・上半身に出るのは腎の変動、肘窩・膝窩に出るのは肝や脾の変動、肺はどちらかというと原初的な乳幼児のおむつかぶれなどが当たります。
うつ病が併発していれば心の変動が多いです。

□日常生活を少しでも快適に過ごせるように必要に応じて対症療法を加療します。
前肩髃と蠡溝です。

□セルフケアとして前肩髃と蠡溝に自宅でドライヤー灸をしてもらいます。
子供さんでドライヤーを怖がる子にはカイロで代用します。
患部をたわしで擦ります。

□予防の重要性から妊婦さんには安産灸を受けてもらいましょう。
灸点を卸して自宅でドライヤー灸やだいだ灸をしてもらいます。
そして大事なことはみんなに大事にしてもらってください。周りのみんなで協力して心身ともに快適なマタニティライフを過ごしていただきましょう。
一人一人が心がければそんなに難しいことではありません。

□アトピー性皮膚炎は子供のうちなら相当高い確率で治ります。
大人の場合はステロイドで皮膚が色素沈着しているのでそれを白い肌に変えるのは難しいですが、かゆみや乾燥を改善することは十分できますし、黒ずんだ肌もマシにはなっていきます。
病因病理を解決できるようにアプローチすれば必ずよくなります。

今日の学生に行った治療は、左の腎虚証で本治法をし、標治法は全身に気を巡らすように散鍼しました。
肌の艶がよくなり赤みが少しひきました。
前肩髃と蠡溝に灸点を卸し毎日施灸するように指示しました。
少しでも参考になれば幸いです。

最後の最後に。
毎回授業終わりに行うのが恒例となっている公開臨床も残すところ来週の授業だけです。
時間の限りやるので、治療を受けたい学生はどんどん言ってくださいね(*^^*)

ONE

鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、互いに切磋琢磨する間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師に違いはありません。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、願いを込めてこの名前を付けました。 どうぞ、よろしくお願いします。