経絡治療からみた美容鍼灸について

はじめに
鍼灸治療の本質は生命力の強化につきますが、❝本質治療は健美力を兼ね備えています❞

以下に根拠を示しますが、私の臨床経験では根拠とするにはいささか説得力に欠けますことをご容赦ください。
本治法と美容
経絡治療における生命力の強化は本治法です。
本治法では、一鍼毎に検脉し、その良否と入れるべき経の適否を確認しながら進めますが、ある時、刺鍼後に検脉をしようと寸口脉(手首の橈骨動脈部)に指を当てたところ、刺鍼前よりそこの肌艶がツルツルしていることに気がつきました。
試しに全身を触ってみると撓骨動脈部の皮膚と同じように肌艶がツルツルしていました。
もちろん顔もです。
よく妻に、手足の要穴に鍼をしているのに、「あんたに鍼してもらうと顔がちっちゃくなるわ」とか、「肌がきれいになる」、「化粧のりが良くなる」、などと言われてきましたが、そうゆうことだったのです。
本質治療(各流派によって表現は違いますが《例えば経絡治療では本治法》以下本治法とします。)においては、相当以前から知らず知らずのうちに、今でいう美容鍼灸を結果的にやっていたことになります。
古典と美容
『霊枢』邪気蔵府病形篇に、「人体を巡る十二の経脈と、それあい通じる三百六十五の絡脈の血気の流れは、みな顔面に集中し、耳目口鼻にそそいで、その器官の機能が充分にできるようになっています。」
とありますから、実は太古から美容鍼灸の機序は出来上がっていたことになります。
標本同源
顔および体表は木の枝葉です。
木の根が臓腑経絡です。
根っこに栄養を与えると枝葉が生い茂るように、臓腑経絡の営血と衛気の不調和を整えると、全身の肌が艶々し、引き締まり、美人になります。
髪の毛にも影響します。
リンス要らずになります。

また逆もしかりです。
局所(顔)の営血と衛気の不調和を整えると全身に影響します。
雨の滴が枝葉を伝って根に注ぐことからもそれが言えます。
末端が局所を養い、局所もまた末端を養います。
本が標を養い、標が本を養います。
全体が1つであり、1つが全体です。
健美力
ということで、体を変化させることができる鍼灸師は、美容鍼灸を標榜するしないに関わらず、顔に鍼を打つ打たないに関わらず、全員が健美力を兼ね備えた鍼灸師と言えます。
肺魄と美容
身体の可視できる範疇を「形」とします。
形の現れを主宰するのが「神」です。
神気の遊行出入りする所がツボです。
ツボが在るのは体表の皮膚です。
ツボに鍼やお灸をして気血を動かせば、腠理の開闔(皮膚の収縮と弛緩)がよくなり、全身のあらゆる細胞・組織・器官が潤い、引き締まり、弾力性に富み、温かくなります。
これは私たちの体には生まれながらにして肺魄という働きが備わっているからです。
『霊枢』本神篇に、「精とならびて出入するのが魄」とあります。
精とは腎に宿る神気で、先天の精と飲食物から抽出する後天の精です。
同じように私たちに出たり入ったりするものを魄としていますが、これは肺に宿る神気で、五官です。
五官とは視覚、臭覚、味覚、触覚、聴覚です。
外の情報を伝え認識する働きです。
鍼やお灸の刺激を肺魄によって認識するのです。
だから、先の鋭利な毫鍼を接触させると脉が細く締まり、先の丸いてい鍼を接触させると脉が幅広になります。
脉を介して、先の尖ったものが触れたよ、先の丸いものが触れたよと教えてくれるのです。
色々分かると楽しいので、先ずは自分にやって確認してください。
おわりに
経絡治療からみたお肌のトラブルの原因は、臓腑経絡の変動です。
本治法で、五臓を原とする主たる変動経絡の気血の虚実を弁えて補瀉調整し、生命力を強化します。
その結果、体が元気になり、健美力も旺盛になり、美顔、美肌をもたらします。

そして顔肌など局所の治療もまた、末端の経絡へとフィードバックされます。
顔に鍼やお灸をしたら、膝がよくなったとか、胃腸の調子がよくなった等ということを経験されたことがあると思います。
標本同源で説明がつきます。

ということで、上にも書きましたが、体を変化させることができる鍼灸師は、健美力を備えた鍼灸師であり、顔に鍼を打つ打たないに関わらず、美容鍼灸師を標榜するしないに関わらず、美容鍼灸をやっていることにかわりはないということです。

ご縁のある患者さんを超健康美人にしてより良い人生を送っていただきましょう。

ONE

鍼灸にはあらゆる流派や様式が在ります。 この多様性が日本鍼灸の優秀性のひとつだと 感じています。 各流派に優劣は在りません。 それぞれに素晴らしい学術があり、 互いに切磋琢磨する間柄です。 流派は違えど、患者を病苦から救うという同じ使命を持った鍼灸師に違いはありません。 元々1つです。 互いを認め高めあい、上工に成れるように、 願いを込めてこの名前を付けました。 どうぞ、よろしくお願いします。